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交錯


生徒会室で眼光鋭くモニターチェックしながら

紫煙を燻らせていたウエスターレン


突如、一番手前にあるモニターが光を放ち、画面にノイズが走る


すらっとした指先を巧みに動かし、相手からのメッセージを受け取る


「…マジか。了解した。」


軍服を着こみ、すぐさま部屋を後にする


…………


「…あれ、お前は…」


学園の正門にほど近い場所にある掲示板


今日は委員会の用事もなく、久しぶりに放課後デートでもしようかと

Anye の講義が終わるのに合わせ、待ち合わせをしていたイザマーレ


掲示板のすぐ脇に倒れ込んでいる女性に驚いて駆け寄る

ピンクベージュのガウチョにオフホワイトのブラウス

Anye と瓜二つの顔……


Anye の服装を熟知しているイザマーレは、

彼女と違う何かであるとすぐに気がついた


「おい…大丈夫か?」

しゃがみ込み、腕に抱えて呼びかける


「…たすけて……ふく…り…じちょう…」

気を失ったまま朦朧とした状態で呟き、

イザマーレの袖をギュッとつかむ




「…やはりな。お前の相手は吾輩ではないだろう…ったく」


何となく真相が分かり、ため息をつくイザマーレ


事の経緯は分からないが、

どうやら魔鏡学園から抜け出てきてしまったようだ


そこまで分かった所で、事態収拾に努めるイザマーレ


(とにかく、このままにしておくわけにはいかない)


気を失ったままの女性を抱き上げ、瞬間移動で立ち去る



「……会長…?」


ちょうどその時、掲示板に向かっていた Anye


イザマーレが倒れていた女性を抱き上げて

瞬間移動するところを目撃していた


「……」


緊急事態なら、自分もすぐに駆けつけてサポートするべきだ

だが、普段あまり見た事のないイザマーレの表情に足を竦ませ

身動きできずに居たのだ


そこへ、ウエスターレンが現れた


「しまった、遅かったか…! Anye…まさかお前…見てた…のか?」


「…あ…い、いえ…」


狼狽するウエスターレンに、疑惑は確信に変わった

しどろもどろになりながら、目を逸らし、その場から駆け出すAnye




「あ!おい…っ 駄目だ、今は行くな…っ」


遠くで聞こえるウエスターレンの制止を振り切り、

イザマーレの辿ったオーラを探るAnye


居場所は、すぐに分かった


本校舎にある生徒会室に駆けつけたAnye はハッとして立ち竦む


扉が…消えていたのだ


(……!……)


これが、扉が消えるという現象なのね……


ある意味とても冷静に、目の前の景色をインプットさせる Anye


少し、寂し気な表情を浮かべながら、

想いを断ち切るように目をギュッと瞑り

その場から逃げるように立ち去る


扉越しに、Anyeに負わせたダメージを感じ取っていたイザマーレ


(……)


深いため息をつきながら、中にいる女性に目を向ける


(…どうした……大事な姫君が凍えているんだぞ……

さっさと迎えに来たらどうなんだ)


魔鏡越しに、言霊を乗せながら

ソファに座り込み、頭を抱えるイザマーレ


(…誤解してんじゃねーよ…ったく…

お前と鉢合わせるわけにはいかないだろうが…)




生徒会室の前から逃げるように駆け込んできたAnye

壁を曲がろうとして、物陰にぶつかる


「うわっぷ…とと…す、すみません……!!!!!」


反射的に謝り、見上げたその姿に驚き、立ちすくむ


「こちらこそ、申し訳なかったな。怪我はしてないか?」


黄金の怒髪天……穏やかに微笑みかけてくるその姿は…


「会長?!…いえ、違う……貴方は…」


Anyeは目を瞠りながら、オーラを探る


「うっかり過去の世界にワープして彷徨っている理栄を

迎えに来たのだ。」


「…え…」


「来たのは良いが、何しろあいつは言霊が効かないし

どういうわけか、オーラが探れない。

どうしたものかと考え込んでいたのでな。

おまけに、過去のお前を泣かせてしまうとは……」


「…!…え、あ…」


目の前にいるイザマーレの言葉に、

初めて涙を流していたことに気づいたAnye


「…どうした。涙に濡れたお前を放置したまま、

あいつは何をしているのだ?」


Anyeを抱き寄せ、そっと髪を撫でるイザマーレ




「…!!…///////」


いつもと何も変わらない、イザマーレのぬくもりに

心が解きほぐされ、涙が溢れ出すAnye


「…なるほどな」


しばらくして呟くイザマーレに、ハッとして顔を上げるAnye


「どうやら、二重三重の雁字搦めに陥ってしまったようだな

理栄の居場所も分かった。このまま迎えに行くのは簡単な事だが…」


Anyeの髪を撫でる事で、全てを読み取っていたイザマーレ

いまだに涙に濡れているAnyeをチラッと見て、

悪戯っぽく微笑む


「お前を悲しませ、泣かせたお詫びに、罠をしかけてやろう♪」


「…えっ… 」


戸惑うAnyeを抱きかかえ、そのまま瞬間移動で立ち去る



 
 
 

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