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闇と光


誰がために血を流し

命を散らした 誇り高き花

神の仕打ち 自ら受け…


お前は、小憎らしいほどのあどけなさで

微笑み返してくるに違いない

溢れるこの涙を止められずにいるのだからな


降りしきる雨の中 天に向け叫ぶように

睨み付ける


大魔王である、この私が…


穢れを洗い流す事もできず

二度と戻る事はないだろう 


眠り続ければ 嘆く事もない

二度と傷つく事もない

天界の奴らが祈り続ければ 

その瞳に光を捉える事も叶わないだろう


だが…


気高き花よ  

闇に凍り付き、憎しみに震え、怒り狂え


光の寵愛を いとも簡単に奪ってみせた

嫉妬と羨望の感情に任せ

変わり果てた花の魂を闇の底に誘い込むダンケル


その闇さえ拒み、抗い続けた花の願いが

光を呼び寄せる事になるとは知らずに……





ダンケルとすれ違うように

魂の眠る花園に姿を現したイザマーレ


変わり果てた花の姿に 涙を止める術を知らない

悪魔のゆりかごで眠れる花よ 安らかに…


お前の愛する光は 常に心に宿る灯火


鮮烈な記憶 今は切なく

再び目覚める日まで 何も請わない 


可憐な花よ  

闇に凍えながら、憎しみに耐え

抱き続けた怒りの感情は お前には似合わない


たとえ 幾度も傷つき、嘆きを与えようとも

その度に微笑み返し、吾輩の元で咲き誇れ


(…本当にお会いできた時に、名乗らせて貰いたいの…)


夢で交わした最後の約束を思い出し、苦笑する


「夢の中ではあんまりかと思ったが…お前の方こそ、どうなのだ?

…お仕置きにしては、大げさにも程があるだろう…」


そんな愚痴を吐露しながら、花の魂に光をかざす


「…だが。吾輩は約束を守るぞ。

次に会う時、お前は“リリエル”だ。良いな…」


光の粒に煌めきながら浄化されていく花

その旅立ちを見届けながら、ある事を閃いたイザマーレ


「ついでに、お前に語って聞かせたあの名『理栄』も

特別に与えてやる。これこそが、吾輩とお前を繋ぐ秘密の合言葉だ。

物語を超える『理想の夫婦』になってみせような…」






………………

………


「リリエル、そろそろ次の地に向かうぞ。」

「あ、は~い。」


にこにこと微笑むリリエルの髪を撫で、自身の髪に座らせるイザマーレ

その背後をモニター越しに見つめる熱い視線を感じながら………


情報局部屋で、2魔の様子を穏やかに見守るウエスターレン


(…そう言えば………)


2魔の背後で、負けずにダイヤを抱き寄せ

イチャつこうとするダンケル

恥ずかしさから逃げ惑う中、ほんの少しの結界の切れ目から

姿を現したミカエル


「よお♪ お揃いで何やってんのさ」


「公務に決まってるだろう。お前こそ、何の用だ。相変わらずに…」

苛ついたものの、嬉しそうな表情を見せるダンケル


「どうせ、こんな時間だ。この後はお楽しみになるだけだろ?

あいつらの邪魔立てをしないように、俺様が降りて来てやったんだ

感謝しろよ♪」


「キャー(≧∇≦) ミカエル様、いらっしゃ~い」


「やれやれ…今日はここらで宿をとるか。リリエル、おいで…」

突然騒がしくなった後方に呆れつつ、

躊躇いもなくリリエルを抱き寄せるイザマーレ


「閣下…今、ミカエル様がいらっしゃった、あの場所って…」

そんな風に尋ねるリリエルを見つめ、静かに笑うイザマーレ




そう、ここは魔界の東…草も生えない見放された平原

かつてウエスターレンが、入り込んだ天使を焼き払った場所


今も昔も…

招かざる客が来襲するのは、何も変わらない


だが、かつてイザマーレが敵前で繰り出した詠唱により

天に焦がれ、惑わされる悪魔は何処にもいない


ダンケルの腕に抱かれ、顔を赤らめるダイヤだけは

容易く流され、暴走を繰り返すものの…


常に向上心と野心に溢れ、隙あらば王位奪還を狙う民衆により

魔界はいつも活気に満ちている


心を解放できる相手

愛する后

そして…


光の悪魔


イザマーレにとって、居心地の良い闇となる事で

真の宝を手中に収めたダンケル


ただ、光の元では花が咲き誇り、近寄れば紅蓮の炎に遮られる


それを誇らしく思えるようになる日は

未来永劫、ないのかもしれない…






Fin.



 
 
 

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