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信用問題


そんな事があってから、数日後

久しぶりに文化局の森でお茶会を催していた


今回は各々の相手を帯同せず、

構成員同士の屈託のない集まりだった


イザマーレとウエスターレンは、

ラァードルと一緒のテーブルに座り

他愛もない会話を続けていた




「ラァードル、どうだ?その後、スプネリアとはどうなってる?」


「うん…ありがとね。徐々にだけど、一緒にいる時間が増えて

固さもほぐれてきたように思うよ。でもさ…」


「でも…?何か心配事でもあるのか?」


「やっぱりまだ、信用されてないって感じるんだよね。

ほら、吾輩、急にスプネリアの前から姿消しちゃったじゃない?

仕方のない事とはいえ、傷つけちゃったから…ん?でも、どうだろ?

あの頃、スプネリアを好きだったのは吾輩だけかな?それなら

そこまで寂しがる事もなかったか…?」


「さて…それはさすがに、吾輩の知った事ではないが…」


「あ!!ひで~。そこまで聞いておいて見放さないでよ!!

どうせね、最初から最後まで、リリエルちゃんに愛され続ける

サムちゃんとは違うもんな~…」

わめき散らして不貞腐れるラァードル


「何を言うか。それを言うなら吾輩だって

リリエルから100パーセントの信用を勝ち得たことなど皆無だぞ」


「…!!えっ…またまたあ!もう、そんなわけないじゃんか!!」

一瞬驚くが、さらに怒り出すラァードル


「そんなわけあるのだ。残念ながら。」

ため息をつきながら、呟くイザマーレ


「…サムちゃん…本当に??」

却って心配そうな顔を浮かべるラァードル


「あいつにとって吾輩など、まだまだその程度。そういう事だな。

だからといって怯んでどうする。いつか必ずリリエルの信用を

勝ち取ってやらねばな。」





「そうだな。リリエルからどんだけ愛されても物足りない、

欲張り王子だからな。お前は♪」

ウエスターレンは笑ってイザマーレの髪を撫でる


「だが、ラァードル。良かったじゃないか。

あとはスプネリアの信用を勝ち取るべく、愛し続けてやるだけだろう。

それからな、お前がスプネリアの前から消えた時、あいつも間違いなく

お前を愛していた。それだけは、俺様が保証してやる」


「!!…そうか。じゃ、やっぱり傷ついてるよね?」


「お前はどうなのだ?ラァードル」

「えっ…」

急にイザマーレに問われ、固まるラァードル


「…恐らく、お前が感じているくらいには背負い続けているはずだ

それはきっと、消し去ることは難しいかもしれない。

そして、消すべきことでもないのかもしれないな」


「…サムちゃん…」


静かに語るイザマーレに、ラァードルは改めて言葉を失う


「そうだね。迷ってる場合じゃないよね。

何が何でも、幸せになってやらなきゃね」


ラァードルの鼓舞する言葉に、イザマーレも笑顔になる


そんな彼らを文化局の森の木々が、静かに見守り続けていた




 
 
 

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