信用問題
- RICOH RICOH
- 2024年10月22日
- 読了時間: 3分
そんな事があってから、数日後
久しぶりに文化局の森でお茶会を催していた
今回は各々の相手を帯同せず、
構成員同士の屈託のない集まりだった
イザマーレとウエスターレンは、
ラァードルと一緒のテーブルに座り
他愛もない会話を続けていた
「ラァードル、どうだ?その後、スプネリアとはどうなってる?」
「うん…ありがとね。徐々にだけど、一緒にいる時間が増えて
固さもほぐれてきたように思うよ。でもさ…」
「でも…?何か心配事でもあるのか?」
「やっぱりまだ、信用されてないって感じるんだよね。
ほら、吾輩、急にスプネリアの前から姿消しちゃったじゃない?
仕方のない事とはいえ、傷つけちゃったから…ん?でも、どうだろ?
あの頃、スプネリアを好きだったのは吾輩だけかな?それなら
そこまで寂しがる事もなかったか…?」
「さて…それはさすがに、吾輩の知った事ではないが…」
「あ!!ひで~。そこまで聞いておいて見放さないでよ!!
どうせね、最初から最後まで、リリエルちゃんに愛され続ける
サムちゃんとは違うもんな~…」
わめき散らして不貞腐れるラァードル
「何を言うか。それを言うなら吾輩だって
リリエルから100パーセントの信用を勝ち得たことなど皆無だぞ」
「…!!えっ…またまたあ!もう、そんなわけないじゃんか!!」
一瞬驚くが、さらに怒り出すラァードル
「そんなわけあるのだ。残念ながら。」
ため息をつきながら、呟くイザマーレ
「…サムちゃん…本当に??」
却って心配そうな顔を浮かべるラァードル
「あいつにとって吾輩など、まだまだその程度。そういう事だな。
だからといって怯んでどうする。いつか必ずリリエルの信用を
勝ち取ってやらねばな。」
「そうだな。リリエルからどんだけ愛されても物足りない、
欲張り王子だからな。お前は♪」
ウエスターレンは笑ってイザマーレの髪を撫でる
「だが、ラァードル。良かったじゃないか。
あとはスプネリアの信用を勝ち取るべく、愛し続けてやるだけだろう。
それからな、お前がスプネリアの前から消えた時、あいつも間違いなく
お前を愛していた。それだけは、俺様が保証してやる」
「!!…そうか。じゃ、やっぱり傷ついてるよね?」
「お前はどうなのだ?ラァードル」
「えっ…」
急にイザマーレに問われ、固まるラァードル
「…恐らく、お前が感じているくらいには背負い続けているはずだ
それはきっと、消し去ることは難しいかもしれない。
そして、消すべきことでもないのかもしれないな」
「…サムちゃん…」
静かに語るイザマーレに、ラァードルは改めて言葉を失う
「そうだね。迷ってる場合じゃないよね。
何が何でも、幸せになってやらなきゃね」
ラァードルの鼓舞する言葉に、イザマーレも笑顔になる
そんな彼らを文化局の森の木々が、静かに見守り続けていた
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