光の道標
- RICOH RICOH
- 2024年10月28日
- 読了時間: 3分
さて、これまでの夢舞台を、熱いまなざしで見続ける瞳があった
それは、光り輝くステージではなく、闇の中にひっそりと咲く黒薔薇
あの日、振付師ダンケルと運命を共にしたダイヤだった。
砂塵に飲み込まれ、湖の底に沈みゆく間に
いつの間にかダンケルともはぐれ、何とか辿り着いたのだ
荒波にもまれた彼女の手は荒れ放題。着ている服もボロボロ…
周囲から寄せられる遠慮ない罵詈雑言に晒されながら
常に俯き、生きる意味さえ見出せずにいた
そんな中で、偶然見つけた劇場に足を踏み入れた
力なく客席に座り込んで、目の前で繰り広げられる猫たちの生き様を
興味深く眺めていた
メリグリーのバルを後にして、
軒下で愛し合うイザマレオールとリエシラバブ。
そこへ忍び寄るように姿を現したサムパラガス
彼らの営みを静かに見守りつつ、不敵な笑みを客席に向ける
「いつになったら、こちらの世界に来るのだ?ダイヤ」
「!!」
驚いたダイヤは顔を上げるが、再び恥ずかしそうに俯く
目の前で見続けていた夢舞台に胸を躍らせ、
自分も仲魔に入りたい…
リエシラバブとイザマレオールのように
素敵な恋を見つけたい…
そんな風に抱いていた想いさえ、見透かされていたのだ
「…有難きお言葉…ですが私は人間…
猫の世界にお邪魔する事は許されないですから…」
言葉の鎧で雁字搦めにしている割に、寂しさを隠せずにいる瞳
「え~い☆彡」
「!!?!?」
リエシラバブの天真爛漫な声が聞こえたと思ったら
いつの間にか猫の姿に変身したダイヤは
舞台上で抱きしめられていた
「貴女は…今日からダイヤベラ様♪
もう、あまり時間はないわ。こちらにいらして。」
呆気にとられながら、リエシラバブに手を握られ
舞台の中央に連れて行かれるダイヤベラ
「??? えっと…?」
何が何だか分からず、首を傾げるだけのダイヤベラの周りに
たくさんの猫が取り囲む
警察猫のエストラップが静かにメロディーを奏でる
「幸せ…彼と共に生きる喜び…」
小高い丘に居並ぶイザマレオールとリエシラバブが
高らかに歌い上げる
「夜露を払い、花は甦る…待とうよ、夜明けの彼方から現れる明日を…
町の灯は消え去り、夜は終わる 古き日は去り、夜明けが近づく…
木漏れ日は輝き、光が溢れる…花のように朝がひらく…」
その言霊に合わせ、集まった猫たちの歌声も混ざり合う
「昇れ天上へ…光を道標に向かうのだ…迷わずに…」
ダイヤベラの立ちすくむ足元が突如光り輝き
天上に虹色の扉が現れる
扉の先に姿を現した、角の生えた猫
「…謝れよぉ。みんなしてアドリブばかりで
最後の最後まで出番がない僕、すんげえ待たされた💦」
「(笑)すまないな、ベルデュトロノミー。
後の事はよろしく頼んだぞ」
ニヤッと笑うイザマレオール
「まあ、辛かったのは最初の2時間だけだったけどね…
それと僕、魔術は頑張るけど歌は無理だからね💦
イザマレオール、頼むよ」
そんなやり取りの後、
咳払いをしてダイヤベラに向き合うベルデュトロノミー
「え~…お待たせ。ん、いや逆か。僕が待ったんだよな(笑)
まあいいや。ダイヤベラちゃん。僕に任せて。愛する彼の元に
連れて行ってあげる。随分と前から、待ちくたびれてるよ…」
イザマレオールとリエシラバブの言霊で光に満ち溢れた中
ゆっくりと天上に引き上げられていくダイヤベラ
一足早く魔の世界に辿り着き、立場が逆転して
大魔王となった「振付師」ダンケルの元へ…
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