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死の旋律


巻きつけられた蔓に苦しみ藻掻く天使たちは、

ふっと力が抜けたことを感じて目を開く


寸前まで荒くれだっていたリリエルの髪は、

元の穏やかさを取り戻している


「…なんだ、降参か?姉ちゃん」

よく分からないが、これはチャンスと再び色めき出す


だがリリエルはゆっくりと瞳を閉じ、口を開いた


「…!」


最初は静かな旋律で気が付かなかった

だがそれが、あるメロディだと気が付いた瞬間

そこに居る天使たちは、その感想を伝えることはおろか

声を発する事も出来なかった


バタバタと消滅していく天使たち


(……これは……)


その様子を感じ取りながら

当初は怒りに満ち溢れていたリリエルの中に

別の感情が生まれる




その瞳に映っていたのは、在りし日の光景


……イザマーレ様……


美しい旋律。はるか銀河を思い浮かべるような深い歌詞

自然の力、生きとし生けるものへの賛歌


だがそれは、澄み切った夢幻月詠の声に操られた途端

穢れを許さない厳しさを伴う歌に変化してしまう



屋敷に連れ帰ってもらった後、はじめて一緒に歌ったこの曲

リリの愛の旋律と合わせた事で、それは正しく

生き物を蘇らせる力を与えた


イザマーレの笑顔 優しい光


決して失ってはいけないもの

何故なら、この世で誰よりも強く、

生きとし生けるものの生命の謳歌を

望んでいる方なのだから


……心配なさらないで。リリエルがいつもお傍にいますから……


ただ一魔、愛しい大悪魔を思うリリエルに

尽きる事のない力が泉のように溢れ、止まらなくなる


歌うリリエルに、すでに自我はなく

その身体は旋律を奏でるための器に過ぎない

メロディは途切れることなく、何度もリフレインしていく…




 
 
 

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