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Ⅰ 珊瑚の絆


寒い冬も峠を越え、春先の柔らかな陽射しに包まれる時候


人間界と同じく魔界も、年度締めの慌ただしさで

相変わらず多忙を極める副大魔王


お茶を差し出しながら、チラッと表情を窺うリリエル


「? どうした?」


リリエルの視線に気がつき、手元の書類から目を離さず問いかける


「///…あ、いえ…すみません。」


イザマーレの執務を妨害する行為はご法度。

とはいえ夫婦なんだから、少しくらいプライベートな会話をしたって

誰に責められるものではない


「別に構わない。なんだ?」


手元の契約書をトントンと揃えて脇に置き

リリエルの淹れたお茶を味わいながら、改めて向き合う


「…もうすぐじゃないですか?今年は何か

お考えなのかな…って…//////」


言われて初めて、今が何月の何日なのか確認し始めるイザマーレ


「! もう、そんな日数が経っていたか…💦」


思い至り、改めて考え始める


「///前回は、閣下が素敵すぎるお呪いを御用意してくださって…

私も何か、喜んでいただける事が出来たら良いな、と思うのですが」






「…そうだな。別に構わないぞ。

今回は、吾輩とリリエルの2魔で考えても良いよな」


「///で、でも…閣下と長官のお邪魔をするわけにはいきませんから💦」


「(笑)別に良いじゃないか。何度も言うが

ウエスターレンと吾輩の事で、お前が遠慮する必要はない。」


穏やかに微笑むイザマーレだが、

リリエルは納得いかないように俯き、口を尖らせてから

改めてチラッと見上げる


「///もし…お許しいただけるなら、アイディアだけ…

私と連名でも良いと仰っていただけるなら、構成員の皆さ魔と一緒に…

というのはどうですか?」


「最高魔軍で、ということか?…そうだな。」


「やはり私は、悪チンツアーで長官が復活してくださったこと

本当に嬉しかったんです(*´艸`*) だから、ミサの時のように

構成員の皆さ魔がステージ上で、ケーキでお呪いされる姿を

見てみたいなって…//////」


リリエルの吐露する思いに静かに耳を傾けながら

微笑み、髪を撫でるイザマーレ


「人間界では、結婚した夫婦の歴史に合わせた呼び名があるんですよ♪

4年目は花、5年目は木、30年目は真珠…」


「! ほう…それでは37年目はどうなる?」


興味を示したイザマーレに、リリエルは少し困ったような表情を浮かべる


「…キリの良い数字ではないようで…

その年数に当てはまる呼び名はないのです

ですが、35年目から40年目までは、『珊瑚婚』と呼ばれています」




 「なるほど…今の我々にはぴったりだ、という事だな?

その呼び名の意味は?当然あるんだろ?」


イザマーレの返しに、心の底から嬉しそうな笑みを浮かべ

頷くリリエル


「はい。うろ覚えかと思い、調べ直したんです♪そしたら…」


…長い時間をかけて育まれた夫婦の絆を

海の中でゆっくりと時間をかけて成長する珊瑚に見立てて…


「構成員の皆さ魔、個々の素晴らしさと

時をかけて熟成される絆による尊さ…全てが噛み合わさって

生きる伝説となる…まさに、最高魔軍そのもの…と思って(*´艸`*)」


「確かにな。しかしお前は…本当に最高魔軍の事が好きだよな(笑)

時々、複雑な気分になるぞ」


「…えっ?」

思わぬイザマーレの言葉に、キョトンとするリリエル


(吾輩も、それくらい手放しで褒められたいだろうが!!)


(…!…//////)


脳内に届いたテレパシーに、真っ赤になってから

じ~っと見るリリエル


「はいはい。吾輩も、リリエルの案に乗っかろうと思う。

それなら、Lily‘sも集めて皆でやるか♪」


「! はい♪キャー(≧∇≦)絶対、素敵~💕」

イザマーレの提案に、飛び跳ねる勢いで喜ぶリリエル





 
 
 

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