雪の奇蹟
- RICOH RICOH
- 2024年10月21日
- 読了時間: 4分
ドアを開けた瞬間、そこにウエスターレンが待ち構えていた
「よお♪持ち場をこっそりと抜け出してデートか。
どこへ行くつもりだ?」
紫煙を燻らせながら、ニヤッと笑いかける
「ウエスターレン。奇遇だな。姫君からの熱いラブコールに
応えてやらねばならんのだ。ちょうどいい。お前も来い♪」
イザマーレもウエスターレンと目配せしながら
ニコニコと微笑む
ウエスターレンも連れ立って共に理事長室へ向かう
「あれ、奇遇だね。」
理事長室の廊下の前で、魔法陣が現れ、ベルデが姿を見せた
「ベルデ先生♪こんにちは~(*^▽^*)」
リリエルが笑顔で挨拶する
「リリエル先生、こんにちは♪ 急な雪だからね。
オーラと結界の様子を確認しに来たんだよ」
「そうでしたか。いつもありがとうございます♪」
「お~い、ベルデ。お待たせ。
どうも予定では、後2時間くらいは降り続けると思うんだ。
すまないね。おや!サムちゃんたちも一緒か。」
そう言いながら駆けつけたのはラァードル。
「ラァードル先生、素敵な雪景色、ありがとうございます♪」
ニコニコお礼を言っている間、イザマーレが理事長室をノックし、
中に入って行った
…いつもスプネリアとワチャコラし合うラァードルも、
実は副担任だったのだ
イザマーレはダンケルに向かい、頭を下げる
「陛下、失礼します。急に冷えましたので、
なにか熱い飲み物でもお出しするべきかと、
リリエルが気にしておりまして。」
(…♪)
髪に乗ったまま、聞いていたリリエルはますますご機嫌になる
「イザマーレ♪よく来たな!!
どんなに凍えるような世界でも、
お前さえいれば光に満ちて、暖かい。さあ、おいで。
リリエル、気にするな。今日は私がお前らに振舞ってやるぞ♪」
突然のイザマーレの表敬訪問と、滅多にないゲストの多さに、
ダンケルも久しぶりにウキウキしていた
ダンケルが魔宮殿にいる使用魔に命じて、紅茶を用意している時
「いや~、今日は寒いねえ。一番暖房の利く理事長室で
おやつ貰っちゃおうっと…って、あれ?な~んだ、皆、お揃いで!」
「おいバサラ!抜け駆けすんなよ、俺も行く…ってあれ?」
「…バサラ。いい加減、私の部屋を
都合の良いコンビニ代わりに使うのはよせ(笑)
だが、まあいい。君らも座り給え。」
連れ立って現れたバサラとセルダも、ダンケルを中心に腰かける
淹れたての紅茶の香りを嗜みながら、優雅なお茶会となった
しばらくして、イザマーレが口を開く
「いい加減、隠れてないで姿を見せろ。ミカエル」
「!!!」
イザマーレの言霊で、消えていた扉が開き、
中から気まずそうな顔を浮かべたミカエルが現れた
そんなミカエルに、微笑みながら
静かに語りかけるイザマーレ
「今日は、地平線まで消えるような雪だ。
誰もお前のオーラに惑わされる者などいない。こんな時くらい、
世界の歪みなど気にせず、共に過ごそうではないか」
「イザマーレ。お前がそう言ってくれるなら…
おや?髪に座る素敵なお嬢様は…」
イザマーレに促され、テーブルに着いたミカエルは
リリエルに向かい、にこやかに微笑む
「クスクス♪ ミカエル様、こんにちは。
いつもあまりご挨拶できなくて、ごめんなさい。」
リリエルは微笑みながら、ミカエルに挨拶する
「リリエルは、吾輩の妻だ。会ったことはあるだろ?ミカエル」
「そうだね。いつもダンケルと、イザマーレの取り合いっこをする
可愛らしい姫君なのは知ってるよ♪今のところ、圧勝のようだね。
リリエルちゃん♪」
「ふふっ はい♪ミカエル様の大事な理事長を
副理事長に取られないよう、私も協力しますよ♪」
ミカエルとやり取りするリリエルを眺めながら、
微笑むイザマーレ
「リリエル、よく言った!俺もささやかだが、
援護射撃させてもらおう♪」
そんなイザマーレの髪を撫でながら、
ウエスターレンが八重歯を見せて笑う
「…あれ、…イザマーレ様…雪、凄い積もってます…
今日はこのまま、皆さんと過ごしませんか?
雪だるま作りたーい♪♪」
深々と降り積もる雪の中、
天真爛漫なリリエルの声がこだまする
イザマーレは、すべて理解していた
ミカエルに分け与えることで
失ったように思える魂の一部は
何も示し合わすことなくとも、一同に集まれるほどの
絆を誇る構成員と、彼らを我が子のように慈しむダンケル
そして、リリエルと出会う事で知る事となった感情により
失うどころか、足りないものなど何一つないという事に
「イザマーレ様、お慕いしています。ただ眺めていた時も
出会ってから今日までずっと、『好き』の気持ちは増えております。
あの時イザマーレ様は、その事を私に教えてくださった。
それを、『愛』と呼ぶのだと…」
「そうだな。…さて。そうは言っても、あまり長居は陛下に失礼だ。
我々はこの辺で失礼しよう。リリエル、雪だるまは、また今度な♪」
ダンケルに一礼をして、ウエスターレンと共に立ち去る。
その日、屋敷のプライベートルームの扉が消え
解き放たれた炎のオーラで、
積もった雪が解けた事は言うまでもない…
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