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Epilogue


丸太小屋で、プルーニャの持ち込んだ話を読みながら

静かに笑みを浮かべている里好


ふうっと息を吐き、遠くを見ている


「……もしかして………」


考えを巡らせながら、秘密の階段をゆっくりと降りて行く

やがて、人間界に辿り着き、自宅の玄関を開けると、

奥にある物置に向かう


古びた本棚の中から、一冊の詩集を取り出す


『秋桜 作:里好』


結婚する時、唯一持ってきていた過去作だった。

その頃、書き綴っていた作品は、とてつもなく暗く

ネガティブなものばかりで、今のそれとは想像できないほどだ


…というのも…


「実は…もう一名、いたのよね。忘れかけていたな…理恵ちゃん…」





リリエルの器として、多くの時間を過ごしてきた里好の描く作品は

すべてリリエルから伝わる物語なのだ


イザマーレは、リリエルと年齢を合わせるために、過去に行っている。

だが、その前に出会った「もう一人のリリエル」が居た事を

思い出していただけるだろうか


その、「もう一人のリリエル」が、「理恵」として確かに存在していたのだ


彼女は、学ランのお兄ちゃんに抱き上げてもらうこともなく

黄金の雄鶏に見守られることもなく

キャンプファイヤーでイザマーレの言霊を聴く事もなく

ただ、見捨てられた残念な人間として、生きていくしかなかった


ラドルとの出会いも、結婚や出産の経験もないまま

早々に生きる事をやめていた


それが、彼女「理恵」としての天寿を終えた時だ




ちょうどその頃、ウエスターレンに次ぐ火のエレメンツを持つ悪魔として

今よりもさらに荒々しく、魔界を自由気ままに闊歩していたセルダ


貴族魔や官僚に就く悪魔達との付き合いは苦手で

各地にある広大な森を散策したり、山登りするのが好きなセルダ


ふと、訪れていた森の麓で

発生したばかりの「悪魔のたまご」を見つける

特に何の不思議もなかったが、何となく気になり、そのまま持ち帰り

イザマーレに見せに行った


「セルダ…またお前は…駄目だぞ。返し…ん?ちょっと待て!!」


気ままな1魔歩きのたびに、何かを拾っては土産に持ち帰るセルダに

いつものように小言を伝えようとしたイザマーレが、

手元のたまごのオーラを察知した途端、様子が変わる


改めて透視して真実を悟った


「…そうか…気になってはいたんだが…」


「…閣下?」


静かに呟いたイザマーレに、セルダは不思議そうに見つめ返す


「ん、あ、いや…何でもないんだ。そうだ。せっかくだから

こいつが殻を割るまで、吾輩が面倒を見てやる。

数日、預からせてもらえるか?」


「!!…え、そしたら俺、返してこなくていいのん?」


「吾輩が頼むんだから、良いに決まってる。

そしたら 3 日後、お前に返してやるからな」


「分かった!! 閣下、ありがと♪」

思わぬ収穫に大喜びで、納得した表情で屋敷を後にするセルダ




屋敷の中で、セルダから受け取った「たまご」を見つめ

ゆっくりと手を翳すイザマーレ


「『リリエル』ではなく『理恵』のまま手放してしまった為に

哀しみと絶望しか味わえない辛い人生になってしまったな。

すまなかった。もう一度、生き直せ。今度は明るい魔生にしてやろうな…」


どす黒く、負のオーラを纏っていた「たまご」が、明るいオーラに転換していく


全てを見届けていたウエスターレンは、イザマーレに優しく寄り添う


「よし。それなら、せっかくだ。

俺たちが進んだあの世界に送り届けてやろうぜ。

ホンモノのリリエルを通じて、必ずまた再会できるようにな…」


「そうだな。だが、セルダにも約束したからな。

人間界へは魔猫と共に降臨させれば良いか。」


3 日後、約束通り、屋敷へ訪れたセルダに

殻を割ったばかりの悪魔を手渡す


「ではセルダ。人間界で待ってるぞ。」


生まれ変わった悪魔は、セルダと共にとある中学校の校舎に降り立つ


そこには、飴を持ち込んだのがバレて

不良悪魔集団から怒鳴りつけられている転校生の姿が…


(助けてあげたい…)


そう思って、制服から飴を取り出す悪魔に驚いて見上げるスプネリア


「…!…プルーニャさん…///////」




🥚虎穴 Fin.🥚






 
 
 

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