Lily紀章―prologue―
- RICOH RICOH
- 2024年11月25日
- 読了時間: 2分
「…あら?…う~ん、駄目だったか…」
ある朝の事
屋敷の庭園で水やりをしているリリエルの声がする
プライベートルームで身支度を整えていたイザマーレがすぐに現れた
「リリエル?どうかしたのか?」
「あ、閣下…はい…気になってたんですが、やはり
この子だけ、咲きませんでした…」
リリエルの足元にはチューリップの花壇
色とりどりに花を咲かせる中
一輪だけ蕾がつかず、葉っぱだけになってしまっている
「…そろそろ、輪廻の時期なのでしょうね。
また…出会えると良いのですが…」
「そうだな…」
やや残念そうなリリエルを気遣うが、さすがに自然界の法則は
イザマーレが立ち入るべきことではない
植物は枯れ、土に還る。
そして、その身を新たな糧とし、ゆっくりと時間をかけて再生する
「すみません…お騒がせしました。すぐに朝食の準備をしますね」
気を取り直して微笑むリリエルを抱きしめて、そっと髪を撫でながら
イザマーレは改めて、在りし日の出会いに想いを馳せていた
「もしも…」
「…閣下…?」
不思議そうにキョトンと首を傾げるリリエルを見つめるイザマーレ
「もしも、あの時『始まりの場所』でお前に出会えていなかったら…
考えたくもないが、今とは全く違う世界になっていただろうな。」
「…そうですね…閣下はきっと、何も変わらず素敵だと思いますが
私の事は、見つけてもらう事も出来なかったでしょうね(^-^;」
「……」
もしもあの時、リリとの出会いがなければ…
おそらくリリエルはリリとして、どこか別の場所に根づき
花を咲かせていたに違いない
まず、始まりの場所で、操り歌で遊んでいたイザマーレの言霊で
魔界中の草花が枯れ果てたままだったろう
イザマーレの言霊で死に絶えていく多くの草花を
見送る事しかできなかった筈だ
「…吾輩、ひょっとしたら、
お前に物凄く恨まれていたかもしれないな(苦笑)」
「…確かに、そうかも…(^-^;」
イザマーレの言葉を咀嚼し、苦笑いするリリエル
「だけど…」
リリエルはそっと、イザマーレを見つめる
「それでも、きっと…///」
言い淀み、恥ずかしそうに俯くリリエルの髪を撫で、
聞こえてくる心の声に、イザマーレも微笑む
「…それならいっその事、里好に頼んでみるか?」
「…そうですね。怖いけど…見てみたい…かも(*´艸`*)」
そんな会話をしながら、リビングへ戻って行く2魔…
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