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Lily紀章―prologue―


「…あら?…う~ん、駄目だったか…」


ある朝の事

屋敷の庭園で水やりをしているリリエルの声がする


プライベートルームで身支度を整えていたイザマーレがすぐに現れた


「リリエル?どうかしたのか?」


「あ、閣下…はい…気になってたんですが、やはり

この子だけ、咲きませんでした…」


リリエルの足元にはチューリップの花壇

色とりどりに花を咲かせる中

一輪だけ蕾がつかず、葉っぱだけになってしまっている


「…そろそろ、輪廻の時期なのでしょうね。

また…出会えると良いのですが…」


「そうだな…」


やや残念そうなリリエルを気遣うが、さすがに自然界の法則は

イザマーレが立ち入るべきことではない


植物は枯れ、土に還る。

そして、その身を新たな糧とし、ゆっくりと時間をかけて再生する


「すみません…お騒がせしました。すぐに朝食の準備をしますね」


気を取り直して微笑むリリエルを抱きしめて、そっと髪を撫でながら

イザマーレは改めて、在りし日の出会いに想いを馳せていた


「もしも…」




「…閣下…?」


不思議そうにキョトンと首を傾げるリリエルを見つめるイザマーレ


「もしも、あの時『始まりの場所』でお前に出会えていなかったら…

考えたくもないが、今とは全く違う世界になっていただろうな。」


「…そうですね…閣下はきっと、何も変わらず素敵だと思いますが

私の事は、見つけてもらう事も出来なかったでしょうね(^-^;」


「……」


もしもあの時、リリとの出会いがなければ…


おそらくリリエルはリリとして、どこか別の場所に根づき

花を咲かせていたに違いない


まず、始まりの場所で、操り歌で遊んでいたイザマーレの言霊で

魔界中の草花が枯れ果てたままだったろう


イザマーレの言霊で死に絶えていく多くの草花を

見送る事しかできなかった筈だ


「…吾輩、ひょっとしたら、

お前に物凄く恨まれていたかもしれないな(苦笑)」


「…確かに、そうかも…(^-^;」

イザマーレの言葉を咀嚼し、苦笑いするリリエル


「だけど…」

リリエルはそっと、イザマーレを見つめる


「それでも、きっと…///」




言い淀み、恥ずかしそうに俯くリリエルの髪を撫で、

聞こえてくる心の声に、イザマーレも微笑む


「…それならいっその事、里好に頼んでみるか?」


「…そうですね。怖いけど…見てみたい…かも(*´艸`*)」


そんな会話をしながら、リビングへ戻って行く2魔…






 
 
 

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