いつかの約束
- RICOH RICOH
- 2024年10月19日
- 読了時間: 3分
魔界における様々な柵から解放され
旅を満喫中のイザマーレたち
コテージを運営するコンドミニアムで温泉に入り、
コインランドリーで衣服を洗濯している間、ラウンジで食事をしたり
湖畔まで散歩をしたり…
その間、リリエルはずっと、ある思いを抱いては、やり過ごしていた
(…悪魔なんだから、いくらなんでも無理だよね……)
コンドミニアムの敷地内には、小さなチャペルがあった
綺麗な青一色のステンドグラスが、
その地を訪れる恋人たちを祝福する
幻想的なモニュメントになっていた
(それに…)
今回、イザマーレたちと訪れたこの地は、
リリエルがかつて人間だった頃
家族で何度も訪れた、思い出の土地だった
人間界で結ばれた相手とも、恋人時代に訪れ
『この場所で結婚式をあげたい』…そんな思いを抱いたものだ
結果としてその夢は叶わず、都内のホテルで
ありきたりの式しか行わなかったのだが…
「リリエル?どうかしたか?」
いつも優しく髪を撫でて、寄り添ってくれる愛しい悪魔
繋いだ手のぬくもりに、リリエルは笑顔で見つめ返す
「閣下…あの時、仰ってくださった事、本当に嬉しかった…」
「ん?…ああ、…嘘ではないぞ。
何なら今ここで、もう一度言おうか?」
リリエルの心を読み取ったイザマーレは、優しく抱きしめる
「リリエルを心から愛し、永遠に寄り添う事を吾輩自身に誓う
ウエスターレンと共に、必ず守り抜く。
リリエル。お前はいつも、どんな時も吾輩の傍に居ろ。良いな?」
「!……///////」
途端にリリエルの瞳に涙が浮かぶ
「…返事は?泣き虫さん♪」
イザマーレは優しい目でリリエルを見つめる
「……っ…はい。私も…私自身に誓います
どんな時も、永遠に、閣下のお傍に…心から、閣下への愛を誓います…」
リリエルも濡れた瞳のまま、イザマーレを見つめ返す
そこへ…
「え~うおっほん。誓いの詞を交わしたか?
そしたら、さっさと誓いのキスを…どうぞ♪」
すぐ傍で見届けていたウエスターレンが、
わざとらしく咳ばらいをしながら促す
「観客は俺様だけだが、文句はないよな?
お前らのキューピットになってやる。有り難く思えよ♪」
やけにイケメンで、足の長いキューピットに促され
イザマーレは微笑みながらリリエルの顎に手を添え、口唇を重ねた…
結婚式の真似事を済ませた3魔
だからといって、特別に燃え上がるものがあるわけでもなく
むしろいつもと同じように(?)穏やかな時間を楽しんでいた
「しかし…柵から解放される事が、こんなにも嬉しいとはな。」
己の持つ多くの肩書。
それらを一旦隅に追いやって、自由を満喫するイザマーレ
「あ~、もう俺、このままここに居てもいいや(笑)
それくらい、俺にとっても贅沢な時間だったな。
お前のそんな柔らかい笑顔を、
特等席で眺めていられるんだもんな♪」
悪魔でも、副大魔王でも何でもなく、
ただ出会った者同士だったとしても
間違いなくお互いを求め、愛するに違いない。
そう確信できたウエスターレン。
イザマーレを抱き寄せて髪を撫でる
「…ところで、あの時出現して消えてしまった階段と、扉ですが…」
そんなイザマーレたちにお茶を淹れながら、リリエルが問いかける
「ん?気になるか?せっかくなので、
魔界の丸太小屋と半永久的に繋ぐことにした。
いつでも好きな時に来れるようにな♪」
リリエルにとっての思い出の場所は、
イザマーレたちも相当お気に召したようである…
Fin.
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