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たしかなもの


「スプネリア!急に居なくなるから心配したじゃないか」


「ご、ごめんなさい……先程来た時から、

はっきりとは思い出せないけど何かを感じるのです……

気が付いたらこの部屋の前に来てました……

だけど、閣下と長官が……?」


「ああ、サムちゃん達や扉の事なら気にしなくていいよ

……それにしても、この部屋気になる? ではお手をどうぞ」


ラァードルが手を差し出す

少し照れながらそっと手をのせると部屋の中にエスコートされる


部屋の中を見渡すとぼんやりとだが情景が見えてきた

前にもこうしてこの部屋に誰かにエスコートされ、過ごしたことを……

それが誰だったのか……

ぼんやりと考えていると、

後ろからそっとラァードルに抱きしめられる


「えっ?あ、あの……」


「……突然ごめんな、このまま吾輩の話を聞いて欲しい……

この部屋に感じるものがあるのは、

ここがお前と初めてひとつになれた部屋だからだ

スプネリアの心の奥底にある記憶が反応したのかもしれないね

だけど、記憶が戻らなくても、ずっと吾輩が守ってみせるから

傍にいて欲しい……昔からスプネリアの事が大好きだ」


そう言われ真っ赤になり俯くスプネリア

後ろから回されたラァードルの腕にそっと手を置く


「……記憶が戻らなくても、ずっとお傍にいてもいいのですか?

今の自分の気持ちに正直になってもいいのですか……?」





スプネリアの瞳からポロポロと大粒の涙が零れる

改めて向きを変え、強く抱きしめながら涙を拭うラァードル


「もう泣かなくてもいい…… ずっと傍にいるから……」

「……はい、ずっとお傍にいさせてください……」


しばし見詰め合った後、自然にお互いの口唇が重なる……

初めは軽く優しい口付けから徐々に深いものになっていく

頭の奥に甘く痺れを感じるのと同時に


(あ……この感じ…… この口唇、わ、私……知ってる……?)


ハッキリ思い出せないが、

間違いなく自分が愛した相手だと感じ取った


「記憶がないなら、またここから改めて新しくスタートしよう?

……スプネリア、愛してるよ……」


ラァードルの顔を見上げながら、指で顔や唇を触っていく


「……思い出せないけど、この唇はなんとなく覚えてるかも……

ずっと一緒にいたい……」

ラァードルの胸に顔を埋め、見上げながらそう呟く……






 
 
 

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