オペラ座の魔物(中)
- RICOH RICOH
- 2024年10月28日
- 読了時間: 5分
そんなこんなで、準主役に抜擢されたリエリーヌ
高鳴る胸を抑え、より一層レッスンに励む
誰もいなくなったトレーニングルームで、何度も練習を繰り返す
「…はあ…だめだ…どうしても、このHiHiFだけは出せない…」
こんな声じゃ、皆の言うカッカトム様に認めてもらえない…
「…あの時聞こえた御声、素敵だったな…きっとすごい天才なんだろうな…
認めてもらえるように歌えるようになりたいの…そうよ、そんな凄い方が
手取り足取り教えて下さったら、どんなにか…💕」
夢見るリエリーヌは、見た事のない姿を思い浮かべ、今日も恋焦がれる
「…なんてね。そんなに上手い事行くわけないじゃない(*´艸`*)
さっ、馬鹿な事考えてないで、練習練習☆彡」
ゆっくりと目を閉じて、息を吐き出す。口を開こうとした瞬間、
壁一面の鏡が光を放つ
「なにが馬鹿な事なんだ?お前のおねだりなら、なんでも叶えてやるぞ。
さあ、おいで。リエリーヌ…吾輩の元へ」
「!!///ひょっとして貴方が…カッカトム様…?」
その厳かさに確信したリエリーヌは目を輝かせ問いかける
「そうだ。お前の愛すべき主…かつて湖で溺れたお前を救い出してから
今日までの日々。久しいな。」
「!! あの時の、あの優しい御方…?!」
自然と近寄り、手を握るリエリーヌ
その手に優しいぬくもりを感じて見つめ合う
「…姿かたちは変わってしまったが、吾輩そのものだ。
リエリーヌ、お前をずっと待っていた…
吾輩の愛はお前のもの…」
「連れて行ってください…カッカトム様…そして
あの日の御礼を言わせてください…
リエリーヌはずっと、貴方の事を夢に描き続けてきたのです…」
「リエリーヌ…」
その黒衣の中に引き寄せ、強く抱きしめる
薄いピンクの口唇に黒い口唇が重なる
そのままリエリーヌをエスコートしながら、
地下へ入り込んでいくカッカトム
いつのまにか、再会の瞬間はなかった仮面をつけている
「カッカトム様?なぜ貴方の素敵な御顔を隠されるのですか?」
「…闇の世界では魔力は効かない。
お前に、自らの醜い姿を晒したくないのだ
ようやく会えたお前に、見限られたくないからな」
「カッカトム様…私は貴方を愛しています。どの御姿でもいいの
貴方こそが、お傍に居てくだされば、それだけで…」
月の光に照らされた、湖
闇へ進む小舟の中で肌を重ね、愛し合う
闇の地下室で、まどろみから目を醒ましたリエリーヌ
包まれた逞しく暖かい腕
そっと見つめると、頑なに外そうとしなかった仮面が少しズレている
寝息を漏らす彼の顔に浮かぶ紋様に気がつく
「!!」
そっと仮面を外し、顔を赤らめるリエリーヌ
すぐに目を醒まし、慌てて飛び起きるカッカトム
だがリエリーヌはさらに目を輝かせ、抱きつく
「!!…リエリーヌ?」
「何それ…何それ、ズルい!!」
「…え?」
「昔、おとぎ話で見た王子様とそっくりじゃない!!
その御姿を隠してお近づきになるなんて…
ズルいです!素敵(≧∇≦)💕♪」
「…マジ?」
「うわあああん、カッカトム様、カッコ良すぎ~嬉しい💕💕💕」
厚い胸板に頬を寄せ、うっとりするリエリーヌ
湧き上がる食欲を誤魔化すように、咳ばらいをするカッカトム
「そ、それは良かった…だが、それと音楽は別だ!!
レッスンは厳しくするぞ。良いな?」
「は~い♪ お願いします。それと…」
「ん?」
「卒業できたら、是非、舞台を見に来てくださいね。
あ、その時はきちんと仮面をつけて💦
皆にこんなに素敵ってバレちゃうもの
カッカトム様は、リエリーヌだけの王子様だもん♪」
「///そ、卒業なんて…させるわけなかろう!!
あんな音すら出せないようでは💦」
「ええ~、カッカトム様のケチぃ~」
口を尖らせるリエリーヌ
「///////いいから!!さっさと始めるぞ!!」
むちゃくちゃ照れまくりながら、
来る日も来る日もレッスンに明け暮れる
……
「ええ~…うおっほん!!💢💢
そろそろいっすか?ストーリー変えてまで
扉消さないでくれますかね💢💢💢💢」
丸めた台本を手に、苛立つダイヤ
「!!お前……💢💢お前だけは来るな!!良いか?
リエリーヌだけは渡さん!!近づけば、命はないものと思え!!」
物凄い剣幕で捲し立て、怒りを露にするカッカトム
だがその後ろでニヤつく劇場支配人の姿を見た途端
穏やかな美しい表情になる
「ウエスターレン…聞いてくれ。
ようやく出会えたのだ。見つけたのだ…」
「ああ、俺も嬉しい。お前のそんな穏やかな表情を見たのは
いつ以来だろうな💕」
「ああ、ウエスターレン…もうこれ以上、なんの未練もない。
ようやく還るべき場所へ逝ける」
笑顔で涙を浮かべるカッカトムを強く抱きしめるウエスターレン
「バカやろう…お前一魔で旅立たせるものか。
決してお前を孤独にはさせない…」
そっと口唇を寄せ、愛し合う2名…
「…あの、ちょっといいっすか💢💢それも台本と違いますよね!!
それじゃ登場人物少なすぎるので!!それと楽器隊!!
こいつらに合わせて愛のメロディなど奏でない!!💢💢
はい、暗転💢💢💢💢💢💢!!」
……
主役たちが去り、暗転した舞台上に、
のそっと姿を見せる角の生えたベーシスト
「…謝れよぉ…僕たちが何のためにここに居ると思ってるんだ…」
彼に続いて舞台の縁に次々と腰かける楽器隊員たち
「(笑)そうだよな。オケピ大嫌い至上主義なお前が
我慢し続けたのは、まさに今の瞬間の為だったよな…」
2名のギタリストたちは、共に笑う
「…まあ、辛かったのは最初の2時間だけだったけど…(笑)」
「(笑)お疲れ、ベルデ。でもそうか。
カッカトムの悲願がついに叶えられたんだね…」
ドラムスティック片手に、ベルデを労いながら
これまでの日々に想いを馳せるラァードル
彼らは、夢途中のまま命を奪われたカッカトムの魂を
黄泉の国に連れ戻すために遣わされた黒悪魔集団だった
だが、カッカトムの音楽への愛と、
たった一人の少女に対する執着の強さに
引き上げる事ができずヤキモキするうちに
彼の想いに共感し、いつしか協力し合う仲魔になっていた
カッカトムが被害に遭った時、彼の元に真っ先に駆けつけ
庇い、犯人に対峙した結果、相打ちになり
共に彷徨う魂となったウエスターレン
「すべての宝を手に入れた今、カッカトムに未練はないだろう。
次の舞台が、彼の最高傑作となるよう
俺たちも最後まで見守ってあげようよ」
そんな風に鼓舞するギタリストのセルダ。
彼の言葉に賛同するかの如く、愛猫がニャ~と可愛い声で鳴く
……
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