サロンパス~保健室へご招待~
- RICOH RICOH
- 2024年10月20日
- 読了時間: 5分
週明け最初の授業時間
体育も、イザム先生の回診もない月曜日の午前中…
どうせ今日も、ほとんどの生徒はいないだろう…ため息をつきながら
教室に向かったダイヤは驚いた。
全員とまではいかないが、かなり多くの生徒が出席していた
いつものメンバーはもちろん、どちらかというと男子生徒の出席率が高い。
不思議に思うが、特に気にせずそのまま授業を始めた
そのうち、教室の外から何とも言えない幸せな匂いが漂ってきた
「…ん?なんかすっごく美味しそうな匂いだな…今日どこかで
調理実習とかあったっけ…??」
思わず呟いたダイヤ
そこへ、授業を抜け出していたシルバが戻ってきた
「セリーヌさん。今日のパンの予約は済ませてきました!」
「やったね!ありがとう!ちゃんと人数分抑えてくれた?」
「もちろんです!結構並んでましたが、
強肩発動させてもらいました(*´艸`*)」
シルバとセリーヌ…この2魔
実は王室から極秘に派遣された専用警備隊だ
担任を務めるダイヤのクラスに溶け込み、些細な事は
すべてダンケルに報告している
そうとも知らず、生徒と信じて疑わないダイヤ
「シルバ君!授業を抜け出して何なの?」
真面目なダイヤが呆れて注意すると
「ええ?やだ~あ、ダイヤちゃん、知らないの?
今日は校長のリリエルちゃんがパンを作ってくれる日だよ
希望者は午前中までに予約を取らなきゃいけないの。
大人気だから1時間目にはすぐ締め切られちゃうんだよ!」
「え?!」
「不定期ですけどね。だいたい第一週目の月曜日。
ダイヤ先生、今日はまだ余裕があるみたいですよ。
僕が案内しましょうか?」
シルバに言われ、
「予約が取れたならもう行こうよ!いい席取りたいじゃん!」
セリーヌに連れ出されるダイヤ
連れて行かれた場所は
保健室と中庭を挟んだちょうと正面の部屋だった。
大勢が一度に座れる長テーブル、
少人数用の丸テーブルがバランスよく配置されている
奥のキッチンでリリエルが一魔、
焼きあがったばかりのパンを取り出していた
「こ…校長先生?!」
「あら?ダイヤ先生!…どうなさったの?今、授業中では……?」
リリエルはダイヤを見て、微笑みかける
「リリエル先生!ダイヤ先生の分の予約、まだ取れますか?」
「シルバ様…そうか、ダイヤ先生の事を心配してくれたんですね。
今日の予約はもう一杯になっちゃったけど、
検食用にひとつ作ってあります。
ダイヤ先生、今日は私の代わりに召しあがってくださる?」
「え!!!よろしいのですか?それなら是非!
でもすみません、それって、校長先生の分ですよね…」
あまりにも美味しそうな匂いにつられて、ダイヤは喜ぶと同時に恐縮する
「副理事長やベルデ先生には、わざわざ検食の必要なんかないって
言われてるの。でも、どうしても心配で。とくに今のような季節だと…
私の事は気になさらないでいいのよ。良かったらどうぞ♪」
リリエルはそう言って、最後のパンをダイヤに差し出した。
「良かった!ダイヤちゃん、リリエルちゃんはどうせいつも、
副理事長室で特別なランチタイムになるんだから、
遠慮しないでいいのよ!ね~?」
メーラとバナトラは揃ってニヤニヤし始める
「リリエル先生、あとは僕たちがやりますよ。後片付けも任せてください!」
今さら授業に戻りたくないシルバも、快くリリエルの手伝いを願い出る。
「クスクス。分かりました。ありがとう。
じゃあ、よろしくお願いしますね♪」
リリエルはそう言うと、部屋を出て行った
ちょうどその時、一時間目の終わりを告げるチャイムが鳴り
学園中の男子生徒や職員が押し寄せた。
「リリエル先生~~~!!!あっ、なんだよシルバ!
今日も抜け駆けかよ!」
「ああ?!うるせーよ、てめえら!口より手を動かせ!
サボるやつらは許さねーぞ!!!」
遅れをとった職員のラドルや、ミル、他の男子生徒たちに睨みを利かせ
リリエルの焼き上げたパンを受け取りに来た生徒に配り、
使い終わったテーブルを綺麗に整えていく
丸テーブルに座り、リリエルのパンを頬張るセリーヌたち
「…本当によく働くねえ、シルバ大将♪」
「なるほどね…やけに男子生徒の出席率が高かったのは
リリエル先生との少ない接触の機会だからか……
あ!でもこのパン、すっごく美味しい~~~(*´艸`*)♪」
「リリエルちゃんに頼めば、
放課後いつでもサロンを開いてくれるんだよ。
美味しいお菓子やお茶を出してくれるから。
今度はダイヤちゃんもおいでよ!」
「えっ…楽しそう…でもいいのかな、職員の私がいても…」
「いいんじゃないかな?副理事長や守衛さんは必ずいるし
他の先生もしょっちゅう来てるよ。
サロンでリリエルちゃんに話を聞いてもらうと
イザム先生の回診日に保健室の中に入れるようになるんだよね」
「そうそう。でもあたしたちは常連すぎるから
保健室にはなかなか入れてもらえないけどね(笑)
そんな事関係なしに、ただリリエルちゃんと
話するだけでも楽しいから♪」
「!!!マジか……」
この学園の底知れぬシステムに、相変わらず驚かされるダイヤだった
同じ時刻
プルーニャはシルバから受け取ったパンを手に、
校舎の屋上に向かっていた
ここ最近、梅雨でジトジトした雨が続いていたが
今日は久しぶりによく晴れていた
恵の雨に新緑が輝きを増し、太陽の陽射しが強く照りつける
(そろそろ、梅雨明けかな……)
そんな事を思いながら屋上の扉を開ける
いつものように、授業をサボり、居眠りしているセルダがいた
プルーニャは隣にそっと座り、パンをモソモソと食べ始める
気配に気づいたセルダが目を覚まし、鋭い目付きで睨みつける
「…もうそんな時間か。今日はゲット出来たようだな?」
見た目の風貌とは裏腹に、気さくに話しかけてくる
セルダは、プルーニャが受け持つクラスの副担任だった
同じクラスのリリアやムーランと仲良しだ。
今日のように、クラス全員が出席するような日は授業をサボり、
誰も居なくなるような時間は、必ず教室で寝てる
(普通、逆やと思うんよ……)
だが、今日のようにプルーニャが時々傍にいっても
邪険にせず、静かに寄り添ってくれる
セルダと過ごせる穏やかなこの時間が
プルーニャは大好きだった
「ひと口、くれ」
ずっと横たわっていたセルダが起き上がり
プルーニャの前に手を出す
「…///」
ドキッとして残りのパンを落としてしまう
「…あ~あ。今度から俺の分も持って来い。約束な」
真っ赤になって震えるプルーニャの髪を撫で
そっと口づけを交わした………
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