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サロンパス~保健室へご招待~


週明け最初の授業時間

体育も、イザム先生の回診もない月曜日の午前中…

どうせ今日も、ほとんどの生徒はいないだろう…ため息をつきながら

教室に向かったダイヤは驚いた。


全員とまではいかないが、かなり多くの生徒が出席していた

いつものメンバーはもちろん、どちらかというと男子生徒の出席率が高い。

不思議に思うが、特に気にせずそのまま授業を始めた


そのうち、教室の外から何とも言えない幸せな匂いが漂ってきた

「…ん?なんかすっごく美味しそうな匂いだな…今日どこかで

調理実習とかあったっけ…??」

思わず呟いたダイヤ


そこへ、授業を抜け出していたシルバが戻ってきた

「セリーヌさん。今日のパンの予約は済ませてきました!」

「やったね!ありがとう!ちゃんと人数分抑えてくれた?」

「もちろんです!結構並んでましたが、

強肩発動させてもらいました(*´艸`*)」


シルバとセリーヌ…この2魔

実は王室から極秘に派遣された専用警備隊だ

担任を務めるダイヤのクラスに溶け込み、些細な事は

すべてダンケルに報告している


そうとも知らず、生徒と信じて疑わないダイヤ

「シルバ君!授業を抜け出して何なの?」

真面目なダイヤが呆れて注意すると


「ええ?やだ~あ、ダイヤちゃん、知らないの?

今日は校長のリリエルちゃんがパンを作ってくれる日だよ

希望者は午前中までに予約を取らなきゃいけないの。

大人気だから1時間目にはすぐ締め切られちゃうんだよ!」




「え?!」


「不定期ですけどね。だいたい第一週目の月曜日。

ダイヤ先生、今日はまだ余裕があるみたいですよ。

僕が案内しましょうか?」

シルバに言われ、


「予約が取れたならもう行こうよ!いい席取りたいじゃん!」

セリーヌに連れ出されるダイヤ


連れて行かれた場所は

保健室と中庭を挟んだちょうと正面の部屋だった。


大勢が一度に座れる長テーブル、

少人数用の丸テーブルがバランスよく配置されている


奥のキッチンでリリエルが一魔、

焼きあがったばかりのパンを取り出していた


「こ…校長先生?!」


「あら?ダイヤ先生!…どうなさったの?今、授業中では……?」

リリエルはダイヤを見て、微笑みかける


「リリエル先生!ダイヤ先生の分の予約、まだ取れますか?」


「シルバ様…そうか、ダイヤ先生の事を心配してくれたんですね。

今日の予約はもう一杯になっちゃったけど、

検食用にひとつ作ってあります。

ダイヤ先生、今日は私の代わりに召しあがってくださる?」


「え!!!よろしいのですか?それなら是非!

でもすみません、それって、校長先生の分ですよね…」


あまりにも美味しそうな匂いにつられて、ダイヤは喜ぶと同時に恐縮する




「副理事長やベルデ先生には、わざわざ検食の必要なんかないって

言われてるの。でも、どうしても心配で。とくに今のような季節だと…

私の事は気になさらないでいいのよ。良かったらどうぞ♪」


リリエルはそう言って、最後のパンをダイヤに差し出した。


「良かった!ダイヤちゃん、リリエルちゃんはどうせいつも、

副理事長室で特別なランチタイムになるんだから、

遠慮しないでいいのよ!ね~?」

メーラとバナトラは揃ってニヤニヤし始める


「リリエル先生、あとは僕たちがやりますよ。後片付けも任せてください!」

今さら授業に戻りたくないシルバも、快くリリエルの手伝いを願い出る。


「クスクス。分かりました。ありがとう。

じゃあ、よろしくお願いしますね♪」

リリエルはそう言うと、部屋を出て行った


ちょうどその時、一時間目の終わりを告げるチャイムが鳴り

学園中の男子生徒や職員が押し寄せた。


「リリエル先生~~~!!!あっ、なんだよシルバ!

今日も抜け駆けかよ!」


「ああ?!うるせーよ、てめえら!口より手を動かせ!

サボるやつらは許さねーぞ!!!」


遅れをとった職員のラドルや、ミル、他の男子生徒たちに睨みを利かせ

リリエルの焼き上げたパンを受け取りに来た生徒に配り、

使い終わったテーブルを綺麗に整えていく


丸テーブルに座り、リリエルのパンを頬張るセリーヌたち

「…本当によく働くねえ、シルバ大将♪」


「なるほどね…やけに男子生徒の出席率が高かったのは

リリエル先生との少ない接触の機会だからか……

あ!でもこのパン、すっごく美味しい~~~(*´艸`*)♪」




「リリエルちゃんに頼めば、

放課後いつでもサロンを開いてくれるんだよ。

美味しいお菓子やお茶を出してくれるから。

今度はダイヤちゃんもおいでよ!」


「えっ…楽しそう…でもいいのかな、職員の私がいても…」


「いいんじゃないかな?副理事長や守衛さんは必ずいるし

他の先生もしょっちゅう来てるよ。

サロンでリリエルちゃんに話を聞いてもらうと

イザム先生の回診日に保健室の中に入れるようになるんだよね」


「そうそう。でもあたしたちは常連すぎるから

保健室にはなかなか入れてもらえないけどね(笑)

そんな事関係なしに、ただリリエルちゃんと

話するだけでも楽しいから♪」


「!!!マジか……」


この学園の底知れぬシステムに、相変わらず驚かされるダイヤだった




同じ時刻


プルーニャはシルバから受け取ったパンを手に、

校舎の屋上に向かっていた


ここ最近、梅雨でジトジトした雨が続いていたが

今日は久しぶりによく晴れていた

恵の雨に新緑が輝きを増し、太陽の陽射しが強く照りつける


(そろそろ、梅雨明けかな……)


そんな事を思いながら屋上の扉を開ける

いつものように、授業をサボり、居眠りしているセルダがいた


プルーニャは隣にそっと座り、パンをモソモソと食べ始める

気配に気づいたセルダが目を覚まし、鋭い目付きで睨みつける





「…もうそんな時間か。今日はゲット出来たようだな?」


見た目の風貌とは裏腹に、気さくに話しかけてくる


セルダは、プルーニャが受け持つクラスの副担任だった

同じクラスのリリアやムーランと仲良しだ。


今日のように、クラス全員が出席するような日は授業をサボり、

誰も居なくなるような時間は、必ず教室で寝てる


(普通、逆やと思うんよ……)


だが、今日のようにプルーニャが時々傍にいっても

邪険にせず、静かに寄り添ってくれる


セルダと過ごせる穏やかなこの時間が

プルーニャは大好きだった


「ひと口、くれ」

ずっと横たわっていたセルダが起き上がり

プルーニャの前に手を出す


「…///」


ドキッとして残りのパンを落としてしまう


「…あ~あ。今度から俺の分も持って来い。約束な」


真っ赤になって震えるプルーニャの髪を撫で

そっと口づけを交わした………










 
 
 

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