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仕掛けられた罠


数週間後、屋敷ではいつもと異なる風景が繰り広げられていた


枢密院の補助要員として抜擢されたスタッフ魔が、

時折、執務室に姿を現すようになったのだ


「リリエル様、お会いしたかったです♪

不慣れなので、分からない事ばかりですみません。

何でも申し付けてくださいね。」


見た目は穏やかで、品のある面影。

可憐に笑顔を振りまき、装いも華やかだ。


「こちらこそ、よろしくね。」

リリエルもいつものように微笑んで挨拶を交わす


「わざわざご苦労、アヤ。早速だが、この書類を頼みたい。

至急内容を把握して、情報局に伝えてくれ」


イザマーレは、数枚の契約書をまとめて、アヤに手渡した


「畏まりました。お任せくださいませ、イザマーレ様」


アヤは、イザマーレから手渡された事が嬉しいのか

可愛らしい笑顔になって書類を受け取る


「リリエル。しばらく席を空けるぞ。後はよろしくな♪」

イザマーレはリリエルの髪を撫で、執務室を後にする





ウエスターレンと寝室に向かった事を察して、微笑むリリエル


PCに向かい、仕事を続けようとしていたその時。

キーボードの上に、書類をバサッと投げつけられた。


「聞いてたでしょ?さっさと持って行った方がいいわよ。

よろしくね、事務方さん」


アヤはいきなり態度を豹変させ、

たった今イザマーレから渡された書類を

リリエルに丸投げしてきたのだ


「はい、分かりました。任せて♪…ん~書類は3種類ね。

提出先は情報局か。」


投げつけたはずの書類に、淡々と目を通し始めるリリエルに、

アヤはイラっとする


「伝えるよう指示を受けたのは、アヤだから

情報局へは、アヤが持って行きたいよね。

ん~すぐって言ってたけど…さっき、閣下が行かれたし

数時間待った方がいいかしら。アヤ、それまで待てる?」





(…バカなの?面倒なことだけ引き受けて、

手柄になる事を簡単に手放すなんて……)

呆気にとられ、ますます苛立つ。


アヤの気色ばんだ表情など何も気にせず、

リリエルはひととおり、書類に目を通した。


2枚目までは、普通の契約書。3枚目は…

「////////っ」

急に真っ赤になるリリエル


「?」

舌打ちしながらも、不思議に思うアヤ


「ご…ごめん、アヤ。情報局へは私が持って行くね。

アヤが持って行こうとしていたのを、

私が受け取ったことにしておくから

……多分、渡せるのは午後になると思うから、

今日はもう枢密院に戻っていいわよ」


「はあ?……何それ。いい加減ね。信用できないわ。

上手いこと言って、甘い汁吸おうとしてるんじゃないでしょうね?

貴女って、見かけによらず強欲なのね」


「……(汗)」

張り付いた笑顔で、返答に窮するリリエル


その時、テレパシーが聞こえた


(リリエル。構わないから、すぐ持ってこい♪

イザマーレも、部屋で待ってるから♪)


「!…え?……っ、わ、分かりました、今すぐ……」


ウエスターレンの声に驚いたリリエルは、

アヤを放置したまま執務室を飛び出して

情報局部屋へ駆けつけた


途端に、情報局から聞こえる笑い声。


「……!」




置き去りにされたアヤは、呆然と佇んでいた


「閣下…まさかこちらにいらっしゃるなんて…しかも、これ……」


「寝室へはこれから行くんだが、その前に

ウエスターレンと確認することもあったからな。」


「////でも、これ……んもう!

もし、彼女に見られてたらどうするんですか!」


真っ赤な顔でプンスカするリリエル


「別に構わないだろう。提出先は情報局を指示していたんだし♪」


「今回のヤマを越えたらな。お前へのご褒美。分かったな♪」


ウエスターレンも笑って、リリエルの髪を撫でる


「…さて、それではそろそろ、休ませてもらおうかな。

ウエスターレン、行くぞ」


「了解♪…リリエル、お前も一緒にどうだ?」


「なっ////////だ、ダメです!もう!」


イザマーレとウエスターレンの笑い声

リリエルの慌てふためいた声……


…………


情報局で繰り広げられる3魔のやり取りを

アヤは1名、睨みつけながら聞いていた



※3枚目の契約書に書かれていたこと

「人間界のとある別荘地、宿泊予約完了通知」





 
 
 

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