仕掛けられた罠
- RICOH RICOH
- 2024年10月19日
- 読了時間: 4分
数週間後、屋敷ではいつもと異なる風景が繰り広げられていた
枢密院の補助要員として抜擢されたスタッフ魔が、
時折、執務室に姿を現すようになったのだ
「リリエル様、お会いしたかったです♪
不慣れなので、分からない事ばかりですみません。
何でも申し付けてくださいね。」
見た目は穏やかで、品のある面影。
可憐に笑顔を振りまき、装いも華やかだ。
「こちらこそ、よろしくね。」
リリエルもいつものように微笑んで挨拶を交わす
「わざわざご苦労、アヤ。早速だが、この書類を頼みたい。
至急内容を把握して、情報局に伝えてくれ」
イザマーレは、数枚の契約書をまとめて、アヤに手渡した
「畏まりました。お任せくださいませ、イザマーレ様」
アヤは、イザマーレから手渡された事が嬉しいのか
可愛らしい笑顔になって書類を受け取る
「リリエル。しばらく席を空けるぞ。後はよろしくな♪」
イザマーレはリリエルの髪を撫で、執務室を後にする
ウエスターレンと寝室に向かった事を察して、微笑むリリエル
PCに向かい、仕事を続けようとしていたその時。
キーボードの上に、書類をバサッと投げつけられた。
「聞いてたでしょ?さっさと持って行った方がいいわよ。
よろしくね、事務方さん」
アヤはいきなり態度を豹変させ、
たった今イザマーレから渡された書類を
リリエルに丸投げしてきたのだ
「はい、分かりました。任せて♪…ん~書類は3種類ね。
提出先は情報局か。」
投げつけたはずの書類に、淡々と目を通し始めるリリエルに、
アヤはイラっとする
「伝えるよう指示を受けたのは、アヤだから
情報局へは、アヤが持って行きたいよね。
ん~すぐって言ってたけど…さっき、閣下が行かれたし
数時間待った方がいいかしら。アヤ、それまで待てる?」
(…バカなの?面倒なことだけ引き受けて、
手柄になる事を簡単に手放すなんて……)
呆気にとられ、ますます苛立つ。
アヤの気色ばんだ表情など何も気にせず、
リリエルはひととおり、書類に目を通した。
2枚目までは、普通の契約書。3枚目は…
「////////っ」
急に真っ赤になるリリエル
「?」
舌打ちしながらも、不思議に思うアヤ
「ご…ごめん、アヤ。情報局へは私が持って行くね。
アヤが持って行こうとしていたのを、
私が受け取ったことにしておくから
……多分、渡せるのは午後になると思うから、
今日はもう枢密院に戻っていいわよ」
「はあ?……何それ。いい加減ね。信用できないわ。
上手いこと言って、甘い汁吸おうとしてるんじゃないでしょうね?
貴女って、見かけによらず強欲なのね」
「……(汗)」
張り付いた笑顔で、返答に窮するリリエル
その時、テレパシーが聞こえた
(リリエル。構わないから、すぐ持ってこい♪
イザマーレも、部屋で待ってるから♪)
「!…え?……っ、わ、分かりました、今すぐ……」
ウエスターレンの声に驚いたリリエルは、
アヤを放置したまま執務室を飛び出して
情報局部屋へ駆けつけた
途端に、情報局から聞こえる笑い声。
「……!」
置き去りにされたアヤは、呆然と佇んでいた
「閣下…まさかこちらにいらっしゃるなんて…しかも、これ……」
「寝室へはこれから行くんだが、その前に
ウエスターレンと確認することもあったからな。」
「////でも、これ……んもう!
もし、彼女に見られてたらどうするんですか!」
真っ赤な顔でプンスカするリリエル
「別に構わないだろう。提出先は情報局を指示していたんだし♪」
「今回のヤマを越えたらな。お前へのご褒美。分かったな♪」
ウエスターレンも笑って、リリエルの髪を撫でる
「…さて、それではそろそろ、休ませてもらおうかな。
ウエスターレン、行くぞ」
「了解♪…リリエル、お前も一緒にどうだ?」
「なっ////////だ、ダメです!もう!」
イザマーレとウエスターレンの笑い声
リリエルの慌てふためいた声……
…………
情報局で繰り広げられる3魔のやり取りを
アヤは1名、睨みつけながら聞いていた
※3枚目の契約書に書かれていたこと
「人間界のとある別荘地、宿泊予約完了通知」
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