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器の生き様


人間界に戻る日が迫る中、楓は里好のいる丸太小屋に訪ねに行く


ニコニコ話をしているが…


「楓ちゃん…何かあったの?何か様子が違うような気がする…」


楓にお茶を差し出しながら、様子を窺っている里好


…勘付かれた…とバツの悪い顔になりそうな所を隠し

今後の話を正直に話をした。


「本気で言ってるの?」


「うん。本気で言っている。

だって、こんなことを閣下に話しても興味無いだろうし

私はリリエル様と里好さんとは違って、

上手くやっていけないのは明らかだから。

だから陛下に頼んだ。今日、陛下からあいつに言ってもらうけど…

今後の為に、脅してもらうわ」


イシシと笑いながら話すのを寂しそうに見つめている里好…


「大丈夫よ〜ダイヤと一体化になるだけで変わらないから…」





楓がダンケルに頼んだこと…

ダイヤと一体化してほしいと言った。


いずれはこの魔界に来ることになる。

しかし、器が居ても、魔力もなければ何も役には立たない。

そのことを悶々と指を咥えて見ていることが出来ないのは分かっていた。


早かれ遅かれ一体化しようと行動を起こす。分かりきった答えだからだ。


やがて ダイヤがダンケルから話を聞く…しかし、内容は甘い言葉ではなかった


「お前の器が一体化したいと言っている。一体化したとき記憶を消すのが

本体になるのか、器になるのかは私が判断する。 覚悟しておくんだな。

今の所はお前が消えるかもな。話は以上だ。

その日まで、せいぜい努力するんだな」


冷徹な言い方にダイヤは唖然とする…。



「楓ちゃん💢💢あんたァ💢何のつもり?💢」

クレームをつけに楓がいる部屋を蹴り飛ばして入って来るダイヤ


「…そういう所だよ。直ぐに冷静さを失う、あんたが気を付ける所は」

楓は冷静に目を合わさずに答える。




何も言えないダイヤに更に追い討ちをかける


「…何を怖がってるの?どんと構えてなさいよ。

苛ついてると仕事も捗らないよ。仕事行って来いや。

それにどっちの記憶が残るかは陛下次第よ?

あんたは文句言えないんだからね♪

それとも…陛下に泣きつくのかしら?まさかそこまで馬鹿じゃないよねぇ」


「何だよ💢もう💢💢そこまで馬鹿じゃないわ💢」


「はいはい。もう仕事いってらっしゃ~い てか早く行け💢」


追い出して楓はため息を付いた。


魔界でやっていけるのはダイヤだ。

自分ではない。


天寿を全うし魔界に来た所で足手まといになることは避けたい。


里好の様に何処かで住めば良いとも思った。だが陛下とも一緒に居たい、

構成員様方とも共に過ごしたいと思うのは我儘だ。


決まりをつけるのも良いとも思ったのだ。


ダイヤの事だ。器が居れば気になって、仕事にも影響及ぼすに違いない。

そのせいで長官や閣下に本体が怒られている姿など見たくもない。

叱られてるにも関わらず、平気な顔して

ヘラヘラ笑ってるダイヤを見たらぶっ飛ばすと思うから…。


陛下に頼んで一体化してもらうことが

ダイヤにとっても自分にとっても良い判断だと今では思っている。

あいつにはこの世界で生きていてもらいたい。


器など忘れて、自由に伸び伸びと、

陛下と共に過ごしてもらいたい気持ちだった。




いよいよ…一体化する日がやってきた。

どこか不安げな顔を見せるダイヤに対して

楓はにこやかに陛下の前に立っている


もう、この世界を見ることがないと思い、色んな所を見回していた。

居なくなるのに何故か穏やかな気持ちだった。


(楓…もう、後悔はないのだな?)


ダンケルからテレパシーが送られてくる。にこやかに頷いてダイヤを見ていた。

儀式が始まり本体と器の眼の前が真っ暗になる…

器の楓は記憶を無くされ、身体も無くなり、本体と一体化した。


目を覚ましダイヤ自身が残った事が分かり、安堵するが

ダンケルから楓からの伝言を伝えられ

泣きながら話を聞いていた。


楓が思っていた事…

ダイヤに願いを込めたメッセージでもあった。


今日も器の思いを胸に仕事や公務に付き、

イザマーレ達に鍛えられながら魔力も高めていく


そして器の楓の分までこの世界で過ごそうと決意を新たに新しい朝を迎える…




🍁器の思惑 Fin.🍁



 
 
 

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