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呪縛シリーズ 第二章


永らく続けてきた「花と光」シリーズの完結編。

そして、光、紅蓮、花…この壮大なテーマの最終章(前半)となります。




ミルたちに抱えられ、ホテルまでたどり着いた一行


魔力でリリエルのいる部屋を割り出し、えんやこらと

イザマーレを引きずって行く


ようやく部屋の目の前までたどり着き、インターホンを押そうとした瞬間

ここまで酔い潰れていたイザマーレが、なぜかハッと気がつき、目を覚ます


その瞬間、自分の居場所を把握したイザマーレ

慌てて自分の出で立ちを見返す


「なっ……ここは、リリエルのいるホテルじゃないか…ちょっと待て!

お前ら、吾輩をどこに連れて行こうとしている??💦」


「気がつかれましたか…良かった 仰る通り、

リリエル様のお部屋に到着しましたよ

すぐに呼び出しますから、お待ちくださいね」


ホッとため息をつくミルの言葉に、さらに慌てふためくイザマーレ


「ばっ馬鹿…っ 禁欲中だぞ!! …っていうか、それは良くても

こんな有様でリリエルの前に姿を晒せるかっ ダメだ、今すぐ引き返せ!!」


往生際悪く喚き散らすイザマーレに、疲労度DXになった侍従たち

今さら別のホテルまで移動させるなど、面倒極まりない

仕方なく、正面の部屋を抑え、どうにかイザマーレを押し込んだ。


「…で、では…本日はお疲れ様でございました。

明日は時間になりましたら、お迎えに上がります。

おやすみなさいませ」


侍従として、最後まで責任のある行動を貫き、お互いに肩を叩きながら

やれやれと立ち去って行く




……


どれほどの時間が過ぎたのか、まるで分らない

イザマーレが目を覚ました時、片足の靴を脱ぎ、

脱ぎかけで逆半ズボン状態のまま、床に横たわっていた



さすがに冷えて、むき出しの腕を摩りながら

ムクりと起き上がる


「……」


無言のまま立ち上がり、ベッドにダイビングしようとした時

すぐ目の前の部屋からリリエルのオーラを感じ取ったイザマーレ


その部屋には、リリエルだけでなく、ダイヤも居たのだが……


これまでの禁欲のツケが一気に出たのか、我慢の我の字も忘れ

瞬間移動していた


それぞれのベッドで、布団に包まるリリエルとダイヤ


リリエルは相変わらず、イザマーレの抱き魔クラを抱きかかえ

スヤスヤと寝息を立てていた


(ほお…?随分と寝心地が良さそうだな…たまにはお前を

吾輩の枕にしても良いはずだな…?)


躊躇いもなく、ベッドにのし上がり

寝ているリリエルに冷えた身体を押しつけて抱きかかえ、

ダイヤのベッドとの間に紋章入りの壁を作り出す




軋むベッドの振動と、押し当てられた冷たい肌の感覚に

ふっと目を覚ましたリリエル


…??


ハッと気が付き、振り向こうとした時

抱きついているイザマーレの腕に気がついて

思考停止に陥る


何とか気を持ち直し、そっと見返すと

自分を抱き抱えて気持ち良さそうに寝ている

イザマーレの寝顔


長い睫毛に見とれる

イザマーレの寝息からかなり濃いアルコールの香りが

鼻につく


そのうち、ある事に思いを馳せ

愛しい思いが込み上げてきた


普段、抱きしめてくれるイザマーレのぬくもりは

いつもとても優しくて温かい

でも、今夜のように冷えた身体で酔いつぶれた悪魔を

リリエルはよく覚えていた


自分を包み込む手をそっと握り、キスをした


……困った悪魔ね💕 二日酔いになりませんように……





……

リリエルを抱き抱えた瞬間、寝心地の良さに

寝落ちしていたイザマーレ


浅い眠りから目覚める寸前、夢を見ていた


遠い昔のあの日……


今日のように泥酔し、酔いつぶれたイザマーレを

抱きしめる女のぬくもり


目を覚ましたイザマーレは驚いた


「…お前、まさか……」


戸惑うイザマーレを化身した裸体のまま

抱きしめる女


「こんな…こんな冷えた身体で……」


どれだけの孤独を抱えたまま、過ごしてきたのだろう


「心配なさらないで。私はいつも

お傍におります。イザマーレ様……」


………

浅い眠りから目を覚まし

隣で抱き抱えているリリエルを見つめながら

状況を確認する


泥酔し酔いつぶれて寝落ちした割に

すっかり酔いも冷めて魔力も回復していた


…あの時のように、花の魔法でヒーリングされたのか…




改めてリリエルを抱き寄せ、髪を撫でる

寝落ちする前は気がつかなかったが

リリエルはイザマーレのソロTシャツを着込んでいる


リリエルの肌を自分の顔に犯されているような錯覚に陥り、

それすらも許せず、躊躇なくTシャツの中に手を差し入れた


胸をまさぐり、突起をつまみ上げ、耳朶を甘噛みする


敏感に反応を示しながら、顔を真っ赤に染めて

目をギュッと瞑ったままのリリエル


「……リリエル…」


小さく囁き、振り向かせ、ゆっくりと口唇を重ねる


「////閣下……////」

恥ずかしそうにしながらも、

嬉しそうに抱きついてくるリリエル


「…体調は如何ですか?」

「大丈夫だ。枕の寝心地が良かったからか。それとも…」


真っ赤な顔で俯いたままのリリエル


「…お前のお陰か?リリエル……」


「…良かった💕でもまだ、冷えてらっしゃいます…///」

そう言って、女の顔で見つめてくる


「…お前が温めてくれるのか……?」


イザマーレはリリエルの上になり、深く口付けを交わす




「…っ…ん…で、でも、ここでは…////」

「ん?」

問い掛けながら愛撫を続けるイザマーレに、とろけそうになる


「///すぐお隣にダイヤ様もいらっしゃいますし…んっ…///」


困ったように、必死に声を抑えながら

見つめ返すリリエル


「閣下と…2魔になりたいです…////」


可愛らしいおねだりに、イザマーレは微笑み

優しく口唇を合わせる

その途端、ふっと空気の揺れを感じ、瞬間移動していた


イザマーレが最初に居た、向かいの部屋のベッドの上に……


「リリエル……」

頬を手のひらで包み、髪を撫でて整える

その手に、愛おしそうに自分の両手を重ねるリリエル


「…懐かしいな。吾輩、久しぶりにあの日の夢を見ていた」


「!////」

イザマーレの言葉に、驚いて更に真っ赤になるリリエル


「リリエル?」


「…わ、私もです……それで、つい……///」


恥ずかしそうに顔を隠す手を、糊のきいたシーツに縫い付け

深く口付けを交わし、舌を絡め合う


「……あの日のように、抱いてやろうな💕」





首筋に舌を這わせ、Tシャツを捲りあげる

露出した肌に赤い刻印を施し、胸の蕾を舌で甘く転がす

口づけを交わしながら抱き起こし、

Tシャツを脱がせ、ゆっくりと寝かせる


恥ずかしそうに隠そうとする腕をイザマーレの首に巻きつかせ

柔らかい肌に舌を這わせる。堪らず漏らすリリエルの吐息に酔いしれる

喉の乾きを覚え、甘い蜜の迸る中心に顔を埋め、舐め上げていく

身体を震わし嬌声を上げながら

大洪水に溢れかえるリリエルの全てを味わい尽くす


「……っ はあっ……閣下………っ」


何度も果てながら、自分を呼ぶリリエル

その都度、口唇を重ね、舌を絡ませる


「ほら、お前の味だ……」


「閣下……っ」


懇願してくるリリエルの口を塞ぐ


「せっかく、記憶が飛ばない前程度に加減してやってるんだ

きちんと言ってみろ…」


「///イザマーレ様……💕」


ふっと笑うイザマーレ


「…よく出来ました💕」



そのまま深く愛し合い、夜が明ける頃には

気力も体力も復活したイザマーレ




全ての事を終え、改めて真っ赤になり

恥ずかしがるリリエル


夜が明ければ、侍従が迎えに来る

その前に、自分の部屋に戻らねばならないが

ダイヤに何も気づかれてない訳がなく

隠し通せる自信もなく、ウダウダと悩む


「…仕方ないな。ミサで顔を合わすこともあるし

今回だけは、特別な」


そう言って、リリエルの額に手を添え、光に包み込む


その途端、記憶を一旦奪われ

元のベッドに横たわっていたリリエル




光のエナジーがいつも以上に漲り、

艶やかさを増した黒ミサステージは華々しく終演となった


人間界の屋敷までは、ウエスターレンに護衛されながら移動をする

その待ち時間に、Lily‘sと打ち上げを行うリリエル


前乗りした昨夜は居なかったスプネリアと、数名の信者も一緒に

釜揚げしらすの残虐な宴が繰り広げられる


「はあ~ 今日の閣下のカッコよさ、半端なかった~(≧∇≦)」

感動に打ち震え、ときめく心を抑えきれないリリエル


「ホントだね。でも、あの閣下がそこまで酔い潰れるなんてね(笑)」

バナトラも昨夜のイザマーレの様子を思い返しながら含み笑いをしている





「もう~閣下、可愛すぎ(*´艸`*) 

それでもあんなに素敵なんだもん……ずるいなあ……」

リリエルはハイボールを片手に

すでに顔を真っ赤に染めながら、ご満悦の様子だ


「それでも、あんなに艶々なんてさ……怪しいなあ。」

「ね♪ なんか、良い事あったんじゃないかなあ~??」


バナトラはニヤニヤしながらリリエルを見ているが

リリエル自身はまったく覚えておらず、キョトンとしている


「そういや、リリエル様…思い出したんですけど

夜中にホテルの部屋の廊下で、何やら騒ぐ声が

聞こえたんですよ。ご存知でしたか?」


梅割り焼酎を浴びるように飲みながら

ダイヤが聞いてくる


「……ええ~、(;´・ω・)ウーン・・・全然覚えてない…」


不思議そうに首を傾げるだけのリリエル


「……もう、まったく💢💢ミサ中も前の方に座るなっちゃんよりも

後ろのセンターに座るリリエル様💢夜の部では真正面に座る

なっちゃんより、上手側にいらっしゃるリリエル様にばっかり💢💢

何度もアイコンタクトなさってましたよね~( -`ω-)✧」


「…そっ、そんなの気のせいよ…💦 でも、今日で

生のステージを見れる最後だったから

私もつい、目を逸らせなくて…(*´艸`*)💕」


ダイヤが何にそんなにプンスカしてるのかも分からず

ご機嫌にハイボールを飲み続けるリリエル




「よお!リリエル、待たせたな……大丈夫か?

随分とまあ、お楽しみだったようだな♪ 色々と(笑)」


そこへ颯爽と登場し、含みを持たせ、ニヤつくウエスターレン


「あ、長官~。はーい。…それじゃ、皆はこの先も

存分に楽しんでね💕一足先に魔界に戻りますね」


その場に居た全員に声をかけ、立ち去るリリエル



「……長官…?何か、私の顔についてます?

飲みすぎちゃったかな💦 顔、赤いですよね(^_^;)」


そんなリリエルに、笑みを浮かべ

一言だけ告げるウエスターレン


「……何でだろうな♪♪」





そんなやり取りを眺めながら、見送るLily‘s


「ねね、ダイヤちゃん!!本当のところはどうなの?!」


「それが…私にもよく分からないんですよ(^-^;

ただ、夜中に一瞬、目が覚めた時、目の前に

紋章付きの壁があったような…

寝ぼけてたし、自信はないんですけどね💦」


「な~んだ。それじゃ、ダイヤちゃんの夢かもしれないよね(笑)」


「どうかな~(・∀・)ニヤニヤ ってか、私何やってんだろ💦

ちょっと!!長官~、私を置いてかないでくださいよ~~(´;ω;`)ウゥゥ」




慌てて2魔の後を追うダイヤ

店の扉を開けた瞬間、腕を捕まえられ、抱き寄せられる


「!? あ…陛下(≧∇≦)」

「ダイヤ。迎えに来てやったぞ。楽しかったか?さあ、戻ろう♪」

ダンケルの闇のオーラに包まれた瞬間、立ち去っていた…




………

ウエスターレンに連れられて、一瞬で屋敷まで到着したリリエル


「ありがとうございました、長官。この後、閣下のお迎えですよね

行ってらっしゃいませ」


「ああ、あいつの事は任せろ。明日の夜は、オフになるから

それまでこっちに居たらどうだ?」


「そうですね…でも、まだ黒ミサは続きますし…」


やや躊躇うリリエルに、ウエスターレンはニヤッと笑う


「禁欲のことなら、そこまで厳密じゃなくて良いだろ?

むしろ、お前との時間は、あいつにとって欠かせないものだと

証明したようなもんだけどな(笑)」


「???…えっ?」


何のことか分からず、戸惑うリリエルの髪を撫でるウエスターレン


「…俺も知らなかった。お前とイザマーレの、始まりのきっかけが

そんな事だったとはな(笑)これからも、イザマーレを守り抜く同志として

よろしく頼むな。お姫様♪」


そう言い残して、ウエスターレンはイザマーレの元へ向かう


「……///////あ…あれ…?///////」


ウエスターレンの言葉がきっかけとなり、ぼんやりと記憶が戻り

途端に真っ赤になるリリエル


なんとか気を持ち直し、屋敷の扉を開けるまで、照れまくっていた




「リリエル様、お帰りなさいませ。」


「ただいま戻りました。ランソフ、いつもありがとう💕」


にこやかに出迎えるランソフの手を取り、微笑むリリエル


「地上で行われる『黒ミサ』とやらは如何でしたか。

イザマーレ様も皆様も、ご活躍なさった事でしょう……」


奥のリビングまでリリエルを誘導しながら、穏やかに話すランソフ


「リリエル様、お帰りなさい。とりあえず、今夜は

こちらで過ごされますか?」


「ありがとう、ラドル。うん…

明日の夜まで、こちらで待たせてもらいます。

後は、自分でやるから大丈夫よ。」


部屋の設えを整えていたラドルに声をかけつつ

着込んでいたグッズのMA1を脱ぎ、身支度を整えるリリエル


「…リリエル様……」


「あら。エマじゃない。お久しぶりね。」


呼びかけられた声に振り向き、さらに笑顔になるリリエル


「今回は、たくさんツアーで各地に回ったし

クリーニングも大量になっちゃうかしら💦ごめんなさいね、

よろしくお願いね」


「勿論ですよ(*^^*) それが私の任務ですから。

お任せくださいませ。それで、あの…」




「ん?どうしたの?エマ……何か、心配事?」

エマの様子が気になり、見つめ返すリリエル


「申し訳ないのですが…魔界に戻られる前に

お時間をいただけますでしょうか。ご相談したいことがあります…」


「? 勿論よ。こちらに座って♪」


………


「そんな事が……」


エマから話を聞いたリリエルは、

自分の知らない間に起きていた様々な事に戸惑いつつ

口元に手を当てて、思案し始めていた


「噂は本当だったんでしょうか…もしそうなら…」


青ざめて震え、俯くエマ


「因果でしょうか。ここ最近、確かに、人間界に居ながら

忌まわしい記憶を思い出すように……」


エマの手を優しく握りしめるリリエル


「…リリエル様。もし、それが本当なら…

そして、対処しなければならないとなったとしても…

リリエル様は決して動かず、イザマーレ様に守ってもらってください。

あの方は……危険です。リリエル様とは、絶対に関わらせたくありません!!」


「!!……エマ……」


エマの強い言葉に驚きながら、そんなエマの気遣いを嬉しく思うリリエル


「ありがとう。エマ…私は大丈夫よ。心配しないで」




「リリエル様…!ダメです、今回だけはどうか…お願いしますっ…」

穏やかに微笑むリリエルにしがみつくように懇願するエマ


「…エマ。貴女の気持ちはよく分かったわ。

それほどまでに危険な相手に、裕子さんをはじめ

多くの方が傷つけられているの。何とか…して差し上げないとね…」


エマを諭すように穏やかに話しながら

途切れがちになったリリエル


「? リリエル様…?」


「…あっ…(( ̄▽ ̄;;)ア、ハハハハ…な、何でもないの。

ち、ちょっとごめんなさいね」


挙動不審に立ち上がり、洗面室へ駆け込むリリエル


(…///////……)


口元に手をやり、吐き出したものを見て立ちすくむ


手の平に収まる大きさの、ひと房の朔

広げてみると、百合の種がぎっしりと詰まっていた


(…ま、まさか…女の姿の時に、種が生まれるなんて…///////)


あまりの事に、へたりと座り込む


(しかも…///////き、昨日の今日って…///////💦💦💦)


忘れようと心がけていたのに、赤裸々に思い浮かぶ光景に

さらに顔を真っ赤にさせ、蹲る


(……あ、そうか……)


暫くの間、動けなくなっていたが、ある事を思い付き

産み落としたばかりの種をそっと握りしめ、ハンカチの中に忍ばせる




翌日


ミサ本番の翌日にTVの生出演というハードスケジュールを終え

ウエスターレンと共に屋敷に戻ったイザマーレ


いつもであれば、扉を開けた途端、抱きついて来るリリエル

だが今日は、し~んと静まり返っていた


「…?リリエル…?…」


駆け寄ってこないが、間違いなく感じる彼女のオーラに

居眠りでもしているのかと探し始める


部屋の前までたどり着いた時、扉をそ~っと開けて

チラッと顔を覗かせるリリエル


「お…おかえりなさいませ…///////」


「ただいま。…どうした?」

いつもと様子の違うリリエルに、抱き寄せて髪を撫でる


…!!…


その途端、リリエルの身の上に起きた事を全て察知し

驚いて見つめ返す


「……マジ?」


「///////」

言葉には出来ず、ただひたすら、頷くリリエル

愛しさがこみ上げ、抱きしめて口唇を重ねるイザマーレ


「……見せてもらえるか?」

「////はい…////」

真っ赤になりながら、ドレッサーに置いたハンカチを差し出すリリエル




「…間違いないな」

「えっ?」


見た途端、確信したイザマーレの言葉に

不思議そうに見上げるリリエル


「吾輩が蒔いた種と同じだ。…裕子の時と」


「!! …え、じ、じゃあ…その時も…同じように…///////」

言いながら、照れて真っ赤になるリリエル


「…お前、あの時は初めてで、それどころじゃなかっただろ?

眠っている間に…その…な…///////」


さすがにイザマーレも、照れて目を泳がせる


「…そ、そうだったんですね…(^-^;」

衝撃の事実に、恥ずかしくて抱きついたまま、顔を埋めるリリエル


「どうする?蒔くか?」


「!!…///////」

当然、言われるだろうと予想していた言葉に、ますます照れてしまう…


「閣下…嬉しいです…こんな事が起きるなんて…

で、ですけど、あの…」


「…お前が嫌なら、無理にとは言わない」

戸惑う素振りを見せるリリエルの心情を察して

髪を撫でて微笑むイザマーレ


「いえ…そうではなくて、もし…お許しいただけるなら

お願いがあるのですが…」




「…なるほどな。お前がそうしたいなら、構わないよ。」

久しぶりのおねだりに、鷹揚に応えるイザマーレ


「…ただし。それなら勿論、報酬は貰わないとな♪」


嬉しそうに微笑むリリエルを抱き上げ、そのまま扉を消す



一方、リビングで紫煙を燻らせ

のんびりと構えていたウエスターレンの元に

エマがそっと近寄る


「お…? どうした。今はもう時間外だろ?ゆっくり休んで構わないぞ」


気さくに話しかけるウエスターレン


「…こんな事、ウエスターレン様にお願いして良いものか

申し訳ないのですが…昨夜、文化局長殿と諍いを起こした

悪魔の事を…見せていただく事はできますか」


「…昨晩は俺も別件でライブだったしな。ベルデの件に関しては

本来であれば管轄外だ。だがまあ、記録には残してある。

どうした。何か、気になる事でもあるのか?」


「もしや…その悪魔に憑りついて操る者の存在が居たとしたら…

それが…あの方だとしたら…不安なのです。

万が一にも、リリエル様を傷つけるような事は、あってはなりません」


真剣な表情で真っ直ぐ見つめるエマに、ウエスターレンは目を細める


「お前にそこまで言わせるとは…さすがはリリエルだな。

心配するな。お前が怯える存在は、イザマーレが確実に処刑した。

俺の目の前でな。そして、その跡地も俺の邪眼で焼き尽くした。

生き返りなど不可能。わずかに妄念が残る程度だろう。」





「……」


「魑魅魍魎が群雄跋扈する世界だからな。失脚した爵位の後釜を狙い

下級の悪魔たちが謀略を繰り返すのは当然の事。

だが、王家に刃が届かず、その手前で葬り去られる有様だ。

どう思う?」


「…それが分からないのです。生前のあの方なら、

絶好の機会と狙いを定め、動き始めても可笑しくないのに…」


考えあぐねて俯くエマに、ウエスターレンはニヤッと笑う


「それこそが、ヴィオラの陥った“無償の愛の呪縛”だからだ」


「!!」


「そして…イザマーレの言霊。これが決め手かな。

ヴィオラは今も黄泉の果てで、魅惑の夢を見続けている事だろう

少しでも反逆の気運を感じ取ると、いつの間にか

その主を操り、芽が出る前に摘み取る役割を買って出てくれるのさ

我々の手間も減り、有難い事だな(笑)」


「……」


「それは何も、ヴィオラに限った事ではない。お前もそうじゃないのか?

エマ。お前は今、俺にその事を直談判する気でいた。違うか?」


「///////はい……」

図星を刺され、恥ずかしそうに俯くエマ


「だが、ありがとな。お前がそんな風に言ってくるとは、思わなかったぞ。」


「そ、そんな…今の私があるのは、リリエル様のお陰です。当然の事です…💦」


情報局長官…下級魔にとっては、その肩書だけで身悶えする存在の

ウエスターレンに、まさか礼を言われるとは思わず、恐縮して俯くエマ


「後は…姫君の懸念事項をどうにかしてやれば、万事解決だな♪」




🌷種 Fin.🌷




 
 
 

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