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始動


夜になり、リリエルのいる部屋に

男悪魔が粗末な食事を持って現れた。


「あっ、あの……」


困ったように口元を手で隠し、

オドオドした目で見つめるリリエル


「ここはどこですか?お買い物に来たはずなのに、

気がついたらここに居て……」


泣き出しそうな表情を見せるリリエルに、ドキッとする悪魔


(日頃、どんだけ大事にされてるんだか知らないが……)


明らかに優位に思える状況に、心を許してしまう


「取って食うわけじゃねーよ。食事もきちんと与えろって

言われてるからな。」


「!わざわざ、作ってくださったんですか?

もしかして……お兄様が?」


「おっ////おにいさま、だと?」


「す、すみません…お名前知らないですし、

そう呼んではダメですか?」


「べっ……別にいいけどよ!」

何となく、鼻の下がのびてくる悪魔。


「ありがとうございます。

誰かに作ってもらったお食事をいただけるなんて

とっても久しぶり♪……あれ、でもお兄様の分は?」


「はあ?」





「あの…いつもは必ず一緒にお食事しているので、

一魔では寂しくて……良かったらお兄様も一緒に…ダメですか?」


「ばっ、ばかやろう!お前の分しか作ってねーし!

とっとと食え!終わった頃にまた来る!」


照れまくって真っ赤になりながら、そそくさと逃げだす悪魔





しばらくして、悪魔が現れる


にっこり微笑むリリエル。

「お兄様♪お約束を守ってくださったんですね。素敵…」


「はあ?何言ってんの?お前…まあいいや、もう寝ろ」


笑顔で褒めちぎられ、心が躍り出しそうなのを誤魔化し

わざと冷たくあしらう悪魔


「……」


「?……どうした?」


急に俯き、困ったような表情を見せるリリエルに、

思わず問いかける


「一魔じゃ…眠れないんです

いつも毎日、必ず寄り添ってくださっているので……」


リリエルの思わぬ告白に、唖然とする悪魔


(箱入り娘か!それとも深窓の令嬢か!

毎日って……ま、まあな、そうだろうよ。

俺だってお前が相手なら、そりゃ、そうするだろう……)





悪魔の服の裾を、つんつんと引っ張るリリエル

「お兄様……一緒に居てくれませんか?お願い♪」


上目遣いで首をかしげ、懇願するリリエルに

悪魔の煩悩がはじけた……


悪魔に寄り添われ、ベッドに横になるリリエル


「お兄様、お食事ありがとう。

明日から、私が作ってもよろしいですか?」


「お前って……変な奴だな!分かったからもう寝ろ!」

「はい♪お兄様、おやすみなさい」


リリエルがその言葉を発した途端、悪魔は眠りについた


「ふふっ♪ちょろいわ♪♪」



 
 
 

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