始動
- RICOH RICOH
- 2024年10月30日
- 読了時間: 19分
時は少し前に遡り、黒ミサ初日公演を終えて、
構成員同士の屈託のない宴会会場
ダンケルが席を外し、すぐにイザマーレが退席していた
(…長官…あの…)
(…ん?どうした、リリエル)
突如送られてきたテレパシーにウエスターレンが応える
(お楽しみの最中に申し訳ありません…
閣下にお会いしてはいけないと思って…)
(何かあったのか?大丈夫だ。今なら、あいつも席を外している)
(分かりました…そちらに伺います。
念のため、お隣のお部屋でお待ちしていますね♪)
不思議に思いながら、ウエスターレンはすぐに
リリエルのいる部屋に向かった
「どうした?」
「お手間をおかけして申し訳ありません💦実は、先程の黒ミサ会場で
ミカエル様にお会いしたんです」
「! …そうか。それで先程から、オーラが異質だったんだな。
ダンケルも居ないという事は、抜け出して魔界に戻ったか…」
そう言って邪眼を軽く開き、瞬時に様子を窺う
「間違いない。あいつら、今は魔宮殿に居る。
イザマーレもダンケルに呼ばれたようだな…ん?ダイヤもいるぞ?」
「…やはり…」
表情を曇らせるリリエル
「!リリエル…気づいてたのか?」
「Lily‘sの皆で一緒に居たお店に、陛下からの伝令が届いて
ダイヤ様が姿を消したようでしたので…」
「……」
「長官…お願いがあります。
私に、魔宮殿の様子を見せてもらえませんか?」
「…そうだな。俺も気になる。一緒に見届けてやろうぜ」
ウエスターレンは頷き、部屋中に強力な結界を張り、邪眼を開いた
……
全てを見届けたリリエルは、静かに涙を流していた
「暴走しまくり、リリエルに刃を向けている事にも気づかず
完全に自分の心を見失っているな。
禁欲状態の中、イザマーレもよく堪えたな(笑)」
「…///私が…閣下のお心が静まるよう、
梅おにぎりを送り届けていましたから!!」
リリエルを何とか慰めようと、わざと軽口をたたくウエスターレンに
ぶぅ~っと頬を膨らませ、口を尖らせながら、言い放つリリエル
「はあ?…それじゃ何か?イザマーレはお前が送り付ける
おにぎりの画像に笑いを堪えていたってのか…?」
「私のダイヤ様に意地悪をした罰です♪(* ̄▽ ̄)フフフッ♪」
無理にカラ元気で笑おうとするリリエルの本音に気づきながら
表面上は呆れた素振りでため息をつくウエスターレン
「やれやれ…イザマーレだけじゃなく、
お前も相当、禁欲生活で荒れてるな?(笑)」
そんなウエスターレンに、リリエルもようやく
いつもの微笑みに戻る
「…ふふっ そりゃ、ずっと寝不足ですからね☆彡」
その後、ダンケルが怒り任せに罵倒する姿も
しっかりと見届けていたリリエル
「おいおいおい💦…ったく。一番分かってない奴が
何を喚いてやがるんだか…」
「大魔王ともあろう方が、いとも容易く心を見失いましたね…」
ダイヤの可愛い暴走までは、涙を浮かべるほどだったリリエルも
さすがに怒り心頭になっていた
「…禁欲生活で捨て身になってらっしゃる閣下に対してあのような…」
怒りで髪が揺れ出すが、今の自分は駆けつける事も
お慰めする事も出来ない…
その時、扉の開く音がした
「!…和尚…」
振り返り、驚くリリエル
「まったくもう…水臭いじゃない。」
部屋に入り、真の姿になったベルデは
魔水晶を片手に角を全開にしている
「ベルデ!…お前、まさか…💦」
まさかのベルデの登場に、ウエスターレンも焦る
「ん…?いやだなあ、僕だけじゃないよ。ほら…」
そこに居たのはラァードル、セルダ、バサラ…
そして、悪魔軍のスタッフたち
「僕たちは皆、イザマーレの事が大好きなんだ。
これまでイザマーレが、どれだけの孤独を抱えて来たのか
知ってるから。もう、知らないふりなんか、出来ないくらいにね。」
「確かに、ウエスターレンやリリエルちゃんには敵わないと思う。
だけど、俺らにも、やれる事はある。
もう決して、光を失いたくないもの…」
「…皆さ魔…///////」
まっすぐな表情で語りかけるベルデとバサラに
言葉を詰まらせるリリエル
「おっと♪ ダメダメ💦リリエルちゃん。
今、君が泣いたら暴走が止められなくなるでしょ💦
ここは吾輩たちに任せてよ。それまで、
ほんの少し、堪えてくれるかな…💦」
焦りつつ、飄々と笑いかけるラァードル
「そうそう…それにね…陛下は本当に何も分かっとらんね。
リリエルちゃん…君の事を心配して…ほら♪」
ニヤッと笑いながら、セルダが引き連れてきたのは…
「!!! み、みんな……///////」
こっそり店を抜け出したリリエルの後を
追いかけて来たLily‘sだった
「い、いやあ…💦てっきり、リリエルちゃんが『禁欲中』の閣下と
こっそり逢引きされるんじゃないかな~なんて(^-^;」
スケッチブックを隠しながら照れ笑いをするメーラ
「そ…そ…そうそう!こっそり来たつもりが、
代官に見つかってしもた…
ご…ごめんな。ほんまに、ごめんなさい!
でも!ちょうど良かった。ハッキリ言わせて貰います!
私らLily‘sのこと、舐めすぎやっちゅうねん。アホなん!?
リリエル様と閣下の為やったら、なんでもやるわ!
売られた喧嘩は喜んで買うで!!!」
リリエルに手を合わせて謝りながら、
鼻息荒く宣言するプルーニャ
「…酷い…これでも泣いちゃダメなんですね…///
ありがとうございます。皆さん、よろしくお願いします」
涙を必死に堪えながら、深々とお辞儀をするリリエル
数刻前の事
Lily‘sは今宵のミサの余韻に浸りながら、
各々感想を述べては黄色い悲鳴をあげていた。
そこに現れた陛下からの伝令。それによって、店から出ていくダイヤ
そのダイヤの様子をじっと眺めるリリエル
しばらくすると、リリエルも店から姿を消した
ちょうどその様子を見ていたバナトラが呟く
「何かあったわね…」
その言葉に全員頷き、そして店を出る
運よくリリエルの姿を捉えた彼女たちは
リリエルにバレぬよう、追跡を始めた
彼女を見失わないよう、慎重に進むLily‘s
店に到着し、どうやって入るか考えあぐねていると
ふいに声をかけられた
「みんなして、こんなとこで何やっとるん?」
「え?あれ?だ…代官?何故ここに?」
素朴な疑問を口にするリリア
「それ、こっちのセリフじゃんね。
今夜はここが夜のミサ会場だもんで」
「え!そうだったんですか?」
「じゃぁ、やっぱり何かありましたね」
セルダの言葉にコソコソと会議を始めるLily‘s
「あれ?何みんな。どうしたの?」
今度はラァードルまでやってきた
「あの…殿下。ここにリリエル様がいらっしゃいませんか?」
「え?」
スプネリアの言葉に戸惑うラァードル
「ダイヤ様がいらっしゃらなくなった後、
リリエル様がお姿を消されたんです」
「そのリリエル様を追って私達ここにきました。」
「また何か問題でも起きてるんですか?」
矢継ぎ早に質問を繰り出すLily‘sに
にんまり笑うラァードル
「そういう事ね!説明するより見た方が早いだろうし、
みんな店の中に入りなよ」
ラァードルに促され、店内に入り、個室の前で止められた
「あ~。君達も来ちゃったか」
個室から顔を出したベルデが苦笑しながら入室を促す
「ここからは静かにしてね。隣には
ウエスターレンとリリエルちゃんがいるから」
「…!!」
とっさに声が出そうになった、プルーニャの口を
スプネリアが慌てて塞いでいた……
……
必死に涙を堪えるリリエルの姿に、一気に奮起するLily‘s
「じゃあ!今から魔宮殿に乗り込みますか!!」
プルーニャが意気込んで言う。
Lily‘sや悪魔軍が声を上げて賛同するのを見て
ウエスターレンが慌てて忠告する
「おい!まてまて💦ダンケルを叩きのめす訳じゃないんだからな?
困らせるだけだ。あとは、あの甘ったれを部屋から引きずり出す。
それが目的だぞ?間違ってもダンケルに文句を言うなよ?
文句を言っていいのは俺とリリエルと構成員だけだ。いいな?」
ウエスターレンにLily‘sは頷き、魔宮殿と向かった
一方、ダイヤがフラフラと出ていった後、部屋の中では…
「…で、どうするんだ?彼女の処罰は…」
ミカエルはため息混じりに言った
ここまで暴走しまくるダイヤに辟易していた
「もう分かりきってるだろ?アイツ自身が答えを言ってくる。
吾輩はその答えによって決める。それだけだ」
ダイヤの暴走癖と甘ったれな意地っ張りなど、
とるに足らないイザマーレは、表情ひとつ変えずに即答する
「…そうか…。それにしても、さっきから
チラチラ見えたり消えたりしてたのは何なんだ?」
不思議そうなミカエルに、ニヤッと笑うイザマーレ
「知らんのか?塩加減抜群な梅おにぎりだぞ。
吾輩の大好物だ💕ハッキリと言いすぎるなと、常に誰かさんから
お仕置されてたようだな(笑)」
そこへ、ダンケルが乗り込んできて、怒りに任せて怒鳴り散らした
全てを聞き終えてから、イザマーレは黙って立ち上がる
「リリエルの事で、吾輩がいくら悪く言われようと構いません。
あいつが、吾輩に泣きついてくれるなら、喜んで抱きしめてやります。
…では、そろそろ黒ミサの準備もありますので。」
その時、イザマーレは部屋の外の様子に気がついた
ふっと静かに笑い、そのままその場を立ち去った
じっと睨み付けるミカエルに気がつき、ダンケルはハッとする
「舌の根も乾かぬうちに間違えやがって。
仕方のない奴だな。ダンケル。じゃあな。
俺もまだ、手土産がない事には天界に戻れんのでな♪」
その頃…ダイヤは部屋に閉じこもり自ら扉を消していた
誰にも会いたくなかったからだ。
部屋のベットでひたすら泣き疲れ、ウトウトし始めていた。
『…何を彷徨っている…ここはお前の居るべき場所ではない…』
『…連れて行く事は出来ない…必ず逢えるから…』
『忠誠心など解約しろ…
大魔王の妃になれ…
永遠に私が守ってやる…
導かれない光など追うな…闇に染まれ…
私と共に…もう離さん…絶対に…』
次から次へと過去にあった事が夢に出てくる…
ダンケルと出会った時の事を…
人間界にいた時…最高魔軍を知るきっかけはイザマーレだった。
『私…一生この方についていく!』
親の前で宣言したっけ…その後、リリエルと出会い
別格だけど同じ結晶だと分かり、めちゃくちゃ喜んだっけ…
その頃は…リリエルが閣下の専属ペット…
だが…実際には副大魔王の妻…
知っていながら、閣下の事が好きで堪らなかった。
時空縛りの事で散々刃向かい、
それでも耐えきれず死にそこなった自分を
悪魔化させてくれた閣下には感謝しかない…
でも…いつも側に寄り添ってくれているのは…
閣下ではなく陛下だ…。
幼き頃に彷徨っている所を助けて導いてくれたのも陛下だ…
再びダイヤは考えた…
今回、ミサ参拝で楽しんでいる時にダンケルに呼ばれ
イザマーレやミカエルに要らん結晶だなどと
なぜ言われなければならなかったのか…?
ミサのツアー中に…何で?…
それに…何故…ミカエルが魔界に居る?
ダイヤは夢から覚めて起き上がり、再び考えた
…何故…居るんだ?
「……まさか……」
ダイヤはある事に気が付いて血の気が引いた
…ミカエルの服装や体型…
何で今まで気が付かなかったんだろう…
楽しみにしていたこのミサ中に。
何故言われなきゃならなかったのか…
やっと分かった…。再び泣きながら情けなくなっていた。
もうミカエルに相手になって貰おうなんて2度と思わない
そんな事をしていたら駄目だ…絶対に…。
閣下も酷い事を言うもんだ…って、酷いのは自分じゃん…
…お前は要らん感情で作られた結晶、
リリエルの魂とは別格の者だ…と…
確かに。要らんよな…こんなんじゃ…💦
そう思いながら目を閉じた。
再びウトウトし始めると外から騒がしい声が聞こえてくる
ダイヤは目を覚まし耳を澄ませて様子を伺っていた
その頃、Lily‘sの面々はウエスターレンに連れられ
ダイヤの部屋の前に来ていた。
ウエスターレンの邪眼で壁に炎が走り、消されていた扉が現れる
「ったく…世話をかけやがって…」
ウエスターレンは煙草を取り出して吸いながら言った
「…後は任せて♪後からダンケルの所へ行くから」
ベルデは微笑みウエスターレンに言った。
「…そろそろ出来上がりの頃だな(笑)お前ら、ついて来い」
ウエスターレンはニヤッと含み笑いをしてLily‘sを率いて
ダンケルがいる部屋へ向かった
ダンケルのいる部屋の前に辿り着いた一行…
大魔王の超強力な結界すら気にせず
中へと入って行くウエスターレン
「ダンケル💢💢💢💢」
Lily‘sと一緒に中に入り、怒鳴りかけたが……
ダンケルの目の前の机はおにぎりだらけ…
それをどうしたものかと困り果てている大魔王…
「ウエスターレン💢💢💢見ろ💢
こんなに食べれると思ってるのか💢」
ダンケルは苛つきながら
次から次へと送られてくるおにぎりに辟易していた
「リリエルからだな♪ちゃんと食えよ?
リリエルがイザマーレの髪に乗ってなくて良かったな。
おにぎりだけじゃ済まされなかったぞ?」
ウエスターレンは笑いながら言った。
「…💦わ、分かっておるわ!!
だから途中までは我慢して食っていたが
次から次へと際限なく…あいつは鬼か!!悪魔か!!!」
怒鳴りながら、徐々にげんなりしていくダンケル
「…お前にだけは言われたくないだろうなあ(笑)
首根っこ掴まれて、なぎ倒されるよりかはマシだろ?」
容赦なく突っ込むウエスターレン
「…どうしてLily‘sの連中がここに居る💢
連れてきたのはウエスターレンか?💢遊び場ではないんだぞ💢」
言われたい放題で、怒りの矛先を変え、苛立つダンケル
「ダンケル…イザマーレに向って言ったよな?
ダイヤに言って聞かせた事をこいつらが聞いてどう思うかと…。
イザマーレを責めるような奴など誰もいない。よく考えてみろ。
ダイヤがミカエルの事を普通に話して素直に聞くと思うのか?」
煙草を咥え、話を続ける
「だから敢えてイザマーレがあいつに突き落とす言い方をした。
甘ったれの心に突き刺さる言い方にしなければ、
イザマーレの言葉に、何も耳を傾けない意地っ張りだからな。
にも関わらず…お前までダイヤと同じ次元で
暴走してどうする?」
ウエスターレンに言われハッっとした顔をしたダンケル
細目で睨みながら、ウエスターレンは紫煙を燻らせる
「イザマーレもミカエルも
あいつが路頭に迷うこと無いように言っただけだ。
ダイヤ自身を必要ないとは一言も言ってない」
ウエスターレンの話にLily‘sも頷く
「和尚の魔水晶で見せてもらいましたが、
陛下が怒鳴り散らしてた内容って
ほとんど、ダイヤさんが自分で捲し立てたことですよね」
理路整然と物申すリリアに、ムーランが頷いて同調する
「……」
「だいたい、最初からダンケル、お前がダイヤに
言って聞かせれば済んだ話だろ?
すべてイザマーレに丸投げして、尻拭いさせ
挙句の果てに八つ当たりか?」
冷静かつ理路整然としたウエスターレンの言葉に
言葉を失ったままのダンケル
ウエスターレンの引率のもと、魔宮殿を訪れたLily‘s
怒っていたものの、あまり入る事のない魔宮殿に興味津々である
ウエスターレンのお説教に力強く同意した後、
とうとう好奇心に耐え切れず
お説教を聞くのを一時中断し、部屋の探索を始める
「陛下のお部屋を隠し撮りせんと」
「そうよね!?なかなか入れないだろうから」
ワクワクしながら高性能レンズのカメラを用意する
プルーニャとリリア
部屋を眺めて回り、記念写真を撮影し始める
「ねえ見て、バナトラちゃん…これ何?」
「わかんないけど…すごく豪華ね」
「本当。なんか凄い」
魔宮殿内の喧騒を聞きつけて様子を窺っていた
王室警備隊のセリーヌが叫ぶ
「あの天井見て。悪魔の壁画になってるのよ~」
セリーヌの声に気づいて、近衛兵のシルバが駆けつける
「さぁ、皆さん。ここで記念写真なんて如何です?」
「良いねぇ。長官にお願い…は出来ないからタイマーにしようか」
「そうね」
早速、リリアとプルーニャがカメラの準備をする
「じゃぁ、みんな集まって。右側もっと中に寄らんと見切れてます。
左はもう少し端に。そうそう!そこで大丈夫!いくでー」
パシャッ☆
「あ、良いね。」
「じゃぁ次はあっちはどう?」
…………
「…(* ̄▽ ̄)フフフッ♪」
一魔、人間界に残り、
脳内でわさびおにぎりを作り続けていたリリエル
ダンケルの困り果てた様子に、ご満悦になっていた
(…ん~…そろそろ、陛下を困らせるのも飽きてきちゃったな…)
たまには、わさびの間に明太子でも挟んであげようか…
などと考え出した矢先だった
(…リリエル)
!
「閣下…っ」
イザマーレからのテレパシーに、
リリエルは思わず声を出して反応してしまった
(ありがとな。吾輩は大丈夫だから、心配するな。)
(…///////)
(リリエル。吾輩は今夜もこれから筋トレ始めるから
また、いつものおにぎり、よろしく頼むな♪)
(!…////…はいっ…喜んで💕💕💕)
いつもと変わらないイザマーレの声に、ようやくホッとして
嬉しそうに微笑むリリエル
抱き寄せて髪を撫でてやりたいのを堪え、
静かに笑みを浮かべながら、トレーニングを始めるイザマーレ
「クククッ 周りの喧騒など、何のその…って事か(笑)」
イザマーレと一緒に人間界に降りて来ていたミカエルが
ニヤニヤしながら揶揄する
四股を踏み、股割りをした状態で、
不敵な笑みを浮かべるイザマーレ
「姫君のご機嫌伺いは、吾輩の役目だからな♪
リリエルに笑顔が戻れば、魔宮殿の喧騒も
間もなく終結するだろ(笑)」
「…なるほどな…あんな暴走野郎のダンケルの事も
少しも見捨てないってことだな」
「当然だろう。陛下には、
いつも吾輩の上に君臨し続けて貰いたい。
それこそが、この世の安泰に繋がる。それに、
多少の齟齬があった方が世の中、面白いだろ?」
ひと通り、汗を流したイザマーレの元に
出来立ての梅おにぎりが贈り届けられる
「お♪さすがだな💕 良いタイミングだ。」
早速手に取り、モグモグしながら
その場に佇んだままのミカエルを見返す
「…ほれ」
「…え…!」
イザマーレの言葉に、想いを巡らせていたミカエルは
突然目の前に差し出されたイザマーレの手に驚く
「お前…あいつのおにぎりは食った事なかっただろ?
特別大サービスに食わせてやる。ただし、一つだけだぞ♪」
「イザマーレ…いいのか?」
「お前にも食わせてやれってさ。
姫君の命令には逆らえないからな(笑)
天界への手土産が要るんだろ?」
「!!」
「ただし!!ゼウスには絶対に食わせるな!!
お前だけは許す♪分かったな♪♪」
「……ケチ」
「あ"?💢なんか言ったか?」
「お前、そんだけあって、俺には一つだけかよ!!
普段、小食のくせに!!」
そう言って、無理やり二つのおにぎりを奪い取るミカエル
「あ"!何しやがる!!ったく…」
奪われたイザマーレは悪態をつきながら、
やれやれとため息をつく
そんな様子を遠巻きに眺めながら
ニコニコとおにぎりを作り続けるリリエル
魔宮殿―
市場で大量の苺を仕入れて、裕子が颯爽と登場
「皆さん、一緒に苺のケーキ作りましょ」
「あれー?今日は青汁混ぜないであげるのに、いいのかな~」
わざと大きい声で呼びかける裕子に
含み笑いをしながらケーキ作りに加わるバナトラとセリーヌ
その場に居た残りのLily‘sも手伝い始める
「わぁ、美味しそうな苺」
「私下手くそだから、教えてくださいね」
「あ!レシピを描いて欲しいです。シルバさんお願い出来ますか」
「もちろん。喜んで描かせて頂きます」
「あぁ!」突然絶叫するプルーニャ
「プルーニャ様。どうなさったの?」
驚いて器具を落としそうになりながら、
なんとか耐えたLily‘sから至極当然な質問が飛ぶ
大根役者も真っ青な棒読みで、大声で話すプルーニャ
「こんなにたくさんの苺のヘタを取るの、
私達だけじゃ時間が足らへんね
あぁ、ダイヤ様がいてくれはったら、もっとはかどるのに!」
そんなプルーニャに合わせて、スプネリアもお芝居をする
「本当だわ。ダイヤ様来てくださらないかしら」
「……1魔増えるだけじゃ、そんなに変わらんだろう(笑)」
「しーーーーーーー!!!」
二人の三文芝居にツッコミを入れるウエスターレンに
力をすべて人差し指に込めて口を塞ぐプルーニャ
その後ろで残りのメンバーは和気藹々とケーキを作っていった
「それにしても閣下もリリエル様も禁欲生活で
ストイックな生活を送ってらっしゃるのに、
余計な事をお願いされる方もいらっしゃるのね」
小麦粉をふるいながら呟くリリア
「本当。ご自分で何とか出来なかったのかしら」
「ヘタレやな」
同調するムーランに、容赦ないツッコミを入れるプルーニャ
「恋する男は、いろいろと臆病になっちゃうんじゃない?」
「嫌われたくないとか?」
手厳しい指摘をするバナトラとセリーヌ
「しょぼい男やなぁ」
大量の卵を溶きながら、しみじみと呟くプルーニャ
「だからって、今の閣下にお願いするなんて…」
「でも、そのお願いをちゃんと受け止められた
閣下は本当に素敵ね」
「うんうん。ますます閣下に惹かれちゃった」
セリーヌの言葉にリリアとムーランが
キャーキャーはしゃぐ
「他魔にお願いしないと解決出来なくなるまで
放置していたのもどうかと思うわ」
「時間が解決してくれると思ってたんじゃないですか?」
材料を混ぜ合わせ、ゼラチンを作るセリーヌの横で
焼き上がった生地の上に、器用に苺を並べながら
困ったような表情を浮かべるシルバ
「危機管理能力あらへんのか」
「でも、それで余計に傷口が広がったのよ」
「それに気付いてらっしゃるのかしら」
「うーーーん」
「気付いてらっしゃって、あのお言葉ならちょっと…」
一つ目のケーキが出来上がり、再び材料を混ぜ合わせていく
ぶつぶつ呟くプルーニャに、手を動かしながら考え込むスプネリア
「でも、長官がちゃんとお伝えくださったから、
これからは大丈夫でしょ」
「そうやないと困る」
「リリエル様に私達の気持ちをお伝え出来たのは良かったかな」
「そうね。リリエル様にも、もっと頼って頂けるようにしなくちゃね」
「お店で見たリリエルちゃん、なんか…
もう…抱きしめたかった…」
リリアとムーランの会話に、ぽそっと呟くセリーヌ
その言葉に、部屋の空気が変わる
「わかる!庇護欲をかきたてられちゃった」
人一倍、鼻息を荒くするプルーニャを
そっと見ているスプネリア
「今回の事で私もちゃんとしなくちゃ!って思ったわ」
「そうね」
「私も思った」
「人の振り見て我が振り直せ!ね」
「人じゃないけど(笑)」
ダンケルに聞こえてようが、全く気にせず
好き放題お喋りし続けるLily‘s
「( ー̀дー́ )チッ! リリエルのおにぎり、受けて立つ!」
ウエスターレンには論破され、Lily‘sには好き勝手に動き回られ
多少イラつきながらも、ここは威厳を取り戻し、
立て直しを図ろうとする大魔王
だが、矢継ぎ早に送り付けられていたおにぎりが
送られてこない
「?」
不思議に思い首を傾げるダンケル
「閣下とリリエル様のご機嫌も麗しくなられたようね」
ウエスターレンの邪眼を通して、
イザマーレたちの仲睦まじい様子を確認した
Lily‘sと構成員
出来上がったケーキをダンケルの前に差し出し、告げる
「これ、陛下とダイヤ様の分です。
後で、お2魔で召し上がってください」
「ダイヤ様のこと、よろしくお願いします」
同時に頭を下げるLily‘s
それから魔宮殿を後にした
「よ~し。んじゃ、そろそろ戻るか(笑)」
「そうだね(笑)早く次のミサの準備始めるぞって怒られるね」
「おい、お前らも行くぞ。飲み会の最中だったんだろ?」
ウエスターレンに促され、Lily‘sも笑いながら戻って行く
その中で、不思議な既視感に戸惑う彼女たち
「長官の後ろについて歩いてると、
なんだか先生と学生のような気になるわ」
「わかる!なんだか懐かしい感じがするよね」
「うんうん」
「みんなもそう感じてたんだ?!
その惑いを察したウエスターレンがほくそ笑む
(ようやく、思い出したか…(笑))
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