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屋敷


魔界―


王都ビターバレーに唯一存在する

最高魔イザマーレ族の屋敷


重厚な装飾で施された門扉

その脇には少しだけ小さな扉もある


裏側に回ると目に入るのが大きなガレージ


正門の前に一台の豪奢な作りの馬車が止まる

ドアが開けられ、恭しく出迎える使用魔


「…坊ちゃま、お帰りなさいませ」


「出迎えご苦労。」


中から悠々と現れ出でたのは黄金の怒髪天

…本来であれば、堅苦しい馬車などではなく

自由に駆け回りたい。だが、ここは魔界。

敵の襲来など日常茶飯事。

そして、そんな魑魅魍魎が蠢く世界だからこそ

並大抵ではない力を誇示し、見せつける必要があるのだと

旧知の悪魔は言う


「なんなら俺が、お前を姫のように担ぎ上げ

護送してもいいんだぞ?それが嫌なら、我慢してくれ」


あいつの言い癖を思い浮かべるだけで、

紫煙の香りが漂ってくる気がする


主が屋敷の中へ歩を進める傍らで

裏庭にあるガレージの中で馬車は静かに役割を終える





プライベートルームに入り、言霊で鍵を開け、宝箱を取り出す

そして、正面にある小型のキッチンに視線を向ける


………


かつては、彼が出先から戻った際には

当たり前のように駆け寄り、天真爛漫な笑顔を見せて

嬉しそうにお茶を淹れる相手がいた


キッチンの主が姿を消し、10万年の歳月………


わずかな憂いをかき消すかのように、扉がノックされる


「イザマーレ、お帰り。オルドに茶を用意させたから、おいで」


「…ああ、今行く」


扉を開くと、紅蓮の悪魔が待ち構えていた


「どうだった?イザマーレ。魔界高等学校初日の印象は」


「ああ…案外、面白そうな奴らが数名いたぞ」


「へえ…」


「…ウエスターレン…お前も一緒なら、もっと良かったが…」


「馬鹿言え。カリキュラムをすでに終えてるにも関わらず

クソ面倒な授業など、俺には必要ない」


「//////吾輩だって…」

不満そうにへの字口になるイザマーレ


「仕方ないだろ。一度は魔界を捨て、記憶も消し

人間界に降り立ったお前に課せられた罰だからな(笑)」




「…昔のように、校舎内でもいつも一緒に居たかったぞ」


そう言って、魅惑の瞳で見つめるイザマーレ

ウエスターレンはその綺麗な金髪を優しく撫で、口づけを交わす


「…さ。まずは茶をいただこう。この後も、やる事は山積みだからな」


そう言いながら、邪眼を僅かに開き、人間界を映し出すウエスターレン

目にした映像に、そっと笑顔を見せるイザマーレ


相変わらず、土手の草むらに座り込み、

不貞腐れた表情を見せる幼女の姿


改めて自身を奮い立たせるため、元老院の裏庭に向かう


 
 
 

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