投影
- RICOH RICOH
- 2024年11月19日
- 読了時間: 2分
「それで?コイツがどうかしたのか?
火の領主である俺にとっては弟分のようなものだが」
少しの間、イザマーレと同じ光景を脳裏に描いていたウエスターレンは
ようやく思い出したようにセルダを見遣る
「ああ。お前が言うもんだから、力量を見極めたいと思ったんだ。
だが、もう良い。敵に対する見極めも、甘い。」
「!!」
「エレメンツを封印したままの甘ったれに、
これ以上、用はない。それよりも…なあ、ウエスターレン」
怒りが沸点を超え、逆に冷静になったセルダは
ハッと気がつく
この間、イザマーレは一度も微動だにせず
山頂から見渡せる平原を眺め続けていた
「ダンケル殿下がお考えになる方程式とは
どのようなものだろうな。この場所からの景色を眺めながら
吾輩にはある映像が浮かんだんだ」
イザマーレの透き通った瞳に、映し出される未来の投影
「広く見渡した先に、大勢の民衆が集まり
左右に分かれて二重の旋律を歌い上げるんだ
その時、そこに新たな力が宿り、世界の勢力図が塗り替えられていく
そんな景色を実際に見る事が出来たら…」
とてつもなく誇大な絵空事
だがそれは、2魔が心の底から渇望する宝へ近づく道標になるだろう
「楽しみだな」
改めて、にこやかに笑うイザマーレに、ウエスターレンはそっと寄り添う
その時
ひずんだ音に振り返ると、
セルダがギターを掻き鳴らしていた
「!…」
「何なん?あんたらの会話を聴いてるだけで、
自然とメロディが浮かび上がるじゃんね」
「ほう…なかなか、活きの良い音だな」
「ややこしい話は面倒だし、俺には何の興味もない。
だけど、今のあんたらに欠けてるものを、俺のギターなら
埋めてやれる。」
「ほう…単なる甘ったれではなかったようだな。
口先だけでは何とでも言えるが(笑)」
「面白い。それならお手並み拝見と行こうか。
ま、どうせ日中は暇な学校生活に束縛される。
お前のギターで遊んでやるくらいなら、構わんぞ」
「♪ 分かった。そんなら、俺はこれで。
あんたらを見てると、なんか妙な気持になるんよ。
この坊ちゃん連れて、早う帰りな」
野生猫のような軽妙な足裁きで、
あっという間に山を駆け下りていくセルダ
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