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Ⅳ 救済


―再会―


それから数か月後、プエブロドラド行きのパスポートを再度行使し、

魔界に足を踏み入れた鈴音


プエブロドラドの入口付近で

低級魔と仲良く談笑しているプルーニャと遭遇する


「あ…こ、こんにちは…」


「こんにちは。初めまして…かな。新しい信者さん?

私、プルーニャと言います。よろしくお願いします」


「私は鈴音、と申します。鈴に音と書いて『すずね』と読みます。

こちらこそ、よろしくお願いします。」


「!あなたが鈴音さん?!人間界からの観光でいらっしゃってる…

ようこそ、いらっしゃいました(*^▽^*)」


「///あ、ありがとうございます。

あの…実は、ある人を探してるんですけど…

小柄で、とても優しそうな女性なんですが…ご存知でしょうか…?」


「もちろん、よーく知ってます♪人…じゃないけど(笑)

それなら私と一緒に行こう♪道案内してあげる♪

さ、こっち…ハルミちゃん、行くよー♪あ、飴ちゃん食べる?」


低級魔と戯れていたハルミちゃんを抱っこし、

嬉々と歩き出すプルーニャに、慌てて着いて行く鈴音


プルーニャに連れられ、向かった先の荘厳な建物に目を奪われ

呆然と立ち尽くす鈴音


「あ、あのっ💦」


「ん?鈴音さん?どうしたん?何かあった?…ほらほら、こっち」


戸惑う鈴音の様子を窺いつつ、門扉に向かうプルーニャ




その時、扉が開き、リリエルが出迎えた

「プルーニャ様、いらっしゃい💕それから貴女は…

鈴音様…でしたね?どうぞ、お入りください」


「!!!」


ミサ会場で出会った時と変わらない

ほんわかしたリリエルの姿に、心を解き解される


リビングのソファに腰掛けながら、

震えを抑えられず、ソワソワと辺りを眺める鈴音


リリエルはにこやかにお茶を淹れ、向かいのソファに座る


「あ、あの……初めまして💦」

「?…」


鈴音の言葉に、静かに微笑みながら首を傾げるリリエル


「私にとっては、お久しぶり……なのですが、

きっと覚えてらっしゃらないと思って💦」


「ああ!ミサの時に交わした会話は覚えてましたよ(´∀`*)ウフフ 

悪魔の世界に足を踏み入れてくださって

本当にありがとうございます💕」


「…ずっと、お会いしたいと思っておりました。

まさかプエブロドラドではなく、こんな広いお屋敷にいらっしゃるとは💦

あの…改めて、お名前を教えていただけますか?」


「クス…そうね、自己紹介すら、まだでしたね💕

失礼しました(笑) 私はリリエルと申します。鈴音様

よろしく、仲良くしてくださいね」


リリエルの微笑みに、思わず赤面してしまう鈴音




「///こ、こちらこそです(//∇//)

あの、リリエル様はこのお屋敷にお暮らしなんですね?

えっと……この屋敷って…」


鈴音の脳裏に浮かぶ無数の疑問符を察知しているものの

自分から口にするのが照れくさくて、少し頬を赤くして

俯きがちになるリリエル


「///ここは、イザマーレ閣下のお屋敷です。

私はここで暮らしています。閣下と…

それから、ウエスターレン長官も…一緒に…///」


「!!?!?!……え、っと…それって…」


驚きのあまり固まりつつ、深追いする鈴音の横で

プルーニャが嬉しそうに笑顔を浮かべている


「えっと…イザマーレ閣下の…妻…です…/////」

最後は小さな声で、真っ赤になるリリエル


プルーニャは、自分の事のように誇らしい表情を見せる


「リリエル様は、副大魔王妃様なんよ♪」


「!!」


単なる信者と思って探していた相手が、

副大魔王妃であった事に驚き、目を丸くする鈴音


「鈴音様、これからも、最高魔軍を好きでいてくださいね」


「…はい…//////」


リリエルの言葉に、心底励まされる彼女




「あの…自分は、何もかも分からないことばかりで

偶然見かけた先輩信者さん達を真似て

構成員の皆さ魔を呼び捨てにする、などという行為を

恥ずかしげもなく犯しておりました…申し訳ありませんでした」

深く頭を下げて謝罪する鈴音


「鈴音様…顔を上げてください。そのような事、閣下は何も

責めたりなさいませんから。」


震え続ける鈴音に、はっきりと伝えるリリエル


「!……貴女ほどの方でも、私なんかに『様』と

敬称を付けてくださると言うのに…」


自分の行為に腹が立ち、悔しそうに涙を浮かべる鈴音


「あ…(( ̄▽ ̄;;)ア、ハハハハ…私は…つい、そう呼んでしまうの

癖…?みたいなものだから…💦」


「そうですよー!私のことも、いつまで経っても『様』つけてはるし…

もっと私らに心を開いて、ラフな呼び方で呼んで貰いたいです(苦笑)

でも、それがリリエル様らしいとこなんですよね」


プンスカするプルーニャの突っ込みに、終始、穏やかに微笑むリリエル


「それに…鈴音様ご自身が、もうお気づきになってらっしゃいます。

最高魔軍の教典を聴いて、正しく導かれた証拠ですよね?

その事を、閣下もとても嬉しく感じてらっしゃいますよ」


その時、2階で、消えていた寝室の扉が開かれ

執務室の扉が閉まる音がした


「…あ。ちょっとごめんなさいね」


その音に気がついたリリエルが立ち上がり、階段を上っていく




「…あの…あの…!

ひょっとして今…扉の中に入られたのは…💦」


これまでの会話を総ざらいすると、

確信するしかない事態に、最高潮に緊張する鈴音


すぐに扉が開き、黄金の怒髪天と紅蓮の悪魔の姿が…

そして、彼らと何やら楽しそうに談笑をするリリエルの姿


「…あ、それじゃ、そろそろお暇しましょうか」


察したプルーニャが気を遣って声をかけると、

2階の廊下からリリエルが呼びかけてきた


「あのね、鈴音様に閣下をご紹介しようと思ったんだけど…

突然降りて行ったらビックリさせちゃうかしら…?」


「!…い、いえいえいえ💦と、とんでもないです!!」

あまりのことに恐縮して首を横に被り振る鈴音


「ほ~ら、な♪心配いらないから、お前はこっちに来い♪

自分の立場をきちんと説明できたお利口さんに、褒美をやらんとな♪」


「!!…///////」


聞き間違えるはずのない、イザマーレの声に興奮を隠せない鈴音

だが、その内容に首を傾げる


「…えーっと 恐らくこの後、リリエル様と扉を消されると思います。

私らは空気を読んで、この辺でお暇しましょう…

お邪魔ましたーーー!!」


間もなくプライベートルームの扉が消えると察したプルーニャは

鈴音を連れてソラの館に向かう




「あ♪プルーニャちゃま~(≧∇≦)」


早速、嬉しそうに出迎えるソラ。プルーニャの隣にいる女性に気づき

にこやかな笑顔を見せる


「鈴音ちゃま、ですね。リリエルちゃまには会えましたか?」


「!!…はい。プルーニャさん、ありがとうございました」


ソラに聞かれ、改めてお辞儀をする鈴音に、プルーニャはにっこりと笑う


「遠慮はいらんよ♪今日閣下に会われんかったのは、残念やったね」


「え、鈴音ちゃま、サムちゃまに会えなかったの?」


「そうなんです。すぐにリリエル様と扉を消してしまわれて…(笑)」


可愛らしい表情で見上げるソラに、苦笑するプルーニャ


「あ…あの…『扉を消す』とは…?」


信者になりたての鈴音にとって、魔界用語はまだまだ難しく

純粋に好奇心で問いかける

そんな彼女の耳元で囁くプルーニャ


「…!!!…///////」


プルーニャの言葉に真っ赤になり、貧血を起こしそうになりながら

興奮を隠せない鈴音に、ソラも嬉しそうに笑う


「サムちゃまとリリエルちゃま、すっごく仲良しなのよ♪

あの2魔が仲良くしてくれると、ソラもすっごく嬉しいの(*^▽^*)

…あ、だけど、鈴音ちゃまもサムちゃまに会いたいよね?今度

ソラからもお願いしておくからね♪」




「そうやね!!…そもそも、鈴音さんはどの構成員推しなんやろか?」


「!!…ま、まだ信者になりたてで…💦最高魔軍の音楽に惹かれました!!

だから…やっぱり、閣下…かな…あまりにも尊くて…近寄るなんてとても…💦」


「ふふっ…ソラも、カッコ良いサムちゃま、だ~い好き♪」


プルーニャの問い掛けに、さらに顔を真っ赤にさせて恐縮する鈴音に

ソラも大喜びで応える


「閣下がお選びになる相手が、リリエル様のような方というのも…

すごく嬉しいです。何故だか…とても誇らしい気持ちになりますね…」


そんな思いを吐露する鈴音

うんうんと頷きながら納得したプルーニャは、少し遠慮気味に訪ねた


「代官はどうでした?」


「はい!初めて参拝したあの時のミサでは、

代官のギターの音色に痺れました♪」


そんな鈴音の言葉に、嬉しそうな笑顔を見せるプルーニャ

そこへ姿を現した裕子が声をかけてきた


「鈴音さん。そろそろ、今回も時間となりました。人間界までのお見送りを

閣下から仰せつかってます。行きましょ♪」


「!…あ、ありがとうございます!!あの…貴女は?」


「裕子と言います。私も貴女と同じ人間だから、遠慮なさらないで。

困った事があれば、何でも相談してくださいね。」


矢継ぎ早に質問攻めをする鈴音に、裕子は少し照れながらも

ひとつひとつ、丁寧に答えていく




「! そうなんですね!!裕子さん…

貴女もやはり、閣下が好きなのですか?」


「あ…///いえ、私は…閣下と…リリエル様の…娘です」


裕子の告白に再び目を丸くする鈴音


「え?! し、失礼ですが、リリエル様は見た目、

私より少しお若いくらいかと思いました

裕子さんも、同じくらい…に見えるのですが…??」


至極最もな鈴音の疑問に、静かに笑みを浮かべながら

その目には涙を滲ませる裕子


「はい…鈴音さんのその疑問にお応えするには、

とてもじゃないけど時間が足りません。

なので…またいらしてくださいね」


「こちらに…?よ、よろしいのでしょうか?」


恐縮し続ける鈴音を促し、人間界に向かう裕子



彼女たちを見送りながら、何気なく聞いていたプルーニャに

ソラがギュッと抱きつく


「?…ソラ様?」


「気がついてらっしゃらない?…ううん…そうじゃない。

一瞬、鈴音ちゃまに居たと思ったら、プルーニャ様に戻ってくれた…

そうでしょ?りーちゃま…」


「………」


何も言わず、ソラの髪を撫でるプルーニャから

一瞬、梅の香りが漂い消えて行く





さて、その後

裕子と一緒に人間界と行き来しながら、魔界の空気に触れ、

傷を癒しながら教典に触れ、悪魔の真髄の理解を深めていく鈴音


時折訪れるLily‘sたちと、和気藹々と過ごしながら

徐々に元気を取り戻していく…






 
 
 

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