Ⅳ 救済
- RICOH RICOH
- 2024年11月18日
- 読了時間: 8分
―再会―
それから数か月後、プエブロドラド行きのパスポートを再度行使し、
魔界に足を踏み入れた鈴音
プエブロドラドの入口付近で
低級魔と仲良く談笑しているプルーニャと遭遇する
「あ…こ、こんにちは…」
「こんにちは。初めまして…かな。新しい信者さん?
私、プルーニャと言います。よろしくお願いします」
「私は鈴音、と申します。鈴に音と書いて『すずね』と読みます。
こちらこそ、よろしくお願いします。」
「!あなたが鈴音さん?!人間界からの観光でいらっしゃってる…
ようこそ、いらっしゃいました(*^▽^*)」
「///あ、ありがとうございます。
あの…実は、ある人を探してるんですけど…
小柄で、とても優しそうな女性なんですが…ご存知でしょうか…?」
「もちろん、よーく知ってます♪人…じゃないけど(笑)
それなら私と一緒に行こう♪道案内してあげる♪
さ、こっち…ハルミちゃん、行くよー♪あ、飴ちゃん食べる?」
低級魔と戯れていたハルミちゃんを抱っこし、
嬉々と歩き出すプルーニャに、慌てて着いて行く鈴音
プルーニャに連れられ、向かった先の荘厳な建物に目を奪われ
呆然と立ち尽くす鈴音
「あ、あのっ💦」
「ん?鈴音さん?どうしたん?何かあった?…ほらほら、こっち」
戸惑う鈴音の様子を窺いつつ、門扉に向かうプルーニャ
その時、扉が開き、リリエルが出迎えた
「プルーニャ様、いらっしゃい💕それから貴女は…
鈴音様…でしたね?どうぞ、お入りください」
「!!!」
ミサ会場で出会った時と変わらない
ほんわかしたリリエルの姿に、心を解き解される
リビングのソファに腰掛けながら、
震えを抑えられず、ソワソワと辺りを眺める鈴音
リリエルはにこやかにお茶を淹れ、向かいのソファに座る
「あ、あの……初めまして💦」
「?…」
鈴音の言葉に、静かに微笑みながら首を傾げるリリエル
「私にとっては、お久しぶり……なのですが、
きっと覚えてらっしゃらないと思って💦」
「ああ!ミサの時に交わした会話は覚えてましたよ(´∀`*)ウフフ
悪魔の世界に足を踏み入れてくださって
本当にありがとうございます💕」
「…ずっと、お会いしたいと思っておりました。
まさかプエブロドラドではなく、こんな広いお屋敷にいらっしゃるとは💦
あの…改めて、お名前を教えていただけますか?」
「クス…そうね、自己紹介すら、まだでしたね💕
失礼しました(笑) 私はリリエルと申します。鈴音様
よろしく、仲良くしてくださいね」
リリエルの微笑みに、思わず赤面してしまう鈴音
「///こ、こちらこそです(//∇//)
あの、リリエル様はこのお屋敷にお暮らしなんですね?
えっと……この屋敷って…」
鈴音の脳裏に浮かぶ無数の疑問符を察知しているものの
自分から口にするのが照れくさくて、少し頬を赤くして
俯きがちになるリリエル
「///ここは、イザマーレ閣下のお屋敷です。
私はここで暮らしています。閣下と…
それから、ウエスターレン長官も…一緒に…///」
「!!?!?!……え、っと…それって…」
驚きのあまり固まりつつ、深追いする鈴音の横で
プルーニャが嬉しそうに笑顔を浮かべている
「えっと…イザマーレ閣下の…妻…です…/////」
最後は小さな声で、真っ赤になるリリエル
プルーニャは、自分の事のように誇らしい表情を見せる
「リリエル様は、副大魔王妃様なんよ♪」
「!!」
単なる信者と思って探していた相手が、
副大魔王妃であった事に驚き、目を丸くする鈴音
「鈴音様、これからも、最高魔軍を好きでいてくださいね」
「…はい…//////」
リリエルの言葉に、心底励まされる彼女
「あの…自分は、何もかも分からないことばかりで
偶然見かけた先輩信者さん達を真似て
構成員の皆さ魔を呼び捨てにする、などという行為を
恥ずかしげもなく犯しておりました…申し訳ありませんでした」
深く頭を下げて謝罪する鈴音
「鈴音様…顔を上げてください。そのような事、閣下は何も
責めたりなさいませんから。」
震え続ける鈴音に、はっきりと伝えるリリエル
「!……貴女ほどの方でも、私なんかに『様』と
敬称を付けてくださると言うのに…」
自分の行為に腹が立ち、悔しそうに涙を浮かべる鈴音
「あ…(( ̄▽ ̄;;)ア、ハハハハ…私は…つい、そう呼んでしまうの
癖…?みたいなものだから…💦」
「そうですよー!私のことも、いつまで経っても『様』つけてはるし…
もっと私らに心を開いて、ラフな呼び方で呼んで貰いたいです(苦笑)
でも、それがリリエル様らしいとこなんですよね」
プンスカするプルーニャの突っ込みに、終始、穏やかに微笑むリリエル
「それに…鈴音様ご自身が、もうお気づきになってらっしゃいます。
最高魔軍の教典を聴いて、正しく導かれた証拠ですよね?
その事を、閣下もとても嬉しく感じてらっしゃいますよ」
その時、2階で、消えていた寝室の扉が開かれ
執務室の扉が閉まる音がした
「…あ。ちょっとごめんなさいね」
その音に気がついたリリエルが立ち上がり、階段を上っていく
「…あの…あの…!
ひょっとして今…扉の中に入られたのは…💦」
これまでの会話を総ざらいすると、
確信するしかない事態に、最高潮に緊張する鈴音
すぐに扉が開き、黄金の怒髪天と紅蓮の悪魔の姿が…
そして、彼らと何やら楽しそうに談笑をするリリエルの姿
「…あ、それじゃ、そろそろお暇しましょうか」
察したプルーニャが気を遣って声をかけると、
2階の廊下からリリエルが呼びかけてきた
「あのね、鈴音様に閣下をご紹介しようと思ったんだけど…
突然降りて行ったらビックリさせちゃうかしら…?」
「!…い、いえいえいえ💦と、とんでもないです!!」
あまりのことに恐縮して首を横に被り振る鈴音
「ほ~ら、な♪心配いらないから、お前はこっちに来い♪
自分の立場をきちんと説明できたお利口さんに、褒美をやらんとな♪」
「!!…///////」
聞き間違えるはずのない、イザマーレの声に興奮を隠せない鈴音
だが、その内容に首を傾げる
「…えーっと 恐らくこの後、リリエル様と扉を消されると思います。
私らは空気を読んで、この辺でお暇しましょう…
お邪魔ましたーーー!!」
間もなくプライベートルームの扉が消えると察したプルーニャは
鈴音を連れてソラの館に向かう
「あ♪プルーニャちゃま~(≧∇≦)」
早速、嬉しそうに出迎えるソラ。プルーニャの隣にいる女性に気づき
にこやかな笑顔を見せる
「鈴音ちゃま、ですね。リリエルちゃまには会えましたか?」
「!!…はい。プルーニャさん、ありがとうございました」
ソラに聞かれ、改めてお辞儀をする鈴音に、プルーニャはにっこりと笑う
「遠慮はいらんよ♪今日閣下に会われんかったのは、残念やったね」
「え、鈴音ちゃま、サムちゃまに会えなかったの?」
「そうなんです。すぐにリリエル様と扉を消してしまわれて…(笑)」
可愛らしい表情で見上げるソラに、苦笑するプルーニャ
「あ…あの…『扉を消す』とは…?」
信者になりたての鈴音にとって、魔界用語はまだまだ難しく
純粋に好奇心で問いかける
そんな彼女の耳元で囁くプルーニャ
「…!!!…///////」
プルーニャの言葉に真っ赤になり、貧血を起こしそうになりながら
興奮を隠せない鈴音に、ソラも嬉しそうに笑う
「サムちゃまとリリエルちゃま、すっごく仲良しなのよ♪
あの2魔が仲良くしてくれると、ソラもすっごく嬉しいの(*^▽^*)
…あ、だけど、鈴音ちゃまもサムちゃまに会いたいよね?今度
ソラからもお願いしておくからね♪」
「そうやね!!…そもそも、鈴音さんはどの構成員推しなんやろか?」
「!!…ま、まだ信者になりたてで…💦最高魔軍の音楽に惹かれました!!
だから…やっぱり、閣下…かな…あまりにも尊くて…近寄るなんてとても…💦」
「ふふっ…ソラも、カッコ良いサムちゃま、だ~い好き♪」
プルーニャの問い掛けに、さらに顔を真っ赤にさせて恐縮する鈴音に
ソラも大喜びで応える
「閣下がお選びになる相手が、リリエル様のような方というのも…
すごく嬉しいです。何故だか…とても誇らしい気持ちになりますね…」
そんな思いを吐露する鈴音
うんうんと頷きながら納得したプルーニャは、少し遠慮気味に訪ねた
「代官はどうでした?」
「はい!初めて参拝したあの時のミサでは、
代官のギターの音色に痺れました♪」
そんな鈴音の言葉に、嬉しそうな笑顔を見せるプルーニャ
そこへ姿を現した裕子が声をかけてきた
「鈴音さん。そろそろ、今回も時間となりました。人間界までのお見送りを
閣下から仰せつかってます。行きましょ♪」
「!…あ、ありがとうございます!!あの…貴女は?」
「裕子と言います。私も貴女と同じ人間だから、遠慮なさらないで。
困った事があれば、何でも相談してくださいね。」
矢継ぎ早に質問攻めをする鈴音に、裕子は少し照れながらも
ひとつひとつ、丁寧に答えていく
「! そうなんですね!!裕子さん…
貴女もやはり、閣下が好きなのですか?」
「あ…///いえ、私は…閣下と…リリエル様の…娘です」
裕子の告白に再び目を丸くする鈴音
「え?! し、失礼ですが、リリエル様は見た目、
私より少しお若いくらいかと思いました
裕子さんも、同じくらい…に見えるのですが…??」
至極最もな鈴音の疑問に、静かに笑みを浮かべながら
その目には涙を滲ませる裕子
「はい…鈴音さんのその疑問にお応えするには、
とてもじゃないけど時間が足りません。
なので…またいらしてくださいね」
「こちらに…?よ、よろしいのでしょうか?」
恐縮し続ける鈴音を促し、人間界に向かう裕子
彼女たちを見送りながら、何気なく聞いていたプルーニャに
ソラがギュッと抱きつく
「?…ソラ様?」
「気がついてらっしゃらない?…ううん…そうじゃない。
一瞬、鈴音ちゃまに居たと思ったら、プルーニャ様に戻ってくれた…
そうでしょ?りーちゃま…」
「………」
何も言わず、ソラの髪を撫でるプルーニャから
一瞬、梅の香りが漂い消えて行く
さて、その後
裕子と一緒に人間界と行き来しながら、魔界の空気に触れ、
傷を癒しながら教典に触れ、悪魔の真髄の理解を深めていく鈴音
時折訪れるLily‘sたちと、和気藹々と過ごしながら
徐々に元気を取り戻していく…
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