秘密
- RICOH RICOH
- 2024年10月20日
- 読了時間: 3分
朝から雨が降っている…
学園の門扉に訪れた、珍客。
一見、凶悪そうに見えるその顔にはイザマーレ族を証明する紋様
見た目を裏切らず、彼の半径500m以内は立ち入り禁止とする噂も…
そぼ降る雨も、強力に覆われた結界すらも気にせず
ズンズンと校内に歩を進めるエレジア
「…波動が気になると、師匠に言われて来てみたが…
そんなわけねーだろ、あいつ等が居るんだし…」
ブツブツと独り言ちながら周囲を見回す
…言われてみると、確かに結界の一部が緩んでいるようだった
「ほんの僅かな誤差だな。…たしかに
珍しいっちゃ珍しいよなあ…」
そう言いながら、守衛室を覗き込む
「!」
目にした光景に固まり、だが次の瞬間
元の穏やかな表情に戻る
「…へえ…あんな表情で寝てやがる…
それならアイツも、幸せだったんだろうよ…」
知らずの内に、フサフサのしっぽが楽し気に揺れ動く
ウエスターレンの眠りを妨げないよう、
結界の切れ目を綺麗に補強し
そっとその場を後にするエレジア
それから数日が経った。
体育の時間となり、学園中の生徒が
こぞって体育館に行列を作っている時間…
守衛室に再び訪れた珍客―エレジア―
一瞬警戒し、眼光鋭く見返した瞬間、八重歯を覗かせ
屈託のない笑顔を見せるウエスターレン
「よお!久しぶりだな♪どうしたんだ?」
「…ちょっとな。師匠に頼まれごとがあって、
中央に来たついでに、お前に会っておこうと思ってな」
ウエスターレンはエレジアを守衛室の中に迎え入れ
長い脚を組んで紫煙を燻らせる
「…うまくいってるようだな。安心した。お前が一時期
師匠の所に通っていた頃は、心配していたが…」
エレジアの言葉に、静かに笑みを浮かべるウエスターレン
「イザマーレが百合の花を見つけたからな。
後は俺が、あの2魔を守り抜けばいい。」
ウエスターレンの力強い言葉に、エレジアも納得して頷く
「くれぐれも、無理しすぎるなよ?お前はイザマーレにとって
最も大切な存在なんだ。力になれることがあるなら
俺にも遠慮せず、声をかけてくれ」
「…そうだなあ…リリエルのサロンに、お前も来てくれたら
アイツも喜ぶんじゃないか?」
「!…い、いいのか…?」
「何の問題もないだろ。時々、俺の酒の相手にもなってくれ♪」
イザマーレがリリエルと愛し合う間
暇を持て余すようになったウエスターレン。
ちょうど良い相手を見つけたと、ほくそ笑む。
そして、ウエスターレンに懐き始めたリリエルと、
リリエルに向けるウエスターレンの視線が
気になり始めていたイザマーレも、
エレジアのサロン入室とウエスターレンとの逢瀬を快諾する。
もちろん
「朝には帰れよ。絶対だからな!!」
と忠告も忘れずに……
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