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軟禁


王都ビターバレーから少し外れた、

低級魔族が多く暮らすコミュニティー


周囲との接触を避けるように

低い草木に囲われた、丸太小屋


鳥のさえずりに、リリエルは目を覚ました。

「……」


その時、近づいてくる足音が聞こえ、

寝たふりをするリリエル。


ドアを開けて、中に入ってきたのはエマと、男の悪魔。


「へえ、想像通りのいい女じゃん。」


リリエルの寝顔を舐めるような視線で見つめ、観察し始める。


「思った以上にそそられる♪早速縛り上げようぜ…イテッ」


そのままリリエルの身体に手を触れようとした瞬間、顔を顰める


「なんだよ、エマ!お前に協力する代わり、

生贄は何でも俺の好きにしていいって言ったろ!?」


エマに小石でも投げつけられたと思った悪魔は怒鳴る


「知らないわよ!でも、あまりみっともない真似は慎みなさいね

待てもできない犬以下になりたいの?」


「…チッ。本当に可愛げのない女だ。」

イラ立ちを隠そうとしない悪魔。




「いいから早く。その女の髪の毛を切って!

それさえ済めばいいの」


エマに命令され、ブツブツ文句を言いながら

リリエルの髪をナイフで切り落とす悪魔。


「…ほらよ」


切り取った髪を受け取ったエマ。


在りし日の光景が、走馬灯のように駆け巡る


いつも焦がれていたイザマーレに、優しく撫でられ

美しく輝くリリエルの髪を、

羨ましく、妬ましく思い続けていた日々


…エマ…


いつも微笑み、優しく呼びかける彼女の声


確かにあった、静かで安らかなひと時

いつでもイザマーレに愛される彼女の事を、

憧れの気持ちで眺めていた


それでも…

イザマーレに対する想いだけは、捨てる事ができなかったのだ


「この髪さえ手に入れば、もういいの。出かけて来るわ。

彼女への手出しは一切禁止。縛り付けるのもダメよ。

部屋から逃げ出さないよう、見張ってくれればいいの。

分かったわね?」


そう言い残して立ち去るエマ。


何だよ!話が違うぞ!…などと騒ぎながら

2魔は部屋に鍵をかけ、立ち去って行った




しばらくして、ゆっくりと静かに目を開けるリリエル。


「……」


窓ガラスに映る、自分の姿を確認する


無造作に切り取られ、不格好な髪型に思わず笑みが浮かぶ

「…せめてもう少し、綺麗に切ってくれればいいのになあ…」


「さて…始めるか。ふふふっ 久しぶりに楽しませてもらうわ♪

どう料理してくれようかしら…」


不敵な笑みと静かな呟きが、丸太小屋に響く


すでに夕闇が迫っていたが、昼間のように光り輝き、

なぜだか草木もほくそ笑んでいるように見えた……




 
 
 

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