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開幕


ついに、最高魔軍の黒ミサツアーが開幕した


間違いなく半端なく素晴らしいステージングの数々…

鍛え抜かれた身体に、ほとばしる汗も艶っぽく

何十倍にも大きく見える副大魔王の真骨頂


夢幻月詠による魅惑の声が、会場全体を掌握していく


体の芯が揺れ動くほどのリズム、

荒々しくも華々しいギターの音色

心を許した者同士の弾けたトーク


その場にいる誰もが夢の時間に酔いしれる……


昼公演が終わり、会場外で

キャーキャーと盛り上がる信者たち


Lily‘sも、写真を撮ったり

グッズコーナーに何度も並んだり

各々、楽しい時間を満喫していた


いつの間にか夕刻になり、空が紺碧に鎮まりつつある


その中でふいに現れた、全身黒装束に身を包んだある者の姿に

その場にいた誰もがざわめき出す


気がついたダイヤは、弾けるような笑顔で抱きつく

「やっぱり来てたのね💕お久しぶり~」


ダイヤの声で、気がついたリリエルも振り返り、笑顔で会釈する


「こんにちは💕楽しみましょうね」




「…そうだね、リリエルちゃん。それに、ダイヤちゃんも

相変わらず元気そうだね✨今回はお近づきの印に

プレゼントを持ってきたんだ。受け取ってくれるかな?」


そう言って、小さなプランターを差し出す男


「ええっ、(*ノωノ)キャー!! もう、カッコイイことしちゃって~💕」

手渡されたダイヤは、何の疑問も抱かずはしゃぐ


同じように手渡されて、プランターに咲いている

コスモスの花を見た途端、ハッと気が付き

万感の思いを巡らせるリリエル


ダイヤに気づかれないよう、そっとテレパシーを送る


(…お久しぶりです。ミカエル様……)


リリエルからのテレパシーに気づいたミカエルは、

目を逸らしつつ、その場を離れて行く…



一方、楽屋で疲れを癒しつつ、

夜公演に向けて粛々と準備をしている構成員たち


禁欲生活を続けるイザマーレは

精神的にも研ぎ澄まされ、会場で起こるどんな些細な事も把握し

トラブルは最小限に抑え、無限大の夢空間を作り続ける



そんな副大魔王の解き放つオーラは、いつも以上に魅惑的で

実に扇動的に周囲の羨望を煽る


それは信者のみならず

構成員や悪魔軍666師団のスタッフも同じなのだ




性欲を封印した分、体力を補うのは食事でしかなく

普段から小食のイザマーレに、楽屋で控えるウエスターレンが

甲斐甲斐しく世話を焼く


「イザマーレ。いったんシャワーを浴びたら、少しでも食べておけ」


「ああ…すまないな。」


ウエスターレンから手渡された小ぶりの梅おにぎりを

モグモグ食べるイザマーレ


「…よし。食べたな。どうする?少し休むか?」

「いや…大丈夫だ。そこまでの疲労ではないからな。ありがとな」


そう言いながら、四股を踏み、全身のストレッチを続けるイザマーレ


「肌艶といい、声量といい、申し分ないじゃないか。

これなら、今回の黒ミサも成功間違いないな♪」


「…ふっ まだ始まったばかりだからな。

せめて、お前がステージ上に居てくれるなら、

ここまで追い込む必要もないだろうが…

格好悪い姿は絶対に見せられないからな♪

お前にも、それからリリエルにもな…」


そんな風に静かに笑うイザマーレを

穏やかに見守るウエスターレン


禁欲生活のあおりを喰らうのは、ウエスターレンも同じなのだが

乗り越えてきた年数が違う。


少しでもストレスを抱え込めば、それは暴走にも繋がりかねない

危うさの中、ただイザマーレと大事な構成員を支える役割に徹して

業務を遂行していくウエスターレン




楽屋を出て通路にあるソファに集う構成員やスタッフとも

気兼ねなく会話を繰り広げる


厳しさの中に、常に楽しむ気持ちを忘れない。

最高魔軍の時計が、刻一刻と針を進めていく…




 
 
 

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