魔鏡
- RICOH RICOH
- 2024年11月17日
- 読了時間: 4分
部屋の壁に飾られた魔境が突然光り出し、
ラァードルを呼ぶ声が聞こえてくる
「おーい、ラァードル君居るかい?久しぶりだな~
ところで、そちらで何かあったかい?! やけに
うちのが朝からソワソワして落ち着かないんだが」
「!! 風神様、ご無沙汰しております。実は……」
「…そうだったのか……
珍しくあいつが交信しろってしつこくてよ(笑)
スプネリアの異変に気がついたからか……」
「すみません、ご心配おかけして……」
イザマーレも交信に加わり、頭を下げる
「風神殿。魔界における責任は、全て私にあります。
申し訳ありません」
「な~に、構わんよ
そこで暮らす以上、何かあっても全ては自己責任だって事は
スプネリアも分かっているだろうからね
今回の件は全てイザマーレ君に任せるよ
また皆で遊びに来てくれな♪じゃまたな!」
一方、隣の寝室では、
思わぬ貰い事故で気を失ったプルーニャを目覚めさせるため
セルダが甘い口づけをしている真っ最中だ
だが時折、ハルミちゃんが心配そうに見つめたり
ニヤニヤしながら様子を窺っているウエスターレンに困惑し
照れまくるセルダ
「そう言えば…プルーニャ様まで被害に遭われたのは何故かしら…」
ぼんやりと呟くリリエルの元に、
部屋から追い出されたハルミちゃんが駆け寄り
リリエルの膝の上に飛び乗ったまま、スリスリしてくる
「ん?ハルミちゃん…何か知ってるの?」
ナデナデするリリエルに、草花たちが再び勢いづき
雄弁に語り始める
(わ、分かった…💦お願いだから、お一方ずつ、順番にゆっくりね)
(………なるほどな…)
リリエルと自然界とのやり取りで、全てを察するイザマーレ
「…という事で、今回の顛末に関しては
我々に任されたわけだが…どうする?」
風神帝との交信を終え、問いかけるウエスターレン
イザマーレは思案している素振りを見せながら、
リリエルの行動を注視している
「どのみち、大元を断たない事には何も始まらないよな
だが…まあ、スプネリアが意識を強く持てば
解決するんじゃないのか?」
「えっ」
イザマーレの思いがけない言葉に驚くラァードル
「ラァードル、お前だって、実は満更でもなかったろ?
意識は別とはいえ、スプネリアに積極的に迫られて(笑)」
ニヤッと笑うイザマーレ
「どちらにせよ、このまま無罪放免とはいかない。
我々の監視下に置く必要はあるだろ
だが…罪もない草花を手にかけるのは忍びないよな~?」
「…え、えっと…サムちゃん??」
真意を測りかねているラァードル
イザマーレの本音に気づき、
ウエスターレンは笑いを堪えている
ベルデは何も言わず、視線も合わせないでいる
オジーとラァードルが困惑している中
すくっと立ち上がり、微笑むリリエル
「殿下♪意識のない『スプネリア様モドキ』では、楽しめませんよね?
ご本人の意識が戻られたのだから、あとは好きなだけ
本物のスプネリア様と楽しまれたら良いですよね」
リリエルの言葉に、同時に真っ赤になるラァードルとスプネリア
オジーがハッとして見つめ返す
「!!お妃様……貴女様なら、その植物の居場所が分かりますか!?」
「もちろんよ。お任せくださいな💕」
有無を言わさずテラスに歩み出て、リリエルがにこやかに宣言する
「良い子なら、正直に言いなさい💕
隠し立てするようなら、枯らしちゃうわよ💕💕💕💕」
髪の毛をふんわりさせた瞬間、
長い蔓に変化させ庭の全ての草花を絡め取って行く
「…さあ♪正直に教えてくださいな♪♪」
そんなリリエルの様子を見守りながら
植物エキスを上手く焙煎して有効利用できないか
コソコソと相談し合う副大魔王と紅蓮の悪魔、そしてベルデ
バサラも何気に聞き耳立てている
ますます青筋を立て、髪の毛の先端を針状に変え
自白を強要するリリエル
そんな花の権化の様子にポ~っとしながらも慌てふためき
事件の発端となった植物の正体を浮かび上がらせる草花たち
スポットライトを浴びたかのように
ひと際明るく照らし出される怪奇植物
「閣下💕当然、鎮めてくださいますよね?( ̄― ̄)ニヤリ」
「……はい(苦笑)」
心の奥で舌打ちしながらも、
リリエルからのおねだりに快諾するイザマーレ
刹那
夢幻月詠に紡がれる詠唱に
元凶となった植物が震え、鎮静化されていく
暴走し肥大化していた花が穏やかさを取り戻し
ほんの小さな可憐な姿に変化していく
長い耳が特徴の動物によく似た形から
BunnyEarsと呼ばれる食中植物だ
「…へえ、元はこんなに小さくて可愛い花なんだね」
「花は多くの場合、周囲にいる者の思惑に影響され
夜叉にも可憐な姿にも変化するものだ。分かるか?スプネリア」
ベルデの言葉を受けて、スプネリアに向き合うウエスターレン
「というわけで、ベルデ。この後はお前に任せたぞ。
『そして、良きに計らえ』だとよ♪これは、イザマーレからの伝言。
よろしくな(笑)」
「…了解。あとで、報告に行くよ」
ため息がちに、のんびりと応えるベルデ…
コメント