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魔鏡


部屋の壁に飾られた魔境が突然光り出し、

ラァードルを呼ぶ声が聞こえてくる


「おーい、ラァードル君居るかい?久しぶりだな~

ところで、そちらで何かあったかい?! やけに

うちのが朝からソワソワして落ち着かないんだが」


「!! 風神様、ご無沙汰しております。実は……」


「…そうだったのか……

珍しくあいつが交信しろってしつこくてよ(笑)

スプネリアの異変に気がついたからか……」


「すみません、ご心配おかけして……」


イザマーレも交信に加わり、頭を下げる


「風神殿。魔界における責任は、全て私にあります。

申し訳ありません」


「な~に、構わんよ

そこで暮らす以上、何かあっても全ては自己責任だって事は

スプネリアも分かっているだろうからね

今回の件は全てイザマーレ君に任せるよ

また皆で遊びに来てくれな♪じゃまたな!」





一方、隣の寝室では、

思わぬ貰い事故で気を失ったプルーニャを目覚めさせるため

セルダが甘い口づけをしている真っ最中だ


だが時折、ハルミちゃんが心配そうに見つめたり

ニヤニヤしながら様子を窺っているウエスターレンに困惑し

照れまくるセルダ


「そう言えば…プルーニャ様まで被害に遭われたのは何故かしら…」


ぼんやりと呟くリリエルの元に、

部屋から追い出されたハルミちゃんが駆け寄り

リリエルの膝の上に飛び乗ったまま、スリスリしてくる


「ん?ハルミちゃん…何か知ってるの?」


ナデナデするリリエルに、草花たちが再び勢いづき

雄弁に語り始める


(わ、分かった…💦お願いだから、お一方ずつ、順番にゆっくりね)


(………なるほどな…)


リリエルと自然界とのやり取りで、全てを察するイザマーレ


「…という事で、今回の顛末に関しては

我々に任されたわけだが…どうする?」


風神帝との交信を終え、問いかけるウエスターレン

イザマーレは思案している素振りを見せながら、

リリエルの行動を注視している


「どのみち、大元を断たない事には何も始まらないよな

だが…まあ、スプネリアが意識を強く持てば

解決するんじゃないのか?」


「えっ」




イザマーレの思いがけない言葉に驚くラァードル


「ラァードル、お前だって、実は満更でもなかったろ?

意識は別とはいえ、スプネリアに積極的に迫られて(笑)」


ニヤッと笑うイザマーレ


「どちらにせよ、このまま無罪放免とはいかない。

我々の監視下に置く必要はあるだろ

だが…罪もない草花を手にかけるのは忍びないよな~?」


「…え、えっと…サムちゃん??」


真意を測りかねているラァードル


イザマーレの本音に気づき、

ウエスターレンは笑いを堪えている

ベルデは何も言わず、視線も合わせないでいる


オジーとラァードルが困惑している中

すくっと立ち上がり、微笑むリリエル


「殿下♪意識のない『スプネリア様モドキ』では、楽しめませんよね?

ご本人の意識が戻られたのだから、あとは好きなだけ

本物のスプネリア様と楽しまれたら良いですよね」


リリエルの言葉に、同時に真っ赤になるラァードルとスプネリア


オジーがハッとして見つめ返す


「!!お妃様……貴女様なら、その植物の居場所が分かりますか!?」


「もちろんよ。お任せくださいな💕」




有無を言わさずテラスに歩み出て、リリエルがにこやかに宣言する


「良い子なら、正直に言いなさい💕

隠し立てするようなら、枯らしちゃうわよ💕💕💕💕」


髪の毛をふんわりさせた瞬間、

長い蔓に変化させ庭の全ての草花を絡め取って行く


「…さあ♪正直に教えてくださいな♪♪」


そんなリリエルの様子を見守りながら

植物エキスを上手く焙煎して有効利用できないか

コソコソと相談し合う副大魔王と紅蓮の悪魔、そしてベルデ

バサラも何気に聞き耳立てている


ますます青筋を立て、髪の毛の先端を針状に変え

自白を強要するリリエル


そんな花の権化の様子にポ~っとしながらも慌てふためき

事件の発端となった植物の正体を浮かび上がらせる草花たち

スポットライトを浴びたかのように

ひと際明るく照らし出される怪奇植物


「閣下💕当然、鎮めてくださいますよね?( ̄― ̄)ニヤリ」


「……はい(苦笑)」


心の奥で舌打ちしながらも、

リリエルからのおねだりに快諾するイザマーレ




刹那


夢幻月詠に紡がれる詠唱に

元凶となった植物が震え、鎮静化されていく


暴走し肥大化していた花が穏やかさを取り戻し

ほんの小さな可憐な姿に変化していく


長い耳が特徴の動物によく似た形から

BunnyEarsと呼ばれる食中植物だ



「…へえ、元はこんなに小さくて可愛い花なんだね」


「花は多くの場合、周囲にいる者の思惑に影響され

夜叉にも可憐な姿にも変化するものだ。分かるか?スプネリア」


ベルデの言葉を受けて、スプネリアに向き合うウエスターレン


「というわけで、ベルデ。この後はお前に任せたぞ。

『そして、良きに計らえ』だとよ♪これは、イザマーレからの伝言。

よろしくな(笑)」


「…了解。あとで、報告に行くよ」


ため息がちに、のんびりと応えるベルデ…



 
 
 

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