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旅楽団


彷徨う人間を誘い込む誘導係は妖怪ハヤレット

闇夜で整理券配り歩いては

「よく知る曲たちは表面上のお飾り。

真髄を知るには、このチケットが必須です。如何ですか?」

などと声掛けをして、多くの人間を虜にしていく


やがて、宮中に飽きたダニー・アントワネットも

たまに乗り込んでくる

「アタクシが曲を作って差し上げたわ。ありがたく演奏なさい」


集まった多くの観客の期待が膨らむ

まもなく、旅楽団の幕が上がろうとしていた

眩しい照明、途轍もなく大きい音、観客の熱い声援…


………


ハッと目を醒まし、呆然とするハルミちゃん

「お、ハルミちゃん。やっとお目覚めかい?」

近くに居たセルダがすぐさま声をかけてくる


セルダの目の前にあるモニターの上でお昼寝していたハルミちゃん

キョロキョロと様子を窺う素振りを見せる

気付いたセルダはハルミちゃんを抱き上げ、撫でてあげる


おしゃべり上手な魔界猫のハルミちゃんは、飼い主のセルダに

目一杯話しかけてくる


「アニョネ、イザマレシャン、デュバリエシャン、イタヨ」


「んん?どした?ハーちゃん💦

イザマレ?閣下のこと?デュバリエさん…」


ハルミちゃんの話しかけてくる内容に戸惑い

不思議そうに首を傾げるセルダを

後ろからニヤニヤと眺めているイザマーレとウエスターレン


実は、またたびの木の下で深い眠りについたままのセルダに見せた

副大魔王イザマーレ作の夢芝居だったのだ





「どうせなら、壮大で楽しい夢が良かろう?(笑)」

ニヤッと笑うイザマーレ

「そうだったんだ。だけどやっぱ、今の世界が一番じゃんね💕」


そんな彼らのやり取りを眺めながら

「デュ・バリエシャン、キレーダッタニャー…」

と名残惜しそうに呟くハルミちゃん


「閣下 お疲れさまです~(≧∇≦)」

その時、姿を現したリリエルを、ウルウルした瞳で見つめ

足元にすり寄り、撫でつける

「デュバリエシャン…」


「ダニーシャン、アタマヘンダッタ」

続いて呟く、この言葉には苦笑するイザマーレ

「ハルミちゃん、それは内緒な💦 それに、

リリエルのことはハルミちゃんにも譲らないぞ♪」


イザマーレの大人げない言葉に

ニャアと逃げ出しセルダにすり寄るハルミちゃんには

「閣下、ハルミちゃんいじめんといてよ」

と、セルダも苦笑い


「カッカ、ケチー…イザマレシャン、ステキダッタノニ…」

まだまだ名残惜しく、呟き続けるハルミちゃん


そんな可愛いハルミちゃんを抱っこして

「もう💕閣下はいつでも素敵に決まってるでしょ♪」

と優しく頬ずりするリリエル


「ニャウ💓」

チラッとイザマーレを見ながら、

リリエルの顔をペロペロして喜ぶハルミちゃん

ハルミちゃんの魔法で、デュ・バリエ夫人の姿に変身するリリエル


「デュバリエシャン…」

スリスリしながらうっとりするハルミちゃん




そこへ、最高魔軍へ激励のために姿を現したダンケルは

リリエルの姿に驚愕する

「なぜ、その姿に?!💢💢」


「ダニーシャン…アタマヘンジャナイネー」


「ハルミちゃん、しい~っ💦」


「シー?!…ジャ、リリエルシャンカシテ」


徐々にハルミちゃんに追い詰められる副大魔王

「本番中だけだぞ💦」


「リリエルシャン💕ゴロゴロ💕」

リリエルの腕の中でゴロゴロさせながら

ある歌のフレーズを口ずさむハルミちゃん


「ん?ハルミちゃん、それなあに?」

優しく問いかけるリリエルに、ハルミちゃんは嬉しくなって

もう一度繰り返してみる


「ツイニ ジユウニャー♪」


「…あっ それってもしかして…この歌じゃない?」

思い至ったリリエルが口ずさんだメロディは、

まさしくイザマーレ15世が歌い上げた「鷗」の歌だった


リリエルの歌う旋律にイザマーレも合わせ始める

すぐさまウエスターレンがコード進行をギターで奏で始め

ラァードルが粋なリズムを作り始める

セルダはその間に綺麗なギターソロを作り上げる

時空と世界を超えて、最高魔たちにより紡ぎあげられる音楽


それは、彼らが実際に手中に収めた自由への謳歌……





そして、最高魔軍の黒ミサステージの幕が開かれる

何百年も前に、同じように自由を求めながら、

悪魔たちとは程遠い悲劇しか生み出せなかった

某国の伝説に敬意を込めて

同じコスチューム姿で信者の笑いを誘う


構成員の頭上には、丁寧に小型化させた

それぞれの楽器が乗っている

歌い上げるイザマーレの頭上には、

イザマーレ15世と同じ黒鳥の羽毛に腰かけ

にこにこと微笑むリリエル…



Fin.





 
 
 

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