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朝の庭


元老院の朝の庭をゆっくり散歩するスプネリア


一時期、外に出る事を極端に恐れ、部屋に閉じこもっていたが

ラァードルの支えとプルーニャの誘い出しで少しづつ

外に出る事の恐怖を払拭していき、

庭を1人で散歩出来るまでに回復していた


庭に咲く綺麗な草花が朝露に濡れ朝日で輝いていた


綺麗に整えられた庭で、1魔の庭師が手入れをしていた

庭師悪魔の名はオジーといい、ラァードルも気に入っている

優秀な庭師だ。職人気質だが根は優しい


「オジーさん、おはようございます。朝早くからお花達のお手入れ

お疲れ様です。お花達もすごく悦んでいる様に見えます」


「…これはスプネリア様、おはようございます

何、儂は花達の状態を見て回っているだけですよ

こいつらが悦んでいるのは、貴女様がお元気になられたからです」


「そうですか?元気を貰っているのは自分の方です

いつもキレイなお花達の面倒見てくれてありがとうございます」


「元々は魔界に来られたばかりの頃のラァードル殿下のお心を

慰める為、イザマーレ様やベルデ様の提案でこの庭を造園されましたが

雷神界は花が咲き乱れていると伺っているので、ここはまだまだでしょうな」


「そんな事ないですよ。殿下もこのお庭凄く気に入っているみたいで

私がここに来る前によく教えてくれました。季節毎の花に溢れていて

その花達を世話する庭師が凄くて、花たちと意思疎通が出来てるって」


「ははっ!儂は単に花達が好きだから世話しているだけです

でも、ラァードル様にそう言って貰えるだけでも光栄ですな」


「……花や虫達と意思疎通が出来たら楽しいでしょうね」




庭の片隅に、誰も気が付かないほどの小さな植物が芽吹いていた

やがて、この植物がある騒動を引き起こす


魔界で芽吹く植物は皆、明確な意思を持ち合わせている。

そのため、魔力が強い者、意思疎通が出来る悪魔でなければ

世話する事が出来ない。

あるいは何かのきっかけで別の姿に化身する事もあるが、極めて稀な事だ


ある満月の夜、スプネリアはテラスで独り、月を見上げていた

ラァードルと一緒に過ごせるようになったものの

遠い昔に夢に描いた事が叶わないと思い、

時折月を見ては隠れて泣いていた


スプネリアが流した涙が偶然、その植物に落ちた


(……ナ、ナンダ……?コ、コノショッパクテ……

ス、スコシ……カ、カナシイ……?

コ……コ、コドク……?ナ、ナンダ……?)


やがて植物が少しずつ大きくなり、

小さな白い花を咲かせて甘い香りが漂い始めた

だが、その香りは植物に自我を与えるきっかけを生み出した者だけを

呼び寄せる為の甘い罠……


ある満月の夜、香りが一段と強くなった

その日はツアーの為にラァードルは留守にしていた。

スプネリアは早々に床に着いたのだが、何処からか甘い香りが漂って、

静かに寝ているスプネリアに纏わりついて離れない


甘い香りが全身を包み込むと、

操り人形の如く意識なくテラスに連れ出される

テラスの一角に立つと、どこからともなく植物の蔓が伸びて来て

スプネリアに巻き付き、血を吸いながら毒を注入していく……




 
 
 

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