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魔宮殿


闇の小部屋で、

羽根をもがれた憐れな天使、ラディアは迷走していた


イザマーレの屋敷で再会した、Anyeの言い放った言葉に動揺し

封印されていた記憶が次々に浮かんでは消えて行く


自分にとって、都合の悪い出来事は隅に追いやり

埋め合わせるように、拷問で体感したわずかな女の悦びを

抜け落ちた記憶に当てはめて、出来上がる不可思議な世界から

抜け出せずにいる


本音は、すべて忘れてしまいたいのだ


誰からも見向きもされず、相手にもされない

馬鹿みたいな一生から、早々にリタイアしたい


死んだら楽になれる…何もかも、存在すら消し去り

泡のように、最初からなかった事にしてしまえば良いのだ


だが、暴虐の限りを尽くし、卑劣なはずの悪魔たちは

自分に苦痛だけを与え続け、自ら息の根を止めるような行為を

決して許してはくれない


迷走の旅は、緩急織り交ぜて、闇にも、不快な組み合わせの

カラフルな景色にも、次々と場面が切り替わっていく


そこへ鳴り響く、女性の声


『愛とは…最も美しく、残酷なもの…一時の感情に流され

そんな不確かなものに縋って生きる…滑稽ね、ラディア…』



その時、室内にも関わらず、一陣の風が吹き込み、

風に煽られ、旅する途中で粉々になった樹木の破片が

ラディアの頭上に降りかかる


……!!!!……


無限に続くと思われた迷走の旅から、ようやく目を覚ました時

ラディアは突き動かされるように、結界を突き破り

逸る気持ちに追い立てられるように、舞い戻っていく


すべてを…忘れてしまいたかった…

そんな自分自身が許せず、怒り狂いそうになる


Anye…貴女との事に落とし前をつけて……

謝らなければ……


自分の犯し続けた罪の重さを……思い出すために……


Anye…私は貴女をつけ狙う天界の奴らから…守りたかったんだ……




覚醒し、自らが作り出した傀儡、フェアリー国へ急ぎ向かうラディア

それこそが…すべての罪をラディアになすり付け

小賢しく、その時を渇望していた神の思惑である事に

最後まで気づかぬまま…




 
 
 

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