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北の大地


ラディアの住んでいるところは魔界の北

商店街の近くに建っているボロアパート

ふと窓の外を見れば交代で監査をしている低級悪魔。

はじめは気になって仕方がなかった。出掛けるにせよ跡をつけ回る

しかし考えてみれば…魔界を混乱させようとした首謀者。

あの羽根をもぎった悪魔の仲魔が指示したに違いない…。

「……はぁ……」

ため息を付いてサッと角を曲がる。慌てて追いかけてきた低級悪魔

同じく角を曲がるとラディアが呆れて追っかけてきた悪魔を見つめる

「!?」

バツの悪そうにたじろいでラディアをみている

「…はい。お疲れ様です。貴方達も大変ね?」

ラディアは買い物した袋から飲み物を取り出し悪魔に渡した

「飲む、飲まないは自由よ。お疲れ様の意味を込めて…」

笑顔でその場を去った。


半年は付き纏いが続いたが、徐々に低級悪魔等も見張りをしなくなってきた。

悪さをすれば即抹消するのだろう。放置する事にしたのか?

ラディアはそんなことを思いふと笑ってしまった。もう、そんな気力もない。


だが…ずっと自宅に引きこもっているのもつまらなくなり

ラディアは行動を起こした


商店街で働き始めたのだ。

誰もラディアの正体など知らない悪魔ばかりで都合も良かった。

黒髪を一本に縛り商店街の悪魔不足のお店で品出しなどを担っていた

同僚の仲魔もでき、休まず働いていた。


「ラディア知ってる?この商店街にあの、副大魔王様が

所見しに来るらしいわよ💕もう〜見たこともないからお会いしたいわ💕」

同僚が興奮して話しかけてきた


ラディアは背筋が凍るような感覚に見舞われたが、

同僚は全く気が付かず話を続ける




「それに💕どうやらこの女性も連れてくるらしいのよ✨

羨ましいわね🌸将来は妃候補にもなってるんですって✨

…あんなに敵対していたのに😊」


雑誌を広げその女性を指差す

「………え?……」

写真を見て驚いた…

あの羽根をむしった憎き悪魔の横でAnyeが微笑んでいる写真だった…。

愕然と見つめることしか出来なかった


「ほらほら😅2魔とも💦お仕事しなさい😁嬉しいのは分かるけど…」

店長が苦笑いしながら話に入ってくる


「あ、そうだ!いつ来られるんでしたっけ?」

同僚はウキウキしながら店長に問いかける


「急遽なんだけど…明日来ることになったみたい」

店長は小さな声で言った

「まだナイショだけども…商店街のお店の従業員とも

お話されたいって言ってたから、目の前で会えるわよ💕」

小さな声で言っている割には嬉しそうだ。


「ラディアさんもここで働いてるんだから参加しなくっちゃね💕

こんなチャンス2度とないかも✨」


「……は、はぁ…ですが…私は新米なので…先輩方で会って来て下さい💦

お店の留守番していますので💦」


「まぁ明日気が変わったら一緒に会いに行こうね💕」


……冗談じゃない。誰が会うものか💢それに…Anye…

何故あの悪魔と?!あり得ない。マジに考えられないわ💢

どうかしているわ💢友人が死にそうになったのを目の前で見てたのに…

よりによってあの羽根を引きちぎった悪魔と💢💢💢


苛つく気持ちを抑え引きつり笑いをして仕事に戻った




…翌日

ラディアは普通に出勤をして仕事を始めていた。

同僚や先輩たちは魔界のNo.2に会える事に興奮冷めやらず

仕事もそっちのけで到着を待っていた。


遠くで騒がしくなった。

どうやら商店街にあの悪魔とAnyeが到着したらしい。

「キターーー!どうしよう!ドキドキする〜💕」


「いってらっしゃ~い🎵私は店番してまーす」

ラディアは手を振り同僚や先輩を送り出す


そして…ラディアは瞬間移動して商店街の外れにある森の中へ移動していた。

静かな森の中に湖があり、仕事の休み時間によく利用している場所だった。

木と木の間にハンモックを出し、横になって時間を潰していた

ちょっと魔力を出すとあの光の悪魔のオーラを感じる事が出来る。

商店街にオーラが消えたら戻ろう。それまでお昼寝タイム…

ラディアは爆睡し始めていた…



結構時間が経った。やっと副大魔王は商店街から去ったらしい。

オーラが完全に消えていた。


ラディアは再び仕事場に戻る。

案の定、周りは興奮の坩堝であった。


「店番有難う〜😭😭😭会えて話もできたぁぁ!」

涙ながらに興奮してラディアに抱きつく

「あ…😅😅😅良かったですね💦」

引きつり背中をポンポンする。

「でも…副大魔王様の横に居た彼女…何だか誰かを探しているようだった…

キョロキョロしてたわね🤔」

…Anyeが私を?何でまた…見付けた所で話すこともない…

「…へぇ…誰かを探して見付からなかったんですかね?」

わざとらしく聞いた…


「帰る時も寂しそうな顔してたんだけど…

副大魔王様が気を遣ってらっしゃったわ…流石よね💕」

一瞬ムカッと来たが引きつり笑いをして話を聞いていた



そして時が経ちラディアの仕事仲魔が

最近建ったばかりの魔界美術館の話で花を咲かせていた。

聞けばどうやら大魔王が趣味で建てたらしく見所も満載だと話してきた。

全く興味がわかず、とりあえず話には入って聞いていた。


話を聞いているうちに少しは興味を示すラディア

仲魔から一緒に行こうと誘われるが…


元々は大魔王を攻撃しようとした首謀者…

やんわりと断っていた。しかし…ある話が引っ掛かった


展示会の中にクリスタルの壁の部屋がある

綺麗な薔薇と共にある翼が飾ってあると…


「…翼…って??」


「凄く綺麗なのよ✨汚れもなく光ってた。

大魔王様が特にお気に召しているらしいのよ

夜になれば満天の星空に輝く翼が人気スポットみたい」


「……へ…ぇ……そ、そうなんだ……💦」


複雑な顔をして居るところに店長がやってきた


「ほら💢いつまでも喋ってないで仕事しなさーい!」


ラディアと同僚は焦って仕事を始めた


「ラディアさん😤ちょっと来て」

店長から声が掛かる。ヤバい…こりゃ怒られるな…と

渋々店長の後をついて行った




ちょっと待っててと言われ、その場でドキドキしながら待つ


正直…こんなことで心がハラハラしている自分に苦笑してしまう

魔界を侵略しようとした過去が有るのに…

侵略を企てた時には後先すら考えなかった。

…途中までは計画通りに進んでいたから…


ふと思い出していると店長が戻ってきた。


「はい。これ」

差し出された封筒を受け取って中を見るようにと促される

中を開けてみるとチケットが入っていた


「仕事ばかりしていないで、たまには美術の鑑賞でもしてきなさい。

今や魔界で大人気のデートスポットになってるから

副大魔王様と妃候補の彼女もおいでになって、スクープされた所よ💕

貴女の好きな悪魔とでも行ってリフレッシュしてきなさい」


「……あ、有難うございます💦」

頭を下げて複雑な顔をしていたが何とかニコっと微笑んだ


帰宅してチケットを前にして悩んでいた

…自分のもがれた翼が展示されている…もう二度と生えてこない翼…

面白可笑しく展示されていたのなら絶対に行くつもりはなかったが…

そうでもないらしい…。


店の同僚から聞いた言葉が脳裏をよぎる


『大魔王らしい展示の仕方…綺麗だった』と


昼間は行くつもりはない。誰が来ているか分からない

そう思いながらチケットを大切にポケットに入れた




……真夜中……


ラディアは瞬間移動をして魔界美術館の中に入っていった。

所々に小さな灯りが付いている。誰も居ないはずなのに…

情報局の悪魔が監視していると分かりつつ、ゆっくりと進む


受付の前には大きな扉…結界も貼られている


しかし…受付の所に目を向けると

『訪問者の魔名を記載するように』と羽ペンと紙が置かれている。

訪問者の魔名がずらずらと並んで書かれていた。

中にはAnyeの魔名まで…


「……」


羽ペンを取り『Radia』とカタカナではなく書いてみる

ペンを置いた途端に結界は解かれ大きな扉が開いた


中に入っていくと大きな壁画が石に刻まれている

普通なら何が書かれているか分からない文字…ラディアは透視する


そこには…あの翼をもぎ取ったイザマーレの事が書かれている

未来の事が予言として書かれている。それも…Anyeのような事も書かれていた


読み終わり展示を観ながら進んでいく



大魔王の歴史やら戦闘服まで飾られている。


肖像画を見上げた。やはり大魔王は綺麗だった。

首謀者の情報を聞きだす為に抱かれた時は

全く顔すらも見られなかったし…興味すら沸かなかった。


そして…

一面クリスタルの部屋に足を踏み入れた




満天の星空に月明かりに照らされている翼


…やっぱり…私の翼だ…


近寄ってまじまじと翼を見る


むしられた翼…ふと痛みがラディアを襲う

腕を回し痛みを和らげる。


血塗れだったはずの翼…綺麗にされ薔薇に包まれていた。

よく見れば生えていたままの光り輝いている状態に自然と涙が溢れたが…

横に説明書きがあり目をむけると…


『副大魔王の戦利品。魔界を混乱させた首謀者の翼』

と書かれていて一瞬血の気が引くのが分かる


何故、処分しない?それも大切に飾っている…あの副大魔王が指示したのか?

見せ付ける為に?確か…Anyeも見ているはず…この翼を見て笑っていたのか?

敵だの何だのとか言っときながら副大魔王に愛されている。


…そんなものなのかな?


Anyeは気が付いていない。寂しい顔していても周りが必ず手を差し伸べる。

その証拠に副大魔王が実際に手を差し伸べた。


…結局は私だけ…


空回りして誰からも手を差し伸べられることさえない。

一名でこの魔界で生きていかなければならない…


だからこそしっかり足を地について生きなければならない…

辛くっても…何があっても…


「やっと来てくれたのだな…待っていたぞ…」

後ろから声がする…振り向くと大魔王が微笑んで立っていた。




無言で振り返り、ラディアは再び翼を見詰めていた


「綺麗な翼だな…。私の宝物だ」


意外な言葉に驚いてダンケルを見るが…


「は?…宝物だ…って…

ここに副大魔王様の戦利品って書いてあるんですけど?

どう見ても見せもんでしよ?宝物だったら見せないじゃないですか💢」


少しムッとして言ってしまった。


「…イザマーレにも反対されたが…私の意志だ。

情報局の連中はお前の居場所を特定しているが…

私の命を狙おうとしたお前の情報など、

本来は私の所まで詳しく話が回ってこない。

まあ、悪さをすれば直ぐに回ってくる話なのだが…」


やっぱりな……

思っていた通りだったと分かり、鼻で笑うラディア


「この魔界に来てからは全く動きがない。

真面目に働いてるそうじゃないか。

だからイザマーレにお前の様子を見に行かせたのだが…

オーラすら消して姿を現さなかったようだな。」


「……」


「Anyeと一緒にイザマーレが商店街まで行っただろう?だが…

雲隠れのように会わない。だから…この美術館に翼を出した

いつか来るのを待っていたのだ。

お前が働いてる店にチケットを送ったのも私の指示だ」


「……会ったら?抹殺しようとでも?」

「そのつもりは無い」




「あの…私、貴方様の命を狙おうとした首謀者ですが?

魔界に強制に連れてこられて、処刑されるどころか

…あんな事態になって…自爆したと思ったら生きていて…

これ以上生きていても辛いんですけど?

あの時も、可愛がられていた時も散々苦しみましたよ?

孤独と絶望で…とどめはこの翼?

一体私にどうしろと?ひたすら一名で苦しめと?」


「苦しんでいるのなら…私が癒やしてやろう。もうお前を一名にはしない」


「…言ってることが…分からないのですが…?」


「私の宮殿で一緒に暮らすがいい。部屋も用意もしてある」


「……はい。そうですか。(棒読み)と直ぐに言う訳ないでしょ💢

お断り致します💢何なのですか?藪から棒に💢」


「意地を張るな…ラディア。

お前がどれだけ孤独なのか、私は知っている。

意地を張ってないで私の胸に飛び込んでくればいい」


「……考えておきます💢

翼をむしり取った副大魔王様とやらだって反対されるでしょうから。

私はその方に会いたくもありませんし💢

Anyeだって副大魔王と一緒に…居て

メロメロな所も見たくもないですから💢すみません💢今日は失礼致します」


ラディアは一瞬にしてダンケルの前から姿を消していった



 
 
 

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