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料理教室


イザマーレの屋敷で暮らすようになり、一週間が過ぎた

いつもは学園との往復で忙しくしているが、今日は休日


イザマーレに出して貰った5着目の服に袖を通し、部屋に飾った

チューリップの花に水をやり、葉っぱを撫でていた


プライベートルームの中ですべて事足りるし、

イザマーレのいない部屋に行くのは怖くて、出歩くことはしなかったが

部屋の外からいい匂いがして、興味を持ったリリエルは

そっと廊下に出て、匂いの元を辿って1階まで降りて行った





「おや?リリエル様、どうなさいましたか?

何か、御用がございましたら伺います」


「…ランソフさん、このいい匂いは何ですか?」


「ああ、今、シェフがランチの用意をしております。

リリエル様、なにか軽いものでも作らせましょうか?」


「…!いつも美味しく戴いているお料理、

作ってくださる方がいらっしゃるんですね?

あの…もしお邪魔じゃなければ、

見せていただいても良いですか?」


「リリエル様…お料理に興味がおありのようですね。

かしこまりました。このランソフから

シェフを紹介させてもらいます。こちらへどうぞ…」


ランソフに連れられて、

キッチンの中に入れてもらったリリエル

ますます良い匂いが溢れていて、幸せな気分になる


「はじめまして、リリエル様。

お屋敷のシェフを務めます、オルドと申します。

ご挨拶が遅れて申し訳ありません。

以後、お見知りおき下さいませ」


優し気な目元で微笑むオルド。

確かな腕前には絶対的な自信を持ち

流れるような手捌きで、次々に料理を作り出していく



「こんにちは、オルドさん。

こちらこそ、よろしくお願いしますね。

いつも美味しいお料理、ありがとうございます。

あの…今は何を作ってらっしゃるの…?」


リリエルは目を輝かせて問いかける


「これは、パンを作っているのですよ。

この後、ランチにお出ししようと思いまして。」


生地をこねながら、オルドは答える


「…!…いつものあのパンですか?!

美味しくて、感動していたんです!

すっごく幸せな匂いなんですね。

オルドさんの魔法、凄いです!」





「クスクス…可愛らしい方ですね。今から成形するのですが

リリエル様、一つお作りになりますか?」


「!!…い、いいですか?嬉しい♪(≧∇≦)

お願いします!教えてください!!オルド先生!!!!」


リリエルの事を微笑ましく眺めるランソフとオルド。


その日のランチには、リリエルが手掛けたバターロールが並び

嬉しそうなリリエルの様子に、髪を撫でて褒めるイザマーレ


「そんなに好きなら、

オルドに教えてもらったらいいじゃないか?

休日だけなら、負担にもならないだろ?

上手くなったら、部屋の中に

お前専用のキッチンを作ってやるよ」


「本当ですか?!嬉しい……!

オルド先生、ご迷惑でしょうが、お願いします!」


……


リリエルの熱心さに感動したオルドは、レシピだけではなく

基礎知識や栄養学など、根本から正しく丁寧に教え

一か月後には、プロ並みの腕前を身に着けたリリエル


すでに妻という立場にも関わらず、

使用魔に過ぎないオルドを

心の師と仰ぐリリエルの振る舞いに、

屋敷中の使用魔が心の底から慕うようになった












 
 
 

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