涙の代償
- RICOH RICOH
- 2024年10月19日
- 読了時間: 2分
プエブロドラドの空気を一変させた事に全く気付かず、
リリエルに対する誹謗中傷を繰り返したことで、気分良く
すっきりした顔で、その場を立ち去ろうとしたアヤ
ふと顔を上げて、花のように綻ぶ
「イザマーレ様♪」
待ち構えていたイザマーレの元に近寄ろうとした
イザマーレは、その美しく整った顔を微動だにせず
口元に微笑を浮かべ、アヤを見ていた
アヤが駆けつけてきた瞬間、
黒塗りの口唇が静かに動き出す
ほんの少し開かれた口唇から、
恐ろしい程に澄んだ声が発せられた
……コキュウハトマリドウコウサンダイ……
……ヤガテホロブジメツハメツ……
その瞬間、アヤの足元から黒い影が浮かび上がる
夥しい無数の影が、アヤを取り囲み、追い詰めていく
取り囲んだ影が、アヤに向けて繰り返し罵り始める
それは、アヤ自身が周囲に向けて垂れ流した言葉の怨念
その呪いが自らに向かう毒となり、体内に蔓延り
アヤの身体を内側から食い尽くしていく
自ら発した言葉に捉えられ、呪縛され
最期には口さえ引き裂かれ、叫び声を上げる事すら許されず
消滅していった
その場には、ただひとつ、菖蒲の種が転がっていた
その種を拾い上げ、目玉蝙蝠に忍ばせる
それと同時に、裏で糸を引いていた黒幕のアジトが
一瞬のうちに消滅していた
(任務完了♪あとは、お前に任せる)
ウエスターレンの声が聞こえ、イザマーレは微笑を浮かべる
イザマーレは再び口唇を開き、詠唱を始める
先程とは異なる、美しく伸びやかな歌声
呪いの闇に覆い尽くされた大地に光が射し
気がつけば、もとの平和なプエブロドラドの風景に戻っていた
風がそよぎ、木々が揺れる
行き交う信者に、活気が戻る
(…ふっ、リリエルのおねだりだからな。仕方あるまい)
マントを翻し、イザマーレは瞬間移動で立ち去った……
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