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花の処刑


天界でLilyelの受ける仕打ちを透視しながら

怒りがこみ上げる。その度に、ヨッツンハイムの中に

イザマーレの最大級のエナジーが蓄積されていく


執拗な凌辱の果てに疲れ果て、泣き濡れながら

眠りにつくLilyelを見れば、慈悲の感情を取り戻し

持て余した余暇に 本音を吐露するだけの日々


そして、ついにその時が訪れる


刹那―


森羅万象のオーラが怒りに満ち溢れ

イザマーレにより強い魔力を注ぎ込む

理性を完全に失ったイザマーレは、

自身の解き放つ炎に身を焦がしながら爆ぜる


一度入り込めば最後

どんな力でも脱出する事など不可能とされたヨッツンハイムに

亀裂が生じ始める


その時


魔界の魔宮殿に可愛げもなく鎮座したまま

微動だにしなかった宝剣が

己の意思で飛び立ち、時空の狭間ヨッツンハイムに突き刺さる


内側からのイザマーレのエナジーと宝剣の力が合わさり

忌々しく覆い続けたヨッツンハイムの壁を一瞬にして破壊した




空前絶後の所業をやってのけたイザマーレだが

その胸に去来するのは、Lilyelの悲惨な末路


悲嘆にくれる中、視線の先に力を貸した宝剣を捉える


「…そなたのお陰か。どうせなら、もう少し早く

力を発揮したらどうなのだ……?」


思わず愚痴を零したくなるのは、我儘だろうか…


…いや、欲張り王子だな♪…


脳内で勝手に再生された紅蓮の悪魔の声に

ようやく笑みを浮かべるイザマーレ


フッと息を吐き、改めて自身を鼓舞させていく


「おい。大事な局面で大遅刻という大失態をやらかしたからには

その責任を背負い、吾輩に従え。お前に、その意思はあるか?」


イザマーレの問い掛けに、鈍色の宝剣が黄金に変化していく


その光景に、ある御方の姿を思い浮かべた

あの日、イザマーレを子羊のような目で見つめた闇の存在

臣下である自分に全てを託され、その後の統治に尽力し

イザマーレの帰還するべき場所を守り続ける、魔界の皇太子ダンケル…


「! …なるほどな。そう考えると、絶好のチャンスではないか。」


ヨッツンハイムの中で無暗に呟き続けた本音の数々を

宝剣に集約させ、自身から取り出した魂の一部と混ぜ合わせ、

言霊で命を吹き込んでいく

次々と変化を繰り返し、やがてひとつの姿となる


―大天使ミカエル誕生の瞬間だった




 
 
 

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