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Prologue 


十万年前

この世の安定とバランスを図るため

雷神夫妻が皇太子を魔界に留学させ

妃の花の種を魔界に蒔いたすぐの頃


やがて根付いて花開き、光の悪魔に愛される百合の花

魔界は刹那の愛と希望に満ちていた


産みの母である雷帝妃を、羨望と憧れのまなざしで

見つめていた存在…それが、風帝妃だ


雷神帝と確かな愛で結ばれ、いつも穏やかに微笑む雷帝妃に

心のどこかで対抗心を燃やし、時には嫉妬に狂いながらも

彼女の愛情から離れがたく、いつも寄り添う風帝妃


ライバルのような、親友のような……


雷神夫妻の愛息子を魔界に長期留学させるというニュースは

風神界もすぐに知る事となる

雷帝妃の格に少しでも近づきたい風帝妃は、

帝との間に生まれたばかりの皇女を天界に派遣させるよう、頼み込む


全知全能の神ゼウスに見初められ、側室になれば

風神界と天界の繋がりもより強固なものになる


幼い皇女は、将来を約束されながら、ただ朧気にその順番を待つ

そこに自身の意思はなく、ただ、時折見上げる空の青さだけが

彼女の唯一のお気に入りだった


各界から召し上げた女を、骨の髄までしゃぶりつき

使い物にならなくなれば人間界に捨てるゼウス

ついに、皇女に順番が回りそうになった直前、

ヨッツンハイム事件が起こり、Lilyelが拘束される




Lilyelの気高さと美貌、すべてに惚れ込んだゼウスは

ただひたすらLilyelに溺れ、凌辱を繰り返す


Lilyelが事切れた場合に備え

常に控えの間に待機させられていた皇女


そこで行われていた実態を目の当たりにして

恐怖と絶望、次は自分が同じ目に遭うという不安を

抱かずにはいられなかった


どんなに辱めを受けても、瞳に光を失わず

ゼウスに抗い続け、心身ともにボロボロになっていくLilyelに

見張りの目を盗んでは、震える手で傷口を手当てしていたのも彼女だ


それは、Lilyelへの憐れみなのか

自分に順番が回らないための自衛だったのか……


やがて絶望の中に怒り狂ったLilyelが磔にされ、処刑された瞬間


ゼウスを見限った風神帝は、皇女をゼウスから引き離し

生まれ故郷に連れ戻した


結果として、皇女はLilyelの犠牲に守られ、

最悪な事態だけは免れたのだが、心に負った傷は甚大だった

食事さえ受け付けず、やせ細り、最期は風神夫妻に見守られながら

息絶えた


元はと言えば、己のちっぽけな自己顕示欲から招いた悲劇に

落ち込み、苛立ち、暴走する風帝妃



その頃、思いもよらないニュースを耳にする

事件で一番の被害者となった雷帝妃の娘、Lilyelの魂を浄化させ

必ず取り戻そうと画策する、光の悪魔…




手を取り合い、祈りを捧げる雷神夫妻の横で

そっと見守っていた風帝妃。


イザマーレが切り離し、killからダイヤに変えたLilyelの結晶に、

皇女の忘れ形見である花の種をオーラに変え、振り撒いた。


かくして地球に、風帝妃の性格をそのまま引き継ぐダイヤと

一度は命を落とし、そのまま人間として生まれ変わったバナトラ


ふたつの薔薇が誕生することになる


雷帝妃への執着を捨てきれず、暴走を繰り返しながらも

誰よりも強い愛憎を持ち続けた風帝妃のごとく、

切り離された結晶となっても、

生れ落ちる瞬間までLilyelに寄り添い続けたダイヤ


この世に生を受けたならば、必ず守り通して見せる

そんな信念を持ち続けたからこそ、誕生を許されたのだ


そして、常に執拗な悪意に晒されながら、

目の前に患者がいれば、救いの手を差し伸べるバナトラは

自身が唯一、心を癒された青空を今も愛し続けている…


ともに、最高魔軍の信者として、人間界にいたリリエルに出会う事で

Lily‘sの一員となり、光の愛に触れることを許された


遥かな時空を超え、かつて愛しきれなかった実の娘と

再会することとなった風帝妃


すべては…光の悪魔のたくらみ…






 
 
 

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