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prologue~館~


koji事件の余波で、生き血祭りの舞台となった洞窟の中で

イザマーレに連れ込まれ、数日間過ごしていたリリエル


しばらく涙は止まりそうになかったが、

それではいつまで経っても解放されないと、

何とか泣く事を我慢した


何より、自分以上に心を痛め、震える悪魔を見過ごせるはずもなく、

その想いを受け止めるだけで精一杯だった

表面上は、いつものように素直に抱かれるリリエルだが、

心の鍵は一向に開かず、焦燥感が増すばかりのイザマーレ


だからと言って、何の理由もなく

自分の欲だけでこの洞窟の中に拘束し続けても

却って嫌われ、見限られるだけだ


ギクシャクした状況のまま、屋敷に戻るが

当然、いつもの光景とは程遠く、悩ましい日々が続いていた


プライドと責任感については、イザマーレと同様に持ち続けているリリエル

昼間の時間は、いつも通り、家事や公設秘書の仕事をバリバリとこなし

イザマーレやウエスターレンに向ける気遣いも、いつも通りだ


だが…


夕方、キッチンに降りて、夕食を作り終えると

イザマーレとウエスターレンが食事している傍らで、

身支度を整えるリリエル


「…では、行ってまいりますね。明日の朝、戻りますので」

そう言い残して、有無を言わさず隣の館へ向かう




「…こんばんは。ソラちゃん、お邪魔します♪」

「あっ…リリエルちゃま~(≧∇≦)」


姿を現したリリエルを見るなり、駆け寄ってきて抱きつくソラ


「(´∀`*)ウフフ…ソラちゃん。良い子ね。

いらっしゃいな。絵本を読んであげる」


「わーい(*^▽^*) あ、あのね…

ソラ、リリエルちゃまのおうたもききたいの

……だめ?///////」


上目遣いで見つめてくるソラが可愛くて

抱きしめるリリエル


「勿論、良いわよ♪ソラちゃんも一緒にね♪」



「……」


リリエルが屋敷を出て数分も経たないうちに

隣の館から明るい声が聴こえてくる


そう!


屋敷に戻ってから、イザマーレと寄り添う夜の時間を避けるように

ソラの館で過ごすようになっていたのだ


毎晩、肩を落とし、ため息をつくしかないイザマーレ


「イザマーレ、そんなに落ち込むな。リリエルの気持ちくらい、分かるだろ?」


見かねたウエスターレンが励ますが、状況は一向に好転しない

隣の館で過ごすリリエルの様子を、透視して見守る事しかできない




「…ねえ、ソラちゃん。

私って、本当に悪い子よね。我儘言って、

命よりも大切な、大好きな閣下を困らせているの

だけど…」


そんな風に呟きながら、リリエルは涙を浮かべる


「リリエルちゃま…?泣かないで…」


ソラは慌てて立ち上がり、小さな手でリリエルの頭をポンポンと撫で

必死に慰めようとしてくれる


「リリエルちゃまは、かっこいいサムちゃまが大好き…

ソラも、かっこいいサムちゃまとレンちゃまが大~好き(≧∇≦)」


「…そうだね。一緒だね、ソラちゃん…」


素直に、リリエルの心情に寄り添ってくれるソラの優しさが嬉しくて

ギュッと抱きしめる


「…ありがとう、ソラちゃん。可愛いソラちゃんを見てたら

大好きな閣下に会いたくなっちゃった(*´艸`*)」


「…わーい♪いつものリリエルちゃま(≧∇≦)

ソラとも、また遊んでね♪♪」


少し、元気を取り戻したリリエルが嬉しくて

ますますご機嫌になるソラに後押しされ、屋敷へ戻る


キッチンにある扉から、そっと中に入った途端

リビングで待ち構えていたイザマーレに抱きしめられる


「リリエル……」





「…閣下…ごめんなさい」


腕の中で泣きだすリリエルの髪を撫で

心の底からホッとするイザマーレ


「…分かっているから。お前の気持ちは…すまなかった

悪いのは吾輩だ。お前は何も悪くない。

だから、もうどこにも行くな…」


言葉に詰まり、誤魔化すように口唇を重ねる


(お前の望む、カッコいい王子になってやるから…)


伝わる思いに、リリエルも涙が止まらなくなる


そのまま抱き上げ、部屋へ向かうイザマーレ


扉が消えるのを見届けながら、

ニヤリと笑みを交わすウエスターレンとソラ…




「リリエル、ちょっと良いか」


あの日から、何とか自分のモヤモヤだけを堪え

拗ねるのも止め、これまでのようにイザマーレの心の安寧だけを

心がけていたリリエル


その日もいつものように朝食を済ませ

家事タイムに突入した時だった


「あ、長官……はい。プエブロドラドへ向かうのですね。

行ってらっしゃいませ」


声をかけてきたウエスターレンに振り向き、

リリエルはいつものように送り出そうとする



「…どうした。今回はお前、まだイザマーレのこと

許せてないんだろ?」


「!……」


ウエスターレンの言葉にハッとして、黙り込むリリエル


「私が悪い子なのは分かっているのです。でも…

こんなに閣下の事が解らなくなってしまったのは

初めてで………」


「イザマーレは反省してる。

お前がそんな気持ちになるのも当然だと解っている。

まあ、今回は、それに気づくのが遅かったよな」


「…//////」


ウエスターレンの砕けた言い方に、涙ぐむリリエル




「やっぱり、私は閣下にカッコイイ王子様を

求めすぎなんでしょうか。だけど……」


俯いたままのリリエルの髪を撫で、ウエスターレンはニヤッと笑う


「(笑)お前だって、カッコ悪い相手に何度も命を捧げたいとは

思わないよな。愚痴を零したくなって当然だ。その権利があるのは

お前だけだから」


「長官……///」


「だが、まあ…お前も少しは自覚した方が良いな。

カッコイイ王子に寄り添う姫君は、やはり極上な宝物って事だ

あまり無防備過ぎるのも、どうかと思うぞ?」


「!……///////」


「何せ、あいつは欲張り王子だからな♪」


ようやく顔を上げいつものように微笑むリリエルを見届けて

ウエスターレンはプエブロドラドに向かう



「…よし☆彡こうなったら、美味しいお食事作ってあげなきゃ」


その後の家事を手早く済ませ、市場に買い出しに向かうリリエル

心の整理がつき、久しぶりに晴れやかな表情を浮かべていた




さて


イザマーレとウエスターレンの愛の結晶ともいうべき庇護魔ソラが発生した事で

これまで以上に、屋敷に足蹴く通うようになったダンケル

すっかりメロメロになり、ソラを抱きしめ、ご機嫌だ


「おい、ベルデ。ソラちゃんをもっと丁寧に扱わんか」


「はあ…ダミってば…もうそれ、何回目だと思う?」


「ん?」


「今のでちょうど、666回目だよ。もう…

ちゃんとリリエルちゃんから直々に教えてもらってるから

大丈夫だよ。謝れよお…」



当然ながら公務に支障をきたし、イザマーレ達は相変わらず忙しい日々。

ソラに寂しい思いをさせないよう、気にかけてはいたが

杞憂に終わりそうだ


もちろん、またとない機会に

屋敷に通うのはダンケルだけではない


あみだくじで平等に順番を決めて、交代で会いに来る構成員

Lily‘sは、リリエルの補佐をしたいと競うように願い出て

可愛いソラとの触れ合いを求めて、会いに来ては癒されて帰る

いつしかそれが、当たり前の日常になっていた


そんなある日の事


ソラのシッター当番のプルーニャは、

ハルミちゃんと一緒に館に訪れていた




「あら♪今日はプルーニャ様なのね。ありがとう。

よろしくお願いしますね(*´艸`*)」


「お任せください!!お邪魔しまーす♪♪」


直接館に向かっても良いのだが、リリエルの顔も見たいプルーニャは

わざわざ隣の屋敷の扉を叩き、キッチンの奥にある扉から館へ向かうのだ


「…どうもありがとう♪後程、お茶をお持ちしますね。」

プルーニャを見送りつつ、リリエルは残りの家事に取り掛かる


「あ!!プルーニャちゃまとハルミちゃん(*^▽^*)♪♪」


ハルミちゃんをナデナデしてニコニコとご機嫌に遊んでいるソラを

プルーニャも微笑ましく見守っていた


しばらくすると、お茶とお菓子を持ってリリエルがやって来た


「どうもありがとね。お茶にしましょう♪

ソラちゃん、こちらにいらっしゃい。プルーニャ様も、どうぞ~」


「ありがとうございます!戴きます!!」


元気よく返事をして、一緒にソファに座り歓談しているが

何となく元気がない様子のリリエルが気になるプルーニャ


(…思い過ごしちゃうやろか…そんなわけない…)


ソラと遊んでいたハルミちゃんも、終始、リリエルの膝に乗り

ゴロゴロと喉を鳴らしてしきりにスリスリしている


ソラは、リリエルのすぐ横に立ち

リリエルの髪を撫でながら、三つ編みにして遊んでいる




「(´∀`*)ウフフ…可愛くしてくれているのね。ありがとう♪

そろそろ、屋敷に戻らないと…

プルーニャ様、ハルミちゃん、後は、よろしくね。

ソラちゃん、またね」


「はぁ~い(≧▽≦)」


ソラの元気な可愛い声に送り出され、リリエルは館を後にする






 
 
 

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