top of page

サムパラガスの苦悩


芝居に私情は厳禁。

それは、俳優の教科書の1ページ目に書かれている事だ。


だが、大スターの名声を欲しいままにしているにも関わらず

サムパラガスは、ある芝居のシーンになると複雑な心境になるのだ


「キ・エーラ♪ ダンケルタイガー様…」


ふわふわ真っ白な毛並みで

天真爛漫な笑顔を向けるリエドルボーン


相手役を務めるサムパラガスに抱きつきながら

彼女は自分ではない名を愛おし気に呼ぶのだ


時々、役ではなく本心で、台本にあるセリフを伝えてみる

「この胸のときめきが分かるだろうか…」


だが、サムパラガスの事を、役の「ダンケルタイガー」として振舞う

リエドルボーンのつれない態度に、本気で気落ちしてしまうのだ


そんな時、リエドルボーンがそっと近づいてきて、

役ではないサムパラガス自身に囁きかけてきた


「あの…ダンケルタイガーをいじり倒すのも飽きてきちゃったの…

それに、せっかくのサムパラガス様との共演だから

愛の旋律も歌いたいの…」


リエドルボーンのひらめきに任せ

2猫による愛の歌唱は、大喝采の中、フィナーレを迎えた



「リエドルボーン…どうだ?この後、食事にでも…」

「嬉しい///喜んで♪♪」

大団円を迎えた2猫は、夜のデートに繰り出す





「リエドルボーン、一度聞いてみたかったんだが…

ステージ上で言うあの台詞は…」

「…えっ」

「///いや、良いんだ。忘れてくれ💦」

目を逸らしたサムパラガスに、抱きついてきたリエドルボーン

「実は…あの時だけ、サムパラガス様に向けて言ってるのですよ♪

女優らしからぬ事と叱らないでくださいね///////」


「!…リエドルボーン…💕」

「サムパラガス様…💕💕💕」


ふわふわ真っ白な毛並みを抱きしめる…


「それと……」

深く重ねていた口唇を少し離し、呟くサムパラガス


「///…サムパラガス様?」

うっとりと身を委ねていたリエドルボーンは

瞳を薄らと開き、不思議そうに首を傾げる


「今宵のようなストーリーではなく、

また、相手がダンケルタイガーでもなく、吾輩だったら…」


「!…サムパラガス様?」


「いや、良いのだ💦 そんな事は起きない方が良いからな」


「もし…そのような事があれば、リエドルボーンは決して

サムパラガス様を見捨てて逃げ出すような真似はしません。

海の藻屑となったとしても……( ;꒳; )」


「リエドルボーン…安心しろ。お前とは決してはぐれたりしない」

「サムパラガス様…💕💕💕」


再び深く絡み合う2猫……





長身で麗しい身のこなし。

豊かな毛髪を惜しげもなく飾り立て、現れたのは

つっぱり猫のバサラムタガー。アイドルのような甘いマスクで、

雄雌関係なく、彼の周りは取り巻きだらけ。


賑やかでうるさいだけの彼らは、迷惑モノを気どり、

今日もご機嫌に大名行列を繰り返す。


眠りを邪魔されるプルエニドッツやサムパラガスは、

彼が現れるといつの間にか姿を消す


だが、この日は様子が違った。


いつも怪盗猫のリエリーザ&イザマージェリーの現場に

決まって姿を現す警察猫のエストラップが登場したのだ。


紅蓮の制服を纏い、長い脚を惜しげもなく見せつける彼の姿に

土管に佇むサムパラガスが目を見開き、うるうるした瞳で眺めている


「おい!バサラムタイガー、いつもうるせーぞ!!

…いつもなら取り締まってやるところだが、今夜は非番だ。

この俺様の喉の渇きを潤してくれる雌猫はどこに居る?」


エストラップの言葉に、歓喜に湧き立つ雌猫たちの中で

控え目だが熱い眼差しで見つめる1猫に近づく


「エレジア、つき合え。お前が相手だ」

「…はぁ?嘘だろ?…ってか、冗談はやめてくれ💦」


思いがけず、呼ばれたエレジアは慌てふためき

ドラム缶に佇む猫を気遣うように見遣る


「…今夜はあの尻尾野郎が相手か…ふんっ…」

サムパラガスは、なぜか悔しそうにその場を立ち去る





その場では視線を交わす事すらしなかったが、

雌猫と事を終えた後、

月光の下で逢引きしているサムパラガスとエストラップ


少し焼きもちを焼いて、プンスカしているサムパラガスに

そっと近寄り、片耳を甘噛みするエストラップ


「お前を相手にしなかったのは、

そうすれば、お前からの熱い視線を独り占め出来るだろ?💕」


「エストラップ💢💢だからって意地悪するな!!」


瞳いっぱいに涙を浮かべて怒鳴るサムパラガス


「仕方ないだろ?お前に意地悪できるのも

俺様だけの特権だからな♪」


エストラップは優しい笑みを浮かべ

甘えん坊で泣き虫の恋猫を抱きしめる


その2猫の様子をうっとりと眺めているリエドルボーン


賑やかな喧騒で台無しにしようとするバサラムタガー達を見かけると

しなやかな尻尾を鞭に変え、

「分かってるわね?邪魔するなら許しませんわよ♪」

と悪女の睨みを利かせる




 
 
 

最新記事

すべて表示
校長のサロン

「理栄先生!!本当ですか…!!」 噂を聞きつけたスプネリアとリリア、ムーランの3名が駆けつけると 同じように見に来ていたプルーニャ、ダイヤと出くわす 「あら?早速、いらっしゃったわね♪お疲れ様です♪」 理栄がニコニコと微笑んで出迎える...

 
 
 
魔鏡学園

「イザマーレ、お帰り…っておい」 副理事長室で待ち構えていた守衛ウエスターレンが、一瞬固まる 「…浮気か?」 ニヤッと目を細めるウエスターレン 「ウエスターレン…馬鹿な事を言うな」 言葉とは裏腹に、静かに笑みを浮かべるイザマーレ 「あ、あの…」...

 
 
 
交錯

生徒会室で眼光鋭くモニターチェックしながら 紫煙を燻らせていたウエスターレン 突如、一番手前にあるモニターが光を放ち、画面にノイズが走る すらっとした指先を巧みに動かし、相手からのメッセージを受け取る 「…マジか。了解した。」 軍服を着こみ、すぐさま部屋を後にする …………...

 
 
 

Comments


©2022 by 里好。Wix.com で作成されました。

bottom of page