サムパラガスの苦悩
- RICOH RICOH
- 2024年10月28日
- 読了時間: 4分
芝居に私情は厳禁。
それは、俳優の教科書の1ページ目に書かれている事だ。
だが、大スターの名声を欲しいままにしているにも関わらず
サムパラガスは、ある芝居のシーンになると複雑な心境になるのだ
「キ・エーラ♪ ダンケルタイガー様…」
ふわふわ真っ白な毛並みで
天真爛漫な笑顔を向けるリエドルボーン
相手役を務めるサムパラガスに抱きつきながら
彼女は自分ではない名を愛おし気に呼ぶのだ
時々、役ではなく本心で、台本にあるセリフを伝えてみる
「この胸のときめきが分かるだろうか…」
だが、サムパラガスの事を、役の「ダンケルタイガー」として振舞う
リエドルボーンのつれない態度に、本気で気落ちしてしまうのだ
そんな時、リエドルボーンがそっと近づいてきて、
役ではないサムパラガス自身に囁きかけてきた
「あの…ダンケルタイガーをいじり倒すのも飽きてきちゃったの…
それに、せっかくのサムパラガス様との共演だから
愛の旋律も歌いたいの…」
リエドルボーンのひらめきに任せ
2猫による愛の歌唱は、大喝采の中、フィナーレを迎えた
「リエドルボーン…どうだ?この後、食事にでも…」
「嬉しい///喜んで♪♪」
大団円を迎えた2猫は、夜のデートに繰り出す
「リエドルボーン、一度聞いてみたかったんだが…
ステージ上で言うあの台詞は…」
「…えっ」
「///いや、良いんだ。忘れてくれ💦」
目を逸らしたサムパラガスに、抱きついてきたリエドルボーン
「実は…あの時だけ、サムパラガス様に向けて言ってるのですよ♪
女優らしからぬ事と叱らないでくださいね///////」
「!…リエドルボーン…💕」
「サムパラガス様…💕💕💕」
ふわふわ真っ白な毛並みを抱きしめる…
「それと……」
深く重ねていた口唇を少し離し、呟くサムパラガス
「///…サムパラガス様?」
うっとりと身を委ねていたリエドルボーンは
瞳を薄らと開き、不思議そうに首を傾げる
「今宵のようなストーリーではなく、
また、相手がダンケルタイガーでもなく、吾輩だったら…」
「!…サムパラガス様?」
「いや、良いのだ💦 そんな事は起きない方が良いからな」
「もし…そのような事があれば、リエドルボーンは決して
サムパラガス様を見捨てて逃げ出すような真似はしません。
海の藻屑となったとしても……( ;꒳; )」
「リエドルボーン…安心しろ。お前とは決してはぐれたりしない」
「サムパラガス様…💕💕💕」
再び深く絡み合う2猫……
長身で麗しい身のこなし。
豊かな毛髪を惜しげもなく飾り立て、現れたのは
つっぱり猫のバサラムタガー。アイドルのような甘いマスクで、
雄雌関係なく、彼の周りは取り巻きだらけ。
賑やかでうるさいだけの彼らは、迷惑モノを気どり、
今日もご機嫌に大名行列を繰り返す。
眠りを邪魔されるプルエニドッツやサムパラガスは、
彼が現れるといつの間にか姿を消す
だが、この日は様子が違った。
いつも怪盗猫のリエリーザ&イザマージェリーの現場に
決まって姿を現す警察猫のエストラップが登場したのだ。
紅蓮の制服を纏い、長い脚を惜しげもなく見せつける彼の姿に
土管に佇むサムパラガスが目を見開き、うるうるした瞳で眺めている
「おい!バサラムタイガー、いつもうるせーぞ!!
…いつもなら取り締まってやるところだが、今夜は非番だ。
この俺様の喉の渇きを潤してくれる雌猫はどこに居る?」
エストラップの言葉に、歓喜に湧き立つ雌猫たちの中で
控え目だが熱い眼差しで見つめる1猫に近づく
「エレジア、つき合え。お前が相手だ」
「…はぁ?嘘だろ?…ってか、冗談はやめてくれ💦」
思いがけず、呼ばれたエレジアは慌てふためき
ドラム缶に佇む猫を気遣うように見遣る
「…今夜はあの尻尾野郎が相手か…ふんっ…」
サムパラガスは、なぜか悔しそうにその場を立ち去る
その場では視線を交わす事すらしなかったが、
雌猫と事を終えた後、
月光の下で逢引きしているサムパラガスとエストラップ
少し焼きもちを焼いて、プンスカしているサムパラガスに
そっと近寄り、片耳を甘噛みするエストラップ
「お前を相手にしなかったのは、
そうすれば、お前からの熱い視線を独り占め出来るだろ?💕」
「エストラップ💢💢だからって意地悪するな!!」
瞳いっぱいに涙を浮かべて怒鳴るサムパラガス
「仕方ないだろ?お前に意地悪できるのも
俺様だけの特権だからな♪」
エストラップは優しい笑みを浮かべ
甘えん坊で泣き虫の恋猫を抱きしめる
その2猫の様子をうっとりと眺めているリエドルボーン
賑やかな喧騒で台無しにしようとするバサラムタガー達を見かけると
しなやかな尻尾を鞭に変え、
「分かってるわね?邪魔するなら許しませんわよ♪」
と悪女の睨みを利かせる
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