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出会い―光と魔猫―


リッチブリッジ…


魔界の東側に位置し、野生魔が多く棲息する地域

豊かな自然に恵まれた小高い山


山頂にある剥き出しの岩場にごろっと寝転がる悪魔

なにも考えず、ただボ~っとするだけのこの時間が

何よりのお気に入りだ


日が陰り、星が夜空を埋め尽くすまで

何時間でも居眠りをしていられる


だが…



ふうっとため息を付き、物憂げに起き上がる

そして、ひと言呟く


「…いつまで着いて来るの?暇なん?」




その声に反応し、背後で姿を現す黄金の怒髪天


「優等生のお坊ちゃんが、何の用?」

静かに笑みを湛え、振り返る


「ほう…この山は、お前の所有物なのか?

散歩をするのに、いちいちお前の許可が要るのか?」


問いかけに応じず、逆に問いかけてくる悪魔に

五感を研ぎ澄ませる


「…へえ…見かけと、噂で聞いていた印象とだいぶ違うじゃんね

ま、俺はもともと、噂なんか興味ないけど。」

そう言いながら、改めて向き合うセルダ


だが、相手は話をする自分など何の興味もないかのように

眼下に広がる雄大な景色を静かに見つめていた


「お前などに用はない。お前に着いて行ったというのも思い違いだ。

吾輩が散歩していた山に、お前が後から入って来たんだからな」


「…はいはい。もう分かったよ。屁理屈は良いから。」

思わず呆れて、天然無垢な笑顔を見せるセルダ


「吾輩はイザマーレだ。お前は…」

名を問いかけようとしたとき、わずかな波動を察知する


「あ~あ、ごめんね。時折あるんよ。元々、喧嘩好きだし

仕方ないんだけどさ」




そう言いながら、鞭を一振りさせる

目にも見えぬ速さで空気を切り裂いた瞬間、

築き上げられる無数の亡骸


(校舎の屋上で無意味な企みを繰り返していた輩の残党か…)


セルダへの復讐。ついでに目障りな光の悪魔、イザマーレを狙う

犯罪組織とのつながりも、骸となったオーラから

全て読み取れる。


(これは…思いがけない土産になりそうだな♪)


無許可で1魔歩きをした自分に対し、眼光鋭く睨み付けるだろう

紅蓮の悪魔を思い浮かべ、そっと含み笑いをするイザマーレ


「…たしかに、腕捌きは大したものだな。だが…

お前のエレメンツは火炎だろ?なぜその力を使わないのだ?」


「…こいつらは俺の敵だから。俺がどうやって対処しようが勝手じゃんね」


「なるほど。ウエスターレンに聞いた通りの甘ったれだな」


「!! なんだと?!」


思いがけないイザマーレの言葉に、敵意を剥き出しに睨み付けるセルダ


「…心に浮かんだ通りの言葉を正直に口にする。

感情のコントロールも、まだまだその程度か」


「!!!てめえっ…」


怒りに任せ、目の前のイザマーレに向けて鞭を振り落とすセルダ

だが逆に、弾き飛ばされる


「!…お前」




振り向きざま、目を瞠るセルダ

襲いかかったイザマーレの前に立ち塞がる

紅蓮の悪魔……


「…副大魔王閣下。こんな僻地で如何なさいましたか?」


セルダの呟きには応えず、

後ろにいるイザマーレに、目を細めて顔を近づける


「俺様の監視網を振り切れるとでも思うのか?」


「ウエスターレン…吾輩は、猫と遊ぶのにも、お前の許可がいるのか?」


やや口を尖らせるイザマーレの頬を長い指先で挟み

さらに青筋を立てるウエスターレン


「良いか。お前の身体には、擦り傷ひとつ

付けることは許さんぞ。何度も言わせるな!!」


「やれやれ…吾輩、そんなにヤワではないと言うのに…

それに、お前への土産も手に入れたしな♪」


何を言っても屁理屈ばかりのイザマーレのお咎めは後回しにして

引き連れていた局員たちに襲撃魔の処理を指示し

残骸を燃やしていくウエスターレン


「…あまり、大袈裟にするなよ。お前の炎に焼き尽くされたら

再生することも出来ないからな。この場所の豊かな自然は

守ってやらないと」


「やれやれ。そう思うなら、

大人しくお利口さんにしていてくれ。

今はアイツがいないんだ。奇蹟を起こすことも叶わないからな」




ウエスターレンの言葉に、一瞬遠くを見つめ静かに微笑むイザマーレ


「だが、ウエスターレン。試してみないか?吾輩、お前のギターに合わせてみたいぞ」

「…副大魔王閣下の御所望なら。お安い御用だ♪」


刹那―


かつて、屋敷の中で歌い上げた旋律を歌い上げるイザマーレ

今は居ない彼女のフレーズを、ウエスターレンがギターでなぞっていく


「……!!…」


セルダの鞭で生じた衝撃で、手折れていた草花が息を吹き返す


初めて耳にしたイザマーレの謡と

ウエスターレンの奏でるギターの音色に衝撃を受け

空気が淀みなく澄み渡っていく様を見とれていたセルダ


「…やはり。お前の炎の餌食となったものを蘇らせるには

パーツが不足しているのだろう。仕方あるまい」


やや残念そうに呟く2魔の前で、立ち尽くしているセルダ


(…………)



 
 
 

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