出会い―光と魔猫―
- RICOH RICOH
- 2024年11月19日
- 読了時間: 4分
リッチブリッジ…
魔界の東側に位置し、野生魔が多く棲息する地域
豊かな自然に恵まれた小高い山
山頂にある剥き出しの岩場にごろっと寝転がる悪魔
なにも考えず、ただボ~っとするだけのこの時間が
何よりのお気に入りだ
日が陰り、星が夜空を埋め尽くすまで
何時間でも居眠りをしていられる
だが…
ふうっとため息を付き、物憂げに起き上がる
そして、ひと言呟く
「…いつまで着いて来るの?暇なん?」
その声に反応し、背後で姿を現す黄金の怒髪天
「優等生のお坊ちゃんが、何の用?」
静かに笑みを湛え、振り返る
「ほう…この山は、お前の所有物なのか?
散歩をするのに、いちいちお前の許可が要るのか?」
問いかけに応じず、逆に問いかけてくる悪魔に
五感を研ぎ澄ませる
「…へえ…見かけと、噂で聞いていた印象とだいぶ違うじゃんね
ま、俺はもともと、噂なんか興味ないけど。」
そう言いながら、改めて向き合うセルダ
だが、相手は話をする自分など何の興味もないかのように
眼下に広がる雄大な景色を静かに見つめていた
「お前などに用はない。お前に着いて行ったというのも思い違いだ。
吾輩が散歩していた山に、お前が後から入って来たんだからな」
「…はいはい。もう分かったよ。屁理屈は良いから。」
思わず呆れて、天然無垢な笑顔を見せるセルダ
「吾輩はイザマーレだ。お前は…」
名を問いかけようとしたとき、わずかな波動を察知する
「あ~あ、ごめんね。時折あるんよ。元々、喧嘩好きだし
仕方ないんだけどさ」
そう言いながら、鞭を一振りさせる
目にも見えぬ速さで空気を切り裂いた瞬間、
築き上げられる無数の亡骸
(校舎の屋上で無意味な企みを繰り返していた輩の残党か…)
セルダへの復讐。ついでに目障りな光の悪魔、イザマーレを狙う
犯罪組織とのつながりも、骸となったオーラから
全て読み取れる。
(これは…思いがけない土産になりそうだな♪)
無許可で1魔歩きをした自分に対し、眼光鋭く睨み付けるだろう
紅蓮の悪魔を思い浮かべ、そっと含み笑いをするイザマーレ
「…たしかに、腕捌きは大したものだな。だが…
お前のエレメンツは火炎だろ?なぜその力を使わないのだ?」
「…こいつらは俺の敵だから。俺がどうやって対処しようが勝手じゃんね」
「なるほど。ウエスターレンに聞いた通りの甘ったれだな」
「!! なんだと?!」
思いがけないイザマーレの言葉に、敵意を剥き出しに睨み付けるセルダ
「…心に浮かんだ通りの言葉を正直に口にする。
感情のコントロールも、まだまだその程度か」
「!!!てめえっ…」
怒りに任せ、目の前のイザマーレに向けて鞭を振り落とすセルダ
だが逆に、弾き飛ばされる
「!…お前」
振り向きざま、目を瞠るセルダ
襲いかかったイザマーレの前に立ち塞がる
紅蓮の悪魔……
「…副大魔王閣下。こんな僻地で如何なさいましたか?」
セルダの呟きには応えず、
後ろにいるイザマーレに、目を細めて顔を近づける
「俺様の監視網を振り切れるとでも思うのか?」
「ウエスターレン…吾輩は、猫と遊ぶのにも、お前の許可がいるのか?」
やや口を尖らせるイザマーレの頬を長い指先で挟み
さらに青筋を立てるウエスターレン
「良いか。お前の身体には、擦り傷ひとつ
付けることは許さんぞ。何度も言わせるな!!」
「やれやれ…吾輩、そんなにヤワではないと言うのに…
それに、お前への土産も手に入れたしな♪」
何を言っても屁理屈ばかりのイザマーレのお咎めは後回しにして
引き連れていた局員たちに襲撃魔の処理を指示し
残骸を燃やしていくウエスターレン
「…あまり、大袈裟にするなよ。お前の炎に焼き尽くされたら
再生することも出来ないからな。この場所の豊かな自然は
守ってやらないと」
「やれやれ。そう思うなら、
大人しくお利口さんにしていてくれ。
今はアイツがいないんだ。奇蹟を起こすことも叶わないからな」
ウエスターレンの言葉に、一瞬遠くを見つめ静かに微笑むイザマーレ
「だが、ウエスターレン。試してみないか?吾輩、お前のギターに合わせてみたいぞ」
「…副大魔王閣下の御所望なら。お安い御用だ♪」
刹那―
かつて、屋敷の中で歌い上げた旋律を歌い上げるイザマーレ
今は居ない彼女のフレーズを、ウエスターレンがギターでなぞっていく
「……!!…」
セルダの鞭で生じた衝撃で、手折れていた草花が息を吹き返す
初めて耳にしたイザマーレの謡と
ウエスターレンの奏でるギターの音色に衝撃を受け
空気が淀みなく澄み渡っていく様を見とれていたセルダ
「…やはり。お前の炎の餌食となったものを蘇らせるには
パーツが不足しているのだろう。仕方あるまい」
やや残念そうに呟く2魔の前で、立ち尽くしているセルダ
(…………)
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