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出会い―森―


魔界の特異点。

ウエスターレンの力を持ってしても突破する事が出来ないほどの

強力な結界に覆われた場所

ご丁寧にも、さらに姿を消しながら佇む光のオーラ


イザマーレはこの時、王都で殆どの敷地を覆い尽くす

鬱蒼とした緑の森で、丸太に腰掛け俯いていた


敷地内にある魔界病院では、怪我をしたバサラが

処置を受けていたが、ベルデの施術のおかげか

傷跡もなく、いつも通りの晴れやかな笑顔を見せていた


(……)


何も言わずにその場を離れ、

ふと目にした濃い緑の木々に誘われるようにサロンへと

足を運んだ


様々な植物が、百花繚乱に咲き乱れる中

ひとつひとつ眺めてみるが、目的の花は一向に見つからない


いや…

例え、その花が見つかったとしても

それが何だと言うのだ……






深いため息をついて、丸太に腰掛けた


ウエスターレンが、いつも自分を気遣い

寄り添ってくれていることも

その気持ちに甘んじている自分の狡さも


こんな時、いつも傍らで可憐に咲き誇り

その憂いを慰めた花の姿を求めて、涙が溢れる


だが…却って良かったかもしれないな

こんな無様な姿を晒さずに済んだと思えば…



「お前…何やってんだぁ?こんな所で」


「!…」

ふいに声をかけられ、驚いて振り向く


「…何だ?お前、ついさっきまで治療を受けてた

悪魔の知り合いか?師匠の施術も終わったし、

奴なら無事だ。心配いらねーよ?」


「……」


黙りこくっているイザマーレに、さらに怪訝な表情を浮かべながら

よっこいしょ、と手にした大荷物をその場におろし

うーん、と伸びをしている


大柄な身体つき。最高魔を証明する白塗りの面

凶暴そうな文様に、フサフサと揺れる尻尾


身体中から草叢の匂いがする




「…お前、吾輩の事が分かるのか?」


「ああ?…まあ、そりゃあな。お偉いさんのお前からすりゃ、

俺なんか視界の端にも入らなくて当然だろうけどよ。

この魔界で、お前の事を知らない奴なんかいねーだろ」


オーラを消しているはずなのに…というイザマーレの疑問は

華麗にスルーされ、その飾り気のない語り口に

自然と肩の力が抜けていくのを感じていた


「そうか…邪魔してすまなかったな」


「ふん…高貴な身分ってのも窮屈だろうよ?

遠慮するな。一応、同級生だからな♪」


「! そうだったのか?吾輩はイザマーレだ。お前は?」


「俺はエレジアだ。お前は、教室の中でも特に目立ってるからな(笑)

俺なんかに話しかけられても迷惑だろ?

そう思って、挨拶もろくにしなかったんだ。ごめんな」


他愛もない会話の最中に、そっとため息を零すイザマーレ


「…よく分らんが、誰にでも悩みはあるだろうよ。俺には気にせず

そこに居ていいからな」


「お前…この森に詳しいのか?」


「ああ?…まあ、一応な。師匠に頼まれて、時々手入れに来ているからな」


「そうか…実は吾輩、百合の花が好きなんだ。見た事はないか?」


「百合か?…残念ながら、この森にはねーよ。

磁場が異なるせいなのか、魔界の中でも、あまり見かけねーな。」




「!…そうか…」


「?」


探し物が手に入らず、悔しがるかと思いきや、僅かに微笑むイザマーレを

物珍しそうに眺めていたが、「変な奴!」と言い残して

小屋に戻ろうと振り返る


その時…


2魔の背後に佇み、じっと見つめる紅蓮の悪魔に気がついた


怪訝な表情を見せるエレジアの前を素通りし、

俯いたままのイザマーレを後ろから抱きしめる


「!…//////」

包まれる紫煙の香りに、身体を強張らせる


「イザマーレ…お前の好きな百合の花なら

いつでも探し出してやる。必ず取り戻してやる。

俺とお前で…そう、約束しただろ?」


「ウエスターレン…こんな吾輩で、良いのか?」


「当たり前だ!!ったく…心配させやがって…」


強く抱きしめてくるウエスターレンに

そっと微笑み、首に腕を回すイザマーレ




どれだけ時間が過ぎたのか分からない

ふと、辺りを見回すイザマーレ


「どうした?」

「ん?ああ…奴に見られたかと思ってな…気を利かせてくれたのか。

案外、細やかな性格なんだな(笑)」


大柄でふさふさな尻尾を揺らす悪魔は、とうに姿を消していた

(公開ラブシーンなんて冗談じゃねーぞ!!!)



 
 
 

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