出会いー紅蓮と魔猫-
- RICOH RICOH
- 2024年11月19日
- 読了時間: 3分
新学期が始まり、少し経った頃
毎日豪奢な馬車で、送り迎えされながら
教室内では基本、誰とも打ち解けず、心を開く事のないイザマーレに
周囲から羨望と嫉妬と怨嗟の感情が無遠慮に寄せられるようになる
加えて、隙あらば生徒指導室に姿を眩ます様子も周知され
好き勝手に噂されるようになる
この上なく高貴な身分にありながら、少しでも優位に立つように
教官に取り入ってるに違いない
澄ました顔で、周囲を寄せ付けないオーラを纏っているが
いつも傍に侍らせる紅蓮の悪魔さえ居なければ
なんの力もなく、容易く排除できるんじゃないか、等々…
目上の者に対し闘いを挑み、謀略の限りを尽くすのは
若い悪魔にとっても自然の摂理なのだ
同じレベルの魔力を持つ者同士で徒党を組み
校舎の影で無意味な作戦を練り上げる悪魔も後を絶たない
その日も、校舎の屋上で酒とクスリをやりながら
ゴロ蒔く数名の悪魔達
学校内でも、その素行の悪さが目立つ彼ら
だが、偶然その場に居合わせ、
突然姿を現したセルダに恐れ慄く
自分たちより遥かに荒くれ者で、
束縛を嫌い、授業など端からボイコットを繰り返す
そのくせ、魔力は強すぎると、不良魔の中では専ら噂されていた
しかも……
そんな能力を買われ、学生の身分でありながら
すでに要職を任されている
しかも、魔界で生きるものならば誰もが忌み嫌う最悪拷問官という事実
さらに、彼の手に拷問にかけられた悪魔のその後を目にした者は
誰もいないという……まことしやかな噂
一度も振り向くことなく、華麗な腕さばきで鞭を振り落とした瞬間
その場で罵詈雑言を繰り返していた悪魔たちは
敢え無く死に絶えていく
………
セルダは、後ろを一度も振り向かない
それは、自らの背後で起きる悲劇から目を背けたいからだ
その時だった
「…まだまだ、脇が甘いな」
「!」
ふっと流れてくる紫煙の香りに
驚いて振り向くセルダ
「あんた…いつからここに?」
「おやおや…それすら気づいていなかったか。
今日は犯罪魔を拷問にかけたと聞くが……
まあいい。敵に刃を向ける時には油断するな
活きの良さも仇になるぞ」
目を細めながら、息絶えた悪魔の亡骸を
淡々と燃やし尽くすウエスターレン
「…昼寝を邪魔されてうるさかっただけじゃんね。
そんなの、俺の都合なだけじゃん」
「ふっ 心配はいらない。イザマーレに対する誹謗中傷、
さらに反逆の意図は見え見え。ゆくゆくは、王家への
敵となりうる厄介な分子を、事前に排除しただけだ。」
「……俺はその細かいルールなんて知らんね。
お咎めなしなら、俺はもう行く。学園内はもう飽きた」
「…お前、名は何という?」
「え?」
「ギターが好きなようだな。それから、山登りも」
「!!」
ニヤッと笑うウエスターレンに、気色ばみ、すぐさま消えるセルダ
「…ふっ、心を覗き見されて、腹を立てたか…(笑)」
その日の夜、屋敷のとある部屋で
月明かりに照らされながら身体を重ね合う2魔
「…ほう…」
腕の中にイザマーレを抱き寄せながら、
昼間に出会った悪魔について楽し気に語るウエスターレン
「俺にとっては同じエレメンツだから馴染みもあるし
案外、面白い逸材なんじゃないかと思ってな」
「お前がそこまで言う程の悪魔なら、吾輩も一度会ってみたいな」
ニコッと可愛らしい笑顔を振りまき、熱い抱擁に身を委ねるイザマーレ
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