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器の行く末


呪縛シリーズ 序章


人間界での黒ミサは続いていても、終わってからも

彼らの生活は続いて行くのです




王都ビターバレーから少し外れた、

低級魔族が多く暮らすコミュニティー


緑豊かな草花に囲まれ

静かな場所にひっそりと佇む丸太小屋


なんの変哲もない場所だが、

魔界一の大悪魔イザマーレが所有する別荘地として有名な場所だ


噂によると

丸太小屋の中に、人間界につながる階段が常設されており

お妃様の思い出の土地にお出かけになる際には

便利な通り道として愛用しているらしい


その丸太小屋に、いつの頃からか

一名の女性が定住するようになった


その噂を聞きつけて、格子戸から覗いた俺は

腰が抜けそうになるほど驚いた。

お妃様に瓜二つの女性…


(…リリエル様? いや、そんなはずはない。

今日は市場に来られる日ではないし…)


自問自答を繰り返していた俺に

後ろから声がかかった


「…あら?こんな所で(*´艸`*) 奇遇ですね♪」


「!! お妃様…。そ、それに…」

「どうした。バサラ軍の演習は、今日は休みか?」


「い、いえ…これから参るところです💦 副大魔王様…💦」

不敵な笑みを浮かべるイザマーレに恐れをなし、

低級魔は一目散に退散していった





「どうなさったのかしら? 慌てる必要もないでしょうに…」

キョトンとして首を傾げるリリエル


「…さあな?」

そんなリリエルの髪を撫で、微笑むイザマーレ


連れ立って、小屋の中に入って行く


「おじゃましま~す♪里好!来たよ~(≧∇≦)」

扉を開けて、ワクワクしながら入って行くリリエル


「…リリエル。いらっしゃい…って💦

元々、あなた達の別荘地じゃないの。何度も言ってるのに(^-^;」


中に居た、リリエルそっくりの女性は半ば、呆れがちに笑う


「(笑)まあ、良かろう。気にするな」

嬉しそうなリリエルの髪を撫で、ほくそ笑むイザマーレ


「屋敷に住まない代わりに、今すぐ丸太小屋を使わせたいと

リリエルにおねだりされたからな(笑) まだ天寿を迎えてはいないが

まあ、裕子もいるし。時間内に人間界と行き来すれば問題ないだろ」


「…/////// まさか、こんなに早く、魔界で暮らせるようになるなんて

思ってもみませんでしたよ💦リリエル…ありがとね♪」


「困った事はない?何でも言ってね。」

「うん…思ったよりも、凄く平和だよ。閣下やリリエルのおかげよね。」


「ほお…やはり、さすがはリリエルの器だな。そう思えるのは

お前自身のオーラのせいだろう。ま、静かで集中できるなら

執筆活動も捗るだろ? 次の新作も楽しみにしてるからな♪」


「…は、はい…💦💦」





そんなわけで(苦笑)


『奇蹟の夜』にて夢のひと時を過ごした後

副大魔王イザマーレ閣下からの格別のお墨付き頂戴し

この丸太小屋で小説と歴史蔵書を執筆するお役目を拝命した

私、里好…


時空縛りも何のその、

今後も色濃い作品を、押し売りさせていただく所存でございます。


そういえば…


お約束していた楓様…今頃、どうなさってるのかしら(^-^;





……


数日後の事。


「邪魔する。里好、ちょっと良いか?」


いつものように丸太小屋で執筆活動を行っていた里好の元へ

イザマーレが1魔でやって来た


「あ、いらっしゃいませ。勿論ですよ。…あれ?リリエルは…?」


慌てて出迎え、お茶を淹れながら尋ねる里好


「ああ、今、あいつの買い物に付き合って市場に来たところでな。

ついでにお前に話したいことがあって、寄らせてもらった」


「…?」




イザマーレの言葉に、更に不思議そうに首を傾げる里好


「…実は今朝、吾輩の元にミカエルから交信があってな。」


「ミカエル様から…?凄いなあ(^-^; さすがは魔界💦💦」


「里好がこの丸太小屋と人間界を行き来するようになってから

ダイヤの器……楓だったな。お前という支柱を見失って

慌てて探して彷徨い歩くうち、どういうわけか

天界の方に行ってしまったようなんだ」


「…ええっ!!!」


「……というより、あいつの本来の古巣、魂の眠る花園に

本能で向かったのかもしれないが……」


「……」


物凄い秘密を、サラリと告げられた里好は早速

脳内で咀嚼し始める


「あ、すまないな。話が脱線した。それでともかく、経緯は分からんが

天界でウロウロしているのを運よくミカエルが発見したようでな。

吾輩に知らせてくれたんだ」


「そうでしたか💦もう、楓様ったら……」


イザマーレの話に苦笑する里好


「それでな。ミカエルの好意でこちらの世界に

連れ戻してくれるそうなんだが、今度の日曜日

陛下が創設された魔界美術館のこけら落としが横浜で行われるだろ?

一緒に降臨するから、誰か迎えに来てやってくれと頼まれてな」





「! あ、それ、たしかに楓様、

絶対に行くって楽しみにしてました」


「吾輩は前日に地方で黒ミサだし、ウエスターレンも時間が取れなくてな。

かと言って、陛下御自身はそれどころじゃないだろうしな(笑)」


「でしょうね……(笑)」


「吾輩がいない場所で、しかも天界相手に

リリエルだけで行かせるわけにはいかないからな。

あいつが、どうしても行きたいっていうなら話は別だが……」


「……ふむ。…閣下、それなら私が代わりに迎えに行きましょうか?」


手で口を覆いながら暫し考え込んだ後

提案する里好に、ややホッとした表情を浮かべるイザマーレ


「頼めるか?」


「ええ。お安い御用ですよ♪」

にっこり笑顔で応じる里好


その時、扉が再び開き、買い物を済ませたリリエルが入って来た

「こんにちは~。里好、来たよ~♪お邪魔しま~す」


「お疲れ様。どうぞ~」

里好はリリエルにもお茶を差し出す


「リリエル、今朝の件は、里好に頼めるそうだ。心配いらないぞ」

そう言いながら、イザマーレはリリエルの髪を撫でる


「あ、お願いできるかな?ごめんね、よろしくね。」

あらかじめ、心得ていたようで

イザマーレに頷きながら里好を気遣うリリエル




「セリーヌ様がどうしても外せない用事があるとかで、

お譲りいただいたチケットがあるの。もし良かったら

美術鑑賞も楽しんできてね💕」


「うん…ありがとう。でも、良いのかな💦却って申し訳ないよね」


恐縮する里好に、にっこり微笑むリリエル


「勿論よ♪私が行っても…陛下は嫌がるでしょうし(笑)」



「ま、我々は、屋敷の庭からのんびりと鑑賞すれば良いだろう。

それじゃ、里好。すまないが、よろしく頼むな。

あ、楓と落ち合えたら魔宮殿に連れて行きたいんだが…

この丸太小屋に戻ったら、リリエルと2魔でまた来るか。」


「そうですね。里好も、その時は是非一緒に行こうよ。ね♪」


「うん、分かりました。いろいろありがとう…私だけじゃ、さすがに

魔界の中は迷子になりそうだから💦」



そんなわけで、楓様をお迎えに、

人間界に降り立つことになった里好でございます。





―横浜


駅について、さっそくスマホを取り出し、ナビを開始する里好

案内を頼りに、テクテクと歩いて行く


連絡通路を抜けて、会場前の交差点までたどり着いた時

建物の前でとんがり帽子で黒装束姿の男性と、その男性にひっつくように

楓が並んで立っていた


里好が腕を振ると、楓も気がついて手を振り返した


お互い、示し合わせたようにベージュのダウンを着込み

彼女たちを見かけて声をかけてくる仲魔がいると

声を揃えてハモらせる

2名の様子を見ていたミカエルは、密かにほくそ笑んでいた


「わざわざごめんね。えっと、君は…彼女と同じように

リリエルの器……で合ってるのかな?」


穏やかに話しかけるミカエル

少しの逢瀬だが、リリエルとの違いをすぐさま感じ取ったようだ


「里好様、ごめんね💦 でも、ミカエルさんに優しくしてもらえて

大丈夫だったから、安心して!!」


すまなそうにしているが、嬉しくてたまらない様子の楓に

里好は苦笑するしかない


「もう!!楓様ったら!!閣下もリリエルも心配してたよ?」


「えっ💦閣下も?…リリエル様も??キャー(≧∇≦)♪♪」


「この後、魔界に連れてくるように

閣下に言われたから…心の準備は良い?」





前後の見境なく、はしゃぎ出す楓に、里好も笑顔で重要事項を伝える


「うん!!是非とも!!楽しみ~♪♪」


生ダンケルに会えるという現実と、その後、魔界にも行けるという

ダブルの情報に、すっかり興奮している楓


「…ミカエル様ですね?この度は、お手間をおかけしました。

ミカエル様も、楽しんで行ってくださいね。終わった後、お食事でも?」


「うん。そうだね。是非、御一緒させてもらうよ。」


そんな会話をしながら、会場内に吸い込まれていく…


……


ライブは順調に終わり、近くのレストランで食事も済ませた一行


「美味しかったね~…では、そろそろ、参りましょうか。」

「OK~♪お願いします。ミカエル様、どうもありがとね。

またお会いしましょう~」

「うん。こちらこそ、楽しい時間をありがとう。またね。」


ミカエルと別れ、未だ興奮冷めやらぬ状態の楓

里好は保護者のように手を繋ぎ、秘密のルートにある階段を

ゆっくりと昇って行く


何段あるか数えきれない……


ようやく昇りきると、穏やかな光に包まれた

丸太小屋の中に到着していた


「…とりあえず、お茶入れるね。椅子に座って待ってて。

私が言うのもなんだけど、ようこそ、魔界へ♪(´∀`*)ウフフ…」





「うわーーー、本当に魔界?? 

で、ここが『あの』丸太小屋ってこと?

本当に、小説で読んだ通りだねえ(⌒▽⌒)アハハ!」


大興奮で、少しも座ってなどいられず、

辺りを見回してはしゃぐ楓


その時、扉がノックされ、イザマーレとリリエルがやって来た


「こんにちは~。里好、来たよ~お待たせ♪」


「あ、閣下、リリエル、良かった。今、到着したところです」


「屋敷の庭で、館内の様子は吾輩も見ていた。

生き血祭りの事や様々な事……改めて、感じさせてくれて

良い印象だったな。」


「(´∀`*)ウフフ… そうですね。陛下も、とても貫禄のある御姿でしたね♪♪」


美術館の感想を述べるイザマーレに、リリエルも率直な気持ちを伝える




先程まで大興奮ではしゃいでいた楓は

イザマーレとリリエルの突然の訪問に、頭の中を整理しきれず

固まったまま目をウルウルさせ、徐々にうっとりし始める


楓の様子にいち早く気づいたリリエル

「ダイヤ様の器さん、楓様でしたよね。

大丈夫?お疲れのところ、申し訳ないのだけど

これからすぐ、移動しなきゃいけないの。こちらにいらして♪」


「あ…/////// はい💦 すみません、よろしくお願いします!!」





慌てて姿勢を正し、頭を下げる楓を連れ

丸太小屋に横付けしてあった馬車に乗り込む4名


いよいよ、ガチガチに緊張し始めた楓に

クスっと微笑むリリエル


「ほんの少しですから……力を抜いて、リラックスしてくださいね」


少しの間、馬車に揺られ、楓はウトウトと居眠りしていた


イザマーレとリリエルは、小さな声で里好と話をしていた

「里好、どうだった?ミカエル様は」


「うん…やっぱりオーラが他とは違って、

かなり目立ってたな……(( ̄▽ ̄;;)ア、ハハハハ…」


「お前のことは、すぐ気づいただろ?」


「そうですね。やはり、魂の一部は閣下なんだな、って

実感しました。楓様も、ミカエル様のお傍に居れて

殊更嬉しそうでしたよ」


「……その辺の暴走癖は、本体と同じなんだな(笑)」





しばらくすると、魔宮殿に到着した


イザマーレにエスコートされながらリリエルが降りる

里好が楓を起こし、リリエルに続けて降ろしてもらった


事前に報せを受けていた、裕子が出迎えてくれた




「閣下、リリエル様💕お待ちしてました。彼女がなっちゃんの……

ですね。ひとまず、私のお部屋で陛下たちが戻るのを待て、との

事でしたから。どうぞこちらに……」


裕子が楓に手を差し伸べる

そして、馬車にいる里好に呼びかけた


「初めまして💕裕子と申します。

リリエル様の器さんですよね。よろしくお願いします。」


里好も会釈し、挨拶を交わす


イザマーレとリリエルが馬車に乗り込んできて

再び丸太小屋に向けて移動し始める


「……裕子さん、少し元気がありませんね。

どうかなさったのかしら……」


「…そうだな。ベルデが上手く対処するだろ。

リリエル、お前は何も心配するな」


何かが既に起きていることを察する2魔の様子に

アンテナが作動する里好


(……やはり、そうだったんだな…)


リリエルに触れさせたくもない事柄は

イザマーレによって上手く遮断されてるに違いない(笑)


思わずニヤつく里好の思考を読み取り

目を泳がせて咳払いをするイザマーレ……



🌷器の行く末 Fin.🌷


 
 
 

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