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在りし日の風景 


今から10万数十年前


当時の副大魔王エルドメアは幼いイザマーレを引き取った直後、

ビターバレーにある広大な屋敷に彼専用の部屋を設けて、

それまで自分に従ってきた使用魔の大半を

イザマーレの専属使用魔とした


その直後、「始まりの場所」から百合の花、リリを持ち帰り

いつの間にか、仲の良い親友以上の間柄になっていたウエスターレンとも

心置きなく共に過ごせるようになっていた


イザマーレの成長と魔界の行く末を、思い描きながら

盟友ルビアスと共に永眠の呪についたのは、それからすぐの事だった


イザマーレが魔齢16歳の頃、女に化身したリリをLilyelと名付けた

咄嗟の事で、喜んでくれたのは良いが、彼女を現す言霊としては

しっくり来ない。そんな気がして、何気に魔界図書館へ足を運んでは

文字を浮かび上がらせる。


Lilyelと過ごすようになり、間もなく一年。記念の贈り物として

ちょうど良い、そんな気がして…


そんなイザマーレを愛しく思いつつ、にこやかに提案するウエスターレン


「それよりも前に、まずは正式な妻として公表してやったらどうだ?」


「…そうしたいのは山々なんだが、万が一、その…///////」

顔を薄っすらと赤く染め、俯きがちに話すイザマーレ


「ん?」


「大切なものは、大事に胸の内に閉まっておきたい。

誰にも見つからないように閉じ込めて、ひとり占めしたい

そんな風に思ってしまうのは、我儘か…?」




「そうだな…分かる気もするが、だからと言って

お前の事だ。誰にも譲る気などないだろう?」


「当然だ。…お、ようやく見つけた…この本は

あいつに読んでやったら喜ぶだろうな♪」


そう言って、愛くるしい笑顔を見せたイザマーレ

どうやら、ようやく彼女にふさわしい言霊と歴史書を見つけたようだった


ウエスターレンと共に、屋敷に戻ったイザマーレの元に駆け寄り

微笑みながら抱きつくLilyel


「Lilyel、待たせたな。寂しかったか?」


「(´∀`*)ウフフ…いいえ♪イザマーレ様のお留守の間に

お部屋をお掃除してましたし♪」


優しく髪を撫でるイザマーレに、嬉しそうに微笑むLilyel


「やれやれ…お前のお陰で、使用魔たちの仕事がなくなると

先日も苦情をもらったばかりだぞ?」


「もう! 良いんです(≧∇≦) 今日は、皆さ魔たちと

床拭き競走したんです♪それなら、全員で楽しめるでしょ?」


「はあ?」


呆れて、その場に控えるランソフと目を合わせるイザマーレ


「イザマーレ様、申し訳ありません(笑)僭越ながら

とても楽しませて貰いました。お陰で、業務も早く終わりましたし

これからすぐ、お茶の時間にしますよ。今、オルドが用意してますから…」


笑いを堪えながら、丁寧に対応するランソフ




「ね♪イザマーレ様も、こちらにいらして♪

あ、勿論、ウエスターレン様もですよ(*´艸`*)」


Lilyelはイザマーレの手を取り、ウキウキとテーブルへ誘う


やや呆れつつ、穏やかに笑いながら成すがままに誘導される

イザマーレとウエスターレン


屋敷の中は、いつのまにかLilyelの独壇場に様変わりしていたが

その居心地の良さに、自然と心が癒されていく


穏やかなティータイムを終え、プライベートルームに戻った途端

Lilyelを優しく抱きしめるイザマーレ


「イザマーレ様…探し物は見つかりましたか?」

少し首を傾げ、見上げるLilyel


「ああ…だが、まだ内緒だ。週末にでも王室へ向かい、

お前を正式な妻として公表させてからのお楽しみだ。待ってろ」


「…嬉しい…有難うございます。イザマーレ様…愛してます///////」

胸に頬を寄せて、うっとりするLilyelの顎に手を添え

口唇を重ねる。口づけはすぐに深いものに変わる


「吾輩も、お前が好きだ。愛しているぞ、Lilyel…」

甘く囁き、服を脱がせてベッドに横たえ

何度も繰り返し、愛し合う…


そして、腕の中で眠りについた彼女に、

昼間仕入れたばかりの物語を夢芝居にして見せる


嬉しそうに微笑むLilyelと、蜜月の夜が更けていく…





翌週末


イザマーレの髪に乗り、共に姿を現したLilyel


魔宮殿で出迎えたダンケルは、またしても衝撃を受けていた


艶やかな髪を優しく撫でて、寄り添うイザマーレ

嬉しそうに微笑み、見つめ合うLilyel


「…イザマーレ。そいつか?お前の嫁は…」


「はい。以後、お見知り置きを……」

イザマーレは遜り、恭しく頭を下げる


「Lilyelと申します。貴方様が皇太子殿下ですか?

よろしくお願いいたします。」

ぺこりとお辞儀をして、自己紹介をするLilyel


「ほう…魔界では、あまり見かけないタイプだな。

イザマーレ、いつの間に…?私にも内緒で隠していたのか」


本音を散りばめながら、軽口で和ませようと務めるダンケル


「…申し訳ありません(笑)それで、この機会に

彼女に新たな名を授けようと思っているのですが…

お許し頂けますでしょうか」


静かに笑いながら、問いかけるイザマーレ


「なるほどな。良かろう。イザマーレ、改めておめでとう。」

ダンケルも鷹揚に了承する

返す刀に、隣に当然のように寄り添う女を睨みつける


「だが意外だったな。お前はてっきり

ウエスターレンを…と思っていたのだが」




妻の座を射止めたLilyelに対し、これ以上にない

嫌味になるだろうと、砕けた様子で追い詰めようとするダンケル


その時だった


「あら?貴方は、とても偉い方だと伺っていたけれど

違うのかしら?イザマーレ様とウエスターレン様は、もちろん

固い絆で結ばれておりますよ💕💕💕

ご安心くださいませ」


「///り、Lilyel…っ 💦」


さすがのイザマーレも焦り、苦笑しながら

Lilyelの口を塞ぎ、慌てて詫びる


「殿下、申し訳ありません💦 失礼しました」


一方、Lilyelの思わぬ切り返しに唖然と固まったダンケルも

咳払いしつつ、苦笑するしかなかった




魔宮殿を後にして、屋敷に戻ると

ランソフをはじめ、オルドやたくさんの使用魔たちが

宴と儀式のために準備を整えていた


「イザマーレ様、Lilyel様…改めて、おめでとうございます」


穏やかな笑顔で出迎えるオルド

ランソフは嬉しさに顔を歪めながら、設えた衣装を2魔に献上する


「坊ちゃま、この日を迎えられることを、

今か今かと待ち望んでおりましたよ。

早速、先代にも報告せねばなりませんね」




「ありがとな。だからと言って、

何かが大きく変わるわけでもあるまい?

これまで通り、我々はやって行こうと思う。よろしくな」


そう言ってLilyelを抱き寄せるイザマーレ

殊更、嬉しそうな表情を浮かべていた…


「イザマーレ、Lilyel、お帰り。

お前たちの噂を聞きつけた、魔界中の悪魔たちが

歓喜の渦に沸いているぞ。」


颯爽と姿を現し、八重歯を覗かせて笑いかけるウエスターレン


「やれやれ…しばらくは、やつらを喜ばせるために

お前との蜜月の時間はお預けだな…Lilyel、お楽しみは夜にな」


「///////…はい」


ため息がちに本音を吐露するイザマーレに

恥ずかしそうに顔を染めながら応えるLilyel…





 
 
 

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