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憂いの魔クスブルク帝国(後半)


一方、女官たちによって宮まで連れ戻されたダイヤベート

草原で目にした出来事の中で最も衝撃的だった

ミカンツらしき男の浮気現場について

わめきながら訴え、さめざめと泣き続けている


「ダイヤベート様…ですから申し上げたのです。

旦那様から送られてくる沢山のお便りに、もっと丁寧に目を通し

すぐにお返事をお出しするべきだと…」

呆れてため息をつくセリーヌ


「!! そんな…っ会いに来ないと書いてある文など

見たくないじゃない…だから…うわああああん、早く王宮へ戻るわ!!」


こうして、いつまでも逃げていては、

ミカンツのハートをゲットできないとようやく危惧したダイヤベートは

慌てて魔クスブルク帝国に舞い戻り、ミカンツに抱きついて甘える


だが、出迎える民衆たちの冷ややかな視線に怯え

俯き、愚痴を零すのだ


「仕方ないじゃない…私が望んだ立場ではないわ!!

誰も私の心には寄り添ってくださらない…」


「ダイヤベート…ようやく戻ってくれたのか。このままここに

居続けてくれたら、どんなにか良いのに…」


皇妃の腰を優しく抱き、甘く囁くミカンツ


「それは貴方様次第だわ♪ ミカンツ様…会いたかった…💕」


だが、そのまま寝所に横たえ、口唇を重ねようとするミカンツに

顔を赤らめて逃げ惑うダイヤベート





「い、嫌…恥ずかしい…///////」

「可愛いな、ダイヤベート。恥ずかしがるな…」

ミカンツは微笑み、口唇を塞ぐ


優しく肌を重ね合うが、ダイヤベートの固さは解れず

幸せな逢瀬とは言い難い


ほんの義務感で、事を終わらせ、

数刻後には再び公務へ戻って行くミカンツ


「ミカンツ様…お忙しいからと言って、今宵も寄り添ってはくださらない…」


ため息を隠そうともせず、自室へ戻って行く


自室のベッドで一人、涙に濡れながら眠りにつくダイヤベート

その枕元に群がる黒天使たち


「ダイヤベート!!いい加減、目を覚まし、

ダンケルトート帝王の元へ戻らんか!!」


「まったくなあ…ここまで不器用な女も珍しいよな。

お前のような奴はダンケルトートがお似合いなんだよ…」


葉の囁くような音に、目を覚ますダイヤベート

瞳を開くが、目の前にあるのは闇だけ

それはまるで、自分へ向けられる周囲からの

罵詈雑言にしか感じられないのだ


「…いや!!やはりここ、ウィーンは嫌い!!

一刻も早く、ハンガリーへ戻りたい…」


耳を塞ぎ、枕を涙で濡らしながら、眠れぬ夜を過ごすダイヤベート


「ダイヤベート様?如何なさいましたか?」

女官のリリエルが、そっと声をかける





皇妃という立場にあるもの…寝所さえも

プライバシーなどは存在しない

いつでも見張られ、少しでも動揺すると義母に告げ口される


「ようやく旦那様に抱きしめてもらったけど…恥ずかしくて

いつも目を逸らしてしまうの…最初は優しくしてくださるけど

最後はいつも、つまらなそうにお部屋を出て行かれるのよ😢😢」


「…まあ、なにを仰いますやら。

愛されたのなら素敵な時間だったのでしょう?

もっと素直にお喜びになれば良いものを…」


リリエルはダイヤベートの幼さに呆れつつ、微笑みを絶やさずに

彼女の手を優しく握りしめる


「ネイルのお手入れに毎日3時間。本当に美しく艶やかで綺麗ね。

毎日欠かさない筋トレも、極度のダイエットも…

そして、ダイヤベート様。貴女は、本当に

美しく可愛らしい器量を兼ね備えてらっしゃいます。

その愛くるしい笑顔を、鏡に映るご自身以外の誰かに

向けた事がございますか?」


「!!…リリエル…貴女はいつも優しく私に従ってくださるわ。

でも、貴女だって本当は何か目的を持って私に近づいたはず…

知ってるのよ?私は!身分など関係なく

優れた器量を兼ね備えてらっしゃる

そして愛しい方の寵愛を一身に受ける

皇妃として本当に相応しいのは貴女のような人なのよ…

私も、もしも死ぬなら貴女の手に殺されたい…本当よ」


驚いて見つめ返し、ムキになって言い放つダイヤベートに

リリエルは立ち上がり、手を差し伸べる




「その通りよ、ダイヤベート様。

でも、私の役目は貴女を殺すことではないわ

ある方のお役に立ちたいだけ。」


「!!」


「甘えん坊のお子様、ダイヤベート様。

本当の幸せを探してるのなら、私についていらっしゃい」


リリエルは燭台を手に、ダイヤベートの足元を照らし

部屋の外へ誘導する






 
 
 

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