憂いの魔クスブルク帝国(後半)
- RICOH RICOH
- 2024年10月28日
- 読了時間: 4分
一方、女官たちによって宮まで連れ戻されたダイヤベート
草原で目にした出来事の中で最も衝撃的だった
ミカンツらしき男の浮気現場について
わめきながら訴え、さめざめと泣き続けている
「ダイヤベート様…ですから申し上げたのです。
旦那様から送られてくる沢山のお便りに、もっと丁寧に目を通し
すぐにお返事をお出しするべきだと…」
呆れてため息をつくセリーヌ
「!! そんな…っ会いに来ないと書いてある文など
見たくないじゃない…だから…うわああああん、早く王宮へ戻るわ!!」
こうして、いつまでも逃げていては、
ミカンツのハートをゲットできないとようやく危惧したダイヤベートは
慌てて魔クスブルク帝国に舞い戻り、ミカンツに抱きついて甘える
だが、出迎える民衆たちの冷ややかな視線に怯え
俯き、愚痴を零すのだ
「仕方ないじゃない…私が望んだ立場ではないわ!!
誰も私の心には寄り添ってくださらない…」
「ダイヤベート…ようやく戻ってくれたのか。このままここに
居続けてくれたら、どんなにか良いのに…」
皇妃の腰を優しく抱き、甘く囁くミカンツ
「それは貴方様次第だわ♪ ミカンツ様…会いたかった…💕」
だが、そのまま寝所に横たえ、口唇を重ねようとするミカンツに
顔を赤らめて逃げ惑うダイヤベート
「い、嫌…恥ずかしい…///////」
「可愛いな、ダイヤベート。恥ずかしがるな…」
ミカンツは微笑み、口唇を塞ぐ
優しく肌を重ね合うが、ダイヤベートの固さは解れず
幸せな逢瀬とは言い難い
ほんの義務感で、事を終わらせ、
数刻後には再び公務へ戻って行くミカンツ
「ミカンツ様…お忙しいからと言って、今宵も寄り添ってはくださらない…」
ため息を隠そうともせず、自室へ戻って行く
自室のベッドで一人、涙に濡れながら眠りにつくダイヤベート
その枕元に群がる黒天使たち
「ダイヤベート!!いい加減、目を覚まし、
ダンケルトート帝王の元へ戻らんか!!」
「まったくなあ…ここまで不器用な女も珍しいよな。
お前のような奴はダンケルトートがお似合いなんだよ…」
葉の囁くような音に、目を覚ますダイヤベート
瞳を開くが、目の前にあるのは闇だけ
それはまるで、自分へ向けられる周囲からの
罵詈雑言にしか感じられないのだ
「…いや!!やはりここ、ウィーンは嫌い!!
一刻も早く、ハンガリーへ戻りたい…」
耳を塞ぎ、枕を涙で濡らしながら、眠れぬ夜を過ごすダイヤベート
「ダイヤベート様?如何なさいましたか?」
女官のリリエルが、そっと声をかける
皇妃という立場にあるもの…寝所さえも
プライバシーなどは存在しない
いつでも見張られ、少しでも動揺すると義母に告げ口される
「ようやく旦那様に抱きしめてもらったけど…恥ずかしくて
いつも目を逸らしてしまうの…最初は優しくしてくださるけど
最後はいつも、つまらなそうにお部屋を出て行かれるのよ😢😢」
「…まあ、なにを仰いますやら。
愛されたのなら素敵な時間だったのでしょう?
もっと素直にお喜びになれば良いものを…」
リリエルはダイヤベートの幼さに呆れつつ、微笑みを絶やさずに
彼女の手を優しく握りしめる
「ネイルのお手入れに毎日3時間。本当に美しく艶やかで綺麗ね。
毎日欠かさない筋トレも、極度のダイエットも…
そして、ダイヤベート様。貴女は、本当に
美しく可愛らしい器量を兼ね備えてらっしゃいます。
その愛くるしい笑顔を、鏡に映るご自身以外の誰かに
向けた事がございますか?」
「!!…リリエル…貴女はいつも優しく私に従ってくださるわ。
でも、貴女だって本当は何か目的を持って私に近づいたはず…
知ってるのよ?私は!身分など関係なく
優れた器量を兼ね備えてらっしゃる
そして愛しい方の寵愛を一身に受ける
皇妃として本当に相応しいのは貴女のような人なのよ…
私も、もしも死ぬなら貴女の手に殺されたい…本当よ」
驚いて見つめ返し、ムキになって言い放つダイヤベートに
リリエルは立ち上がり、手を差し伸べる
「その通りよ、ダイヤベート様。
でも、私の役目は貴女を殺すことではないわ
ある方のお役に立ちたいだけ。」
「!!」
「甘えん坊のお子様、ダイヤベート様。
本当の幸せを探してるのなら、私についていらっしゃい」
リリエルは燭台を手に、ダイヤベートの足元を照らし
部屋の外へ誘導する
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