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生きろ―過ちのない誘導―


王宮の長廊下―


ダイヤベートを操り、連れ出すリリエルを見守りながら

闇に控える黒天使たち


「でも閣下も考えたよな。リリエルちゃんとの時間を邪魔されまくって辟易して、

それなら作戦切り替えて、彼女も一緒に人間界に連れて行っちゃうなんて」


苦難を逆手に取り、一石二鳥にも三鳥にもさせて

逆境を乗り越えるイザマーレの手腕に、感心しまくりなバサラの言葉には

その場にいる全員が同意する


「あの2魔は運命の相手だからね。離れてる時間も惜しいんだよ」

それ以上に熱い思いを胸の底に隠し続けるベルデも

ゆっくりとお茶を味わいながら、微笑む


「それでも、まだ邪魔してるじゃんね。ダンケルトートの奴」

「だからうまくいかないんだよ」





「じゃぁお前ならうまくいくのか?バサラ」

「当たり前じゃない。俺は女心には敏感だよ」


ウエスターレンの辛辣な切り返しに、

麗しい姿を晒してポーズを決め込むバサラ


「へぇ…そうかよ(無関心)」

まったく動じないウエスターレンは、退屈そうに紫煙を燻らせる


「リリエルちゃんも健気だよね。最高の恋魔だよ」

「だなぁ!あーあ、俺もそんな恋魔が欲しいよ」

「ラァードル。お前が先に恋魔作ったら、絶対あいつにぶっ壊されるぞ」


「やだやだ。男の嫉妬なんて…」

「でも閣下はぶっ壊されてないじゃんね」

「そりゃ、あの2魔を引き離すなんて出来る訳ないのは

あいつにだってわかってるだろ」

「だから邪魔してるんじゃない」

ウエスターレンとベルデの鋭い分析に、一同、深いため息をつく


「…サムちゃんとリリエルちゃん、可哀想だな」


しみじみと2魔に思いを寄せるラァードルに

ウエスターレンは肩を叩いて励ます


「だから!お前らも協力して、早くあいつの想いを成就させてやれよ。

俺たちの極上の褒美はその後だ♪」





……

いつの間にか、一人、闇夜を彷徨うダイヤベート

長廊下の端で、目を疑う光景に出くわす


数時間前まで自分を抱きしめ、慈しんでくれたはずのミカンツに

よく似た黄金の黒天使が、リリエルを抱き寄せ愛し合っている


「貴方は誰?!ミカンツ様によく似てるけど違う…」


リリエルと濃厚に絡み合いながら、ダイヤベートの視線に気づき

不敵な笑みを浮かべ、見返す黒天使イザマーレ


「ここにお前の居場所などないだろう。

悔しければ、さっさとこちら側へ来ればいい。

最後のチャンスを与えてやる」


澄み渡る声で言い残し、リリエルを連れて立ち去る黒天使


呆然と立ち尽くすダイヤベートの手に、いつのまにか

音楽祭の招待状が添えられていた




帝国末期の昨今、王宮は借金まみれ

民衆は貧困にあえぎ、いつ不満を爆発させても可笑しくない状況

そんな中で優雅なオペラ鑑賞


当然、周囲からは冷ややかな視線を向けられる


それでも、折れそうな心をどうにか保ち、出かける気になるだけマシだと

女官たちは最後まで、皇妃の想いに寄り添い、守り続ける


そのオペラ会場に向かう橋の袂で、反皇帝主義を掲げる活動家の

研ぎ澄まされた刃の餌食となり、絶命するダイヤベート





倒れたダイヤベートに手を差し伸べ

涙を流しながら見つめるダミトート

触れる手のぬくもりに、ダイヤベートは目を醒まし見つめ返す

闇の帝王の瞳の中に、誠の愛を見つける


「もう二度と、お前を手放しはしない。闇に抱かれろ、ダイヤベート…」

血塗れのダイヤベートを抱き寄せ、口づけを交わす


…再び、その汎用な瞳を開いた時、目の前で繰り広げられていたのは

黒天使たちによる至極の音楽祭


ミカンツによく似た黄金の黒天使が怒髪天に姿を変え、朗々と歌い上げる

彼の髪に座る女、リリエルがにこやかに微笑む。そして…





 
 
 

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