最終章 ―無償の愛―
- RICOH RICOH
- 2024年11月26日
- 読了時間: 4分
花と緑に溢れたフェアリー国…
天界と最高魔軍による壮絶な闘いを終え
大地は再び荒れ果て、
Anyeの作り出したログハウスも瓦礫の山となり
イザマーレが蘇らせた草花も枯れていた
「…し、仕方のない事とはいえ…ちょっとやり過ぎちゃったかな💦」
焦ってスティックに放電させながら、気を遣って声をかけるラァードル
「まあ…こればっかりはねえ…」
ベルデも角をポリポリと搔きながら、ため息を付いている
そんな中、朽ち果て、木屑と化していた柿の木に歩み寄り
愛おし気に手を添え、静かに祈りを捧げるAnye
魔界にラディアを送り届け、再び姿を現したウエスターレンと
目配せし合い、Anyeの元に歩み寄るイザマーレ
「さて…。Anye。そろそろ良いか?出発するぞ」
「あ…はい。今までどうも、ありがとう…」
全ての因縁がなくなれば、彼らとの付き合いもそれまで…
そう思い込んで疑わないAnyeに、ハタと気づく
「そうだった…なし崩し的に事を済ませ
肝心な事を伝えていなかったな」
「…?」
「魔界においで。Anye。お前がこれからも、
吾輩と追いかけっこをしようがしまいが、どちらでも構わない。
だがそれは、ここでなくても良いだろう?」
「…////」
イザマーレの言葉にも、俯き、躊躇するAnye
「貴方にも、分かったはず…
私はいつも、周りに不幸を呼び寄せてしまうの
あのまま魔界に居たら、いつか貴方まで…
だから、私……」
言葉を詰まらせ、涙を堪えるAnyeを抱きしめる
「……知っている。だから、この国に戻って来たんだろ?」
優しく髪を撫でる手のぬくもりに、涙が溢れて止まらない
「大丈夫だ。お前ごときに心配されるほど
吾輩、ヤワではないぞ♪それにな…」
「…?」
「お前の大事な宝くらい、お前ごとまとめて吾輩が護ってやる。
だから、Anye…もう一度、聴かせてくれないか?お前の言霊を」
「!…え?」
「折角なら、瓦礫の山よりは、実り豊かな草花の方が
護りがいがあるからな♪そして…」
改めて、Anyeを見つめるイザマーレ
「お前が一番、欲しがっていたものを与えてやる。
心を解き放て。お前の心のままに歌うのだ。畏れずにな…」
「……はい…」
イザマーレの言葉の意味を、理解してはいなかった
ただ言われるままに瞳をとじて、息を吐く
Anyeの口から、新たな旋律が紡がれていく
……
静かに、紡がれる旋律が、徐々にうねりを上げ
Anyeの身体を螺旋状に包み上げていく
フレーズが進むに従って、歌いながら
ある事に気がついたAnye
頑なに閉ざしていた心の鍵が、イザマーレにより奪われていたのだ
(…だめ…このままでは…だめ……っ……)
トランス状態に陥る寸前で、まだ見ぬ世界に震えが止まらない
(Anye、畏れるな…心のままに…解き放て…!)
イザマーレの言霊に諭され、ついに自我を失くしたAnyeから
強烈なオーラが解き放たれ、宙に浮かび上がる大輪の花
ウエスターレンに促され、ベルデの魔法陣に入り、
様子を窺っていた構成員たちは一様に呆気に取られ、
それでも次の瞬間にはお互いに目配せし合い
ため息をつきながら見守る
次々と打ち上げては様々な色合いに変化させていく花に
酔いしれ、静かに笑みを浮かべるイザマーレ
(…これが、お前の持つ真の力…無償の愛……)
「…おい、イザマーレ。それで、どうすんだ?
姫君の御機嫌取りに難航するようなら、力を貸すぞ?」
言葉とは裏腹に、楽しそうに八重歯を見せ微笑むウエスターレン
「…大丈夫だ。おい、お前ら、ついでだから付き合ってくれ。
最高魔軍の事なら、何故だか無条件に心を許しているようだから
止められるだろ…多分…(苦笑)」
…………
Anyeの無償の愛に、輪廻を促す時計の針が急速に回転を強めていく
因縁の呪縛から解き放たれ、大地は静かに無に還る
その時、さらに強く回転を促すリズム…
最高魔軍の作り出すトライアングルに、再生を強く促され
音の洪水が全てを渦に飲み込み、大河へ押し流していく……
その確固たる強靭な意志に魅せられ、Anyeの瞳に光が宿る
夢幻月詠イザマーレの光に導かれ、浮かび上がり、吸い込まれていく…
あまりの心地よさに溺れそうなAnyeを腕に抱き止め、
ベルデの作り出した巨大な魔法陣の中へ引き連れていく…
花と緑に溢れたフェアリー国が光の粒になり、砂塵と共に消えて行く……
いつの間にか
Anyeが作り上げたログハウスは、豊かな草花と共に
魔界のとある場所に繋がれ、今も静かに時を刻んでいる
そして…あの柿の木は…
今もどこかで、花と黄金の雄鶏の逢瀬を優しく見守っている……
🌷後編 Fin.🌷
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