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森のピクニック


魔界美術館のこけら落としを過ぎて、週明け


いつものように馬車で登園し、掲示板の前で別れ

それぞれの校舎に向かうイザマーレとAnye


「あ、そうだ、Anye」


ふいに呼び止められ、振り返る


「後で、生徒会室へ来てくれ。お前に話がある」


「あ、はい。畏まりました。」


学園のみならず、魔界中の注目の的となっている2魔

だが、当の2魔はこれまでと何ら変わらず、

学園内に一歩足を踏み入れれば

鬼会長からの指令に従い、淡々と役割を果たすAnye




「失礼します。会長…お待たせしました」


昼休みになり、生徒会室に姿を見せにきたAnye


「校内パンフレット。吾輩の挨拶文と、時事ネタに美術館の記事

加えておいた。」


手元の契約書を捌きながら、視線でソファテーブルを指し示す


「あ!ありがとうございます♪これで完成ですね(*^▽^*)

早速、本刷りですね。」


「ああ、後で、ウエスターレンに頼めば良いぞ」


「!…そうですよね。畏まりました。

ウエスターレン様…今、いらっしゃるかしら…」

そう言いながら、オーラを探るAnye



「それと。まだ話は終わってないぞ」


「? あ、はい。何でしょうか?」


早々に部屋から出て行きそうな勢いのAnyeを呼び止めるイザマーレ

Anyeは不思議に思いながらもすぐに振り返り、メモを取り出す


「間もなく、オープンキャンパスも終了となる。

留学生たちも、元の魔鏡学園に戻る事になるだろ」


「!…あ、そうでしたね…あっという間だったなあ…」


「あいつらが戻る前に、何か、記念になるような事をしてやったらどうかと

ラァードルとベルデがだな…」


珍しく、視線を泳がせ、口をモゴモゴさせるイザマーレ




「…ベルデ様が?…珍しいですね。

あ、そういえば…ラァードル殿下とスプネリア様が一緒に居る所を

見かけたことがあったな…」


天然のようでいて、時々鋭いAnyeに

ヒヤヒヤしながら、表面上は素知らぬ顔で告げるイザマーレ


「とにかくだ。ベルデが文化局の森に招待してくれるようだから

お前、留学生たちに知らせてくれないか?」


「はい。畏まりました。折角の機会ですから…良い思い出になると良いですね♪」


あまり深くは追求せず、微笑むAnyeに、内心ホッとするイザマーレ


…………

………


数日後、Anyeに誘われた留学生一同は文化の森にやってきた

イザマーレを初めとする構成員全員が出迎えてくれ、

発起魔のラァードルが挨拶をする


「えー、もうすぐ元の世界に帰ってしまう留学生と先生方と更に交流を深め

お互いの文化を知ろうと思いこのピクニックを計画しました

もう自由に今日1日過ごしてちょーだい よろしく~~」


それぞれ慣れてきた事もあり、和気あいあいとしながら

思い思いに過ごしている


スプネリアも少し離れた場所で皆の様子を見ながら

にこやかに過ごしていると、ふっと目に入ったモノがいた

草花の間を飛び交う蜂や蝶たちだった

虫嫌いなAnyeの為に会場周辺には結界が張ってある


(あの、蜂や蝶たちと話してみたいな……)

そう思い、結界の外に出て地面に座り意識を虫たちに集中する




それに気がついたラァードルとベルデは様子を伺いながら訊ねる


「ねえ、スプネリアちゃんってあれ何してるの?」


「あ~、あれは虫たちとコンタクトしているんですよ 他の魔女にはない

不思議な能力ですね 虫たちの声を聞いて寄り添っているというか……」


ラァードルに質問されたプルーニャが答える

スプネリアの周りに蜂や蝶たちが集まりだし、何かにこやかに話してる

ラァードル達には虫たちの声は聞こえてないが穏やかな気持ちになっていた

虫たちとの交流が終わったスプネリアが、皆に内容を話す


「えっと……ここにいる虫たちは皆様の事が大好きみたいです

それと、Anye様とも仲良くなりたいみたいですが、怖がっているのが

解ってるみたいで……」



「ほう、それで虫たちはなんて言ってる?」


イザマーレも興味津々で訊ねてくる


「結界張らなくても近付かないようにするって言ってます

後、和尚にも素敵な花園で過ごさせて貰えて感謝してるようですよ」


虫たちの意思を伝えると1口お茶を飲む

スプネリアの隣に座り、話し掛けるラァードル


「何だか凄いものを見せて貰えたな~」


「……いえ、虫たちとの交流くらいしか取り柄というか……その……

他には何も出来ないし、魔鏡学園に入学出来た事だけでも奇跡的で……」


「謙虚なんだね? スプネリアちゃんは(笑)」


「そ、そんな事ないですよ……///」




照れながらも話していると、1匹の蜜蜂が

スプネリアの指に留まり話しかけて来る

「ん?何? ついておいでって?」


「どしたの?」


「この子がついて来てって言ってるのだけど、大丈夫なんでしょうか?」


「じゃ、吾輩も一緒に行こう!! ベルデが管理している森の中なら

大丈夫だよ!」


ラァードルはスプネリアの手を掴み、道案内する蜜蜂の後を追いかける

花園を抜け出ると森の中に入っていく

しばらく歩くと立派な大木が見えて来た

その大木の根元には空洞が開いており中に入るように促してくる


「ここに入れって? 暗くて良く見えないね……

サムちゃんいれば楽なんだけど、ちょっと待ってね」


ラァードルはズボンのポケットからある物を取り出し地面に置くと

勝手に大きくなり灯が付いた


「あ、もしかしてランタン獣?

わぁー初めて見た! 可愛い~よろしくね💕」


「ランタン獣初めて見るの? スプネリアちゃん達の世界の灯りは

どうしてるの?」


「私達はこれを使っています」

制服のポケットからライトを取り出しスイッチを入れ見せるスプネリア


「へぇ〜便利な物だね じゃあ、中に入ってみようか?」


「中はかなり広いですね……」




蜜蜂について行くと大きな巣があり、蜜が溢れ出ていた


「え? もしかしてあなた達が一生懸命集めた

このハチミツ、分けてくれるの?ありがとう😊 じゃあ、少し頂くね」


魔法で小壺を取り出し、蜜を貯めていく

壺いっぱいになったところで蓋を閉めると蜜蜂達の女王からの

意思がスプネリアの頭の中に流れ込んでくる


「そうでしたか…… 判りました、その様に伝えておきますね

私は、別の世界から来てるので、もうここに来る事は出来ないから…」


「ん? 女王様はなんて言ってるの?」


「年に1~2度程、蜜を取りに来て欲しいのだそうです

それと、花を絶やさないで欲しいとも……」



「了解!! ベルデに伝えなきゃね。じゃ、皆のところに戻ろうか?」


「はい! では、女王様、皆さんありがとうございました」


「おい、ランタン獣帰るぞ……

って、お前蜂蜜舐めすぎ!!(笑)」


溢れていた蜂蜜をいつの間にかお腹いっぱいに舐め

パンパンになっているお腹を擦りながらパタパタと羽を動かし

2魔を出入口まで案内するランタン獣


出入口が近づいて来た頃、

何か思い詰めた様子のラァードルが話し出す


「あ、あのさ……スプネリアちゃん、帰らずにこっちの世界に……」




「殿下にそう言って貰えるなんて光栄です

……ですが、私がいる場所はこちらの世界ではないですから…

殿下には私なんかより素敵な女性に巡り逢えますよ 必ず……」


「そ、そうかな? いるのかな?!

スプネリアちゃんにも、帰りを待っている奴いるんだろうね……」


「……さあ? どうなんでしょうね……///」


2魔はそのまま話す事もなく、皆の元に戻ってきた

ラァードルは空洞で出会った女王蜂からの伝言を

ベルデに伝え、ハチミツがいっぱい入った小壷も手渡した





やがてピクニックもお開きの時間となり、留学生一行は

一足先に帰って行った


片付けを始めたが、少し空元気ではしゃいでいるラァードル


「ラァちゃーん、やーい、フラレ虫~~わはははは…」


「……うるさーい!!」


屈託もなく話しかけ、わざとらしく悪態をついて逃げ回るイザマーレ

思わずプンスカしながら、追いかけ回すラァードル


「サムちゃんなんかこうしてやる~~!」


こちょこちょこちょこちょ……


「ぎゃーーははは、こ、こら、やめんかぁ~~(笑)」


「先に仕掛けて来たのはサムちゃんでしょーー!(笑)」


ドタバタと駆けずり回り、遊び倒すイザマーレとラァードル




「ふっ……やれやれ、被害が出ないよう結界張るか…」


言葉とは裏腹に、穏やかな表情で文化局全体に結界を張り

目玉蝙蝠で情報局に伝令を飛ばすウエスターレン


「じゃ、僕はこのハチミツでクッキーでも焼いておこうかな」


ベルデは角をポリポリと掻きながら、のんびりとキッチンに向かう


「しかし、あの2魔は体力続くよね~(笑)」

「それがあの2魔の良いとこじゃんね(笑)」

ニコニコと眺めているセルダとバサラ


今のうちに…と、食事の済んだお皿を洗い始めるAnye




 
 
 

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