top of page

無謀な攻撃

それからしばらくの間は、何も起こらなかった


Anyeは、自分の周りにいる低級魔や鬼たちと

楽し気に会話をしながら、些細な情報を掴んでいく


幸運だったのは、自分が偶然居合わせた場所が

地獄と目と鼻の先だという事


頻度はそう高くないが、割と定期的に

中央から視察に訪れるという


禍々しく、近づく事さえ許されない闇のオーラを纏う悪魔と

忠実にサポートをこなす、これまた眩き光のオーラを纏う悪魔


土地勘もなく、ただでさえ迷子になるAnye

王都まで向かう必要もなく、相手から訪れてくれるなら

絶好の機会となり得る


あとは…その瞬間を待つだけ…


わずかな魔力しか持たない彼女だが、

周囲のオーラを察知する能力には長けている


(…大丈夫。間違える事はないわ…)


その間も、何気なく街中を何往復も散歩しながら

大地に残るわずかな気を隈なく調べる


それだけで、彼らがいつも通り抜ける道筋を把握する事ができる

あとは、民衆の会話を頼りに、可能性の高い日時を割り出すだけだ


(…経度・緯度…時間…確率……)

脳内で何度もシュミレーションを繰り返す




ダンケルの公務の付き添いで、北の大地を訪れていたイザマーレ

馬車に揺られ、涼しい顔で威風堂々と広道を通り過ぎる


「…やれやれ。毎度の事とはいえ、面倒だな」


「陛下。ここから先は、しばらくあります。

吾輩が護衛致しますので、どうぞ休息をお取りください」


「うむ…イザマーレ。お前といると、本当に心が安らぐ。

では、甘えさせてもらうぞ」


馬車の背にもたれ、目を閉じるダンケル


その時だった


前方に感じる強い殺気


(…来い…)


寸分違わず、イザマーレをめがけ、襲撃してくるAnyeの姿を捉える


(ほう…方位・角度ともに、なかなかの上出来だな)


心の奥底でほくそ笑みながら、

素知らぬ顔でAnyeの軌道を僅かに逸らす


「きゃあっ!!」


攻撃のため、瞳を開いた途端

目の前にいるダンケルの姿に驚き、慌てて急ブレーキをかけるAnye


「なっ…なんで…っ…💦 数値の入力をミスしたのかしら…」


ミスした以上、まずは身を隠さなければと、慌てて花になり

何とか入手した魔力入門書を読み込み、ブツクサと呟く




「…ん、何だ。どうかしたか?」


ダンケルがふと目を覚まし、声をかける


「…いえ。何もございません。まもなく目的地です。参りましょう…」


楽し気に笑いを堪えながら、その場を立ち去るイザマーレ


(…ふうん…それが、お前の正体だとはな♪)



やがて、地獄の視察を終え、王都へ戻る道すがら


往来の際、同じ道を通る事はない

だが、昼間にAnyeが攻撃をしかけた場所の近くに差し掛かった時


(…まさか…居ないよな?)

ふと視線を向け、驚くイザマーレ


(……いるし…(苦笑))


軌道をミスした原因が分からず、夢中で魔力入門書を読み続けている

Anyeこと、百合の花が咲き誇っていたのだ…


(ククク…そんな入門書などで、対処方法が見つかるわけないな)


吾輩が最大の防御を行ったという視点に

なぜ辿り着かないのだ?


あんまり可笑しくて、思わず指を鳴らしていた


「きゃっ…」

突然、自分の身体が浮き上がったかと思うと、あっという間に

イザマーレの魔袋に捕獲されていたAnye




そのままイザマーレの屋敷まで連れ去られ、

プライベートルームのデスクに置かれた百合の花


(……ここ…あの悪魔の…?)


物凄い広さに圧倒されながら、自分の不甲斐なさに

恥ずかしくて真っ赤になる


(///////んもう!!私ったら…なんて間抜けなんだろう💦

でも…ピンチは絶好のチャンスだわ…)


そう…これだけは無理かと諦めていた


彼の寝所まで辿り着いたのなら…奥の手が使える…


再び、女の姿に化身し、手の中にある種の感触を確かめ

瞳に強い光を宿すAnye



その時、突如背後に姿を現し

種を握りつぶそうとするAnyeの手を掴み上げるイザマーレ


「!!…い、いや…っ…」


身体を強張らせ、振り払おうとするのを許されず

Anyeは自らの最期を悟り、ギュッと目を瞑った


……ふわっとした感触


「…!!……///////」


あまりの事に驚き、目を瞠るAnyeの口唇は

イザマーレの口唇に塞がれていた


「…な…な…///////」




固まり、言葉に詰まるAnye


「…お前が…あんまり生意気だからだ!!

お前ごときの刃など、吾輩に届くわけないと何故分からんのだ!!」


「///////……っ……///////」


思わず真っ赤になりながら、口唇を拭い、

振り払おうとするAnyeの腕を捕らえ、さらに抱き寄せる


「っ……///////」

「…どうした?先程までの勢いは何処へ行った…?」


睨み返すAnyeの瞳を捉え、ニヤッと不敵な笑みをながら、

イザマーレは再び口唇を重ねる…




なんとか逃げ出したAnye


あまりの事に、心臓が早鐘を鳴らしている

物影に隠れ、乱れた息を整える


「…///////な、なんなのよ、もう…💦」


思わず、口唇に指先をあて、改めて真っ赤になって俯く


「い…色仕掛けなんて…そんな手には乗らないんだからっ💦…」


高鳴る心を抑えられずにいるのを誤魔化すように悪態をつき

その場を立ち去る


その頃、屋敷に佇むイザマーレは

自らの犯した行為に抗い、逃げ出していくAnyeに

苛立ちを募らせていた


(…言霊が効かないのか…ったく…

行き場がないのなら、諦めて吾輩に頼れば良いものを…)


なぜか、居ても立っても居られず、Anyeのオーラを辿り

瞬間移動で消える


「…!!…」


ちょうどその場に駆け込んできたAnyeは驚いて足を止める


草花の芽吹き始めた大地に

マントを翻しながら佇むイザマーレの姿…


Anyeの行動の先を読み、待ち構えていたのだ


「なっ…なんで…///////」





出会った時とは違う、貴公子のような佇まいに

思わず見とれ、立ちすくすAnye


「…お前がどんなに吾輩を憎もうと、構わない。

だが…あれが吾輩の全てではない。

それを理解させなければ、癪だからな!」


「!…そ、そんな事に、なんの意味が…」


「お前が吾輩の事を誤解したままだからだ」


「…ご、誤解なんかしてません!!

今はまだ…私なんかでは足元にも及ばないくらい

強くて雄々しい悪魔だって事くらい…悔しいですが…」


「だから!!それが、誤解だと言うんだ!!

吾輩にだって、後悔することくらいある!!

その事をお前に詫びたいと思っているのに

謝罪の言葉すら言わせず、逃げ出すとは何事だ!!」


「…えっ…」


思わずキョトンと首を傾げるAnyeを、改めて見つめる


「やり方を工夫すれば、全てを破壊する必要もなく

効率よく罰する事も出来たのだ。それを怠り

この国の豊かな自然も、お前の住処さえ奪った事を謝る。

すまなかったな」


「!」


イザマーレの意外な言葉に驚き、見上げるAnye


「隙あらば吾輩の命を付け狙う、小憎らしい好敵手には

少しの借りも作らず、正々堂々と向き合いたいからな♪」




Anyeは口元に手を当てたまま俯く


(…そんな事言って…この国の大地を蘇らせたのは、

貴方でしょう…どんな魔法か知らないけど…)


Anyeが心で呟いた声に気がつき、微笑むイザマーレ


「なんだ、そんな事か?大した事じゃない。

お前の真似事をしただけだ…」


「えっ…」


そっと近寄り、Anyeの髪を撫でるイザマーレ

その手のぬくもりに、胸の鼓動が高まり、

目を反らせずにいるAnye


「お前だけでも、十分、良いものを持っている。だが…

吾輩なら、お前のその声に力を与えてやれる。

お前はそれを望むだけで良い。畏れるな…」


固まるAnyeの顎に手を添え口唇を重ねる

そっと離し見つめ合う

真っ赤に染まり、震えるAnyeを抱きしめ

再び深く口づけ合う…




 
 
 

最新記事

すべて表示
校長のサロン

「理栄先生!!本当ですか…!!」 噂を聞きつけたスプネリアとリリア、ムーランの3名が駆けつけると 同じように見に来ていたプルーニャ、ダイヤと出くわす 「あら?早速、いらっしゃったわね♪お疲れ様です♪」 理栄がニコニコと微笑んで出迎える...

 
 
 
魔鏡学園

「イザマーレ、お帰り…っておい」 副理事長室で待ち構えていた守衛ウエスターレンが、一瞬固まる 「…浮気か?」 ニヤッと目を細めるウエスターレン 「ウエスターレン…馬鹿な事を言うな」 言葉とは裏腹に、静かに笑みを浮かべるイザマーレ 「あ、あの…」...

 
 
 
交錯

生徒会室で眼光鋭くモニターチェックしながら 紫煙を燻らせていたウエスターレン 突如、一番手前にあるモニターが光を放ち、画面にノイズが走る すらっとした指先を巧みに動かし、相手からのメッセージを受け取る 「…マジか。了解した。」 軍服を着こみ、すぐさま部屋を後にする …………...

 
 
 

コメント


©2022 by 里好。Wix.com で作成されました。

bottom of page