約束 前半
- RICOH RICOH
- 2024年11月4日
- 読了時間: 15分
秋の夜長シリーズ「謎の要塞」の真相となっております。
併せてお楽しみください。
元老院―
裏庭に姿を現した黄金の怒髪天
何をするでもなく、ただ静かに佇んでいた
その姿をチラチラと眺め、様子を窺っていた花たち
花たちは知っていた
この黄金の悪魔の隣には、かつて心から愛し合う女性が居た事を
そして、あるひとつの事件により、引き裂かれたままだという事も
その後、毎日のようにこの場所に訪れては、今のように
静かに佇むだけなのだ
まるで、その女性へ寄せる想いを確認するかのように……
ほんの数刻、静かな時間が過ぎると
ふっと息を吐き、顔を上げて立ち去って行く
その表情はいつも力強く、まるで自分自身を鼓舞するようだった
「…はあ、今日も変わらず、素敵だったね…イザマーレ様…」
ため息がちに話し出す、百合の花
「Lilia…貴女、いいの?貴女の存在をお知らせしたら、
きっとお喜びになると思うけど…」
その百合の花に優しく問いかける木蓮の花
「…いつもそう思ってるんだけど、いざお越しになると
あまりの荘厳なオーラに震えてしまって…///////」
そう言って、少し恥ずかしそうに俯く百合の花
「クスクス…分かるわ。私もだもん///本当に素敵な王子様よね…」
やがて、王都内はある噂でもちきりとなっていた
「最高魔軍」として活動を開始することになったイザマーレが
人間界のとある場所に姿を変えて潜伏している
生まれ変わりを果たした女性のすぐ近くにいるらしい…
その噂が広まるにつれて
殺伐としていた魔界の空気が、ほんの少し明るくなるのを感じていた
「リリ様がお戻りに…
でも、恐らくイザマーレ様の事も覚えてらっしゃらないのよね?」
そう呟いて、静かに涙を流す木蓮の花
「木蓮様…それにここに居る皆さまは、リリ様をご存知なのですよね?」
そんな木蓮の様子に、Liliaが問いかける
リリがイザマーレの屋敷に連れて行かれてから、
その場に根づき花を咲かせたLiliaは
生みの親のリリの事をあまりよく知らないのだ
「私たちは、リリ様の存在を忘れる事は決してできないわ。
何故なら、今こうして花でいられるのも、リリ様のお陰だから…」
あの日―
天真爛漫で無色透明な夢幻月詠の歌声で、枯れかけていた花たち
苦しくて、ぐるぐると目を回し始めた時、奇蹟が起こった
屋敷の中で奏でられた愛の旋律の魔法にかかり
草花たちの命が救われたのだ
「いつか、出来る事なら、その恩返しがしたいと思っていたの。
私たちだからこそ、出来る事があるはず…」
「! 木蓮様…で、でも、花の私たちに出来るのでしょうか…?」
Liliaはやや戸惑いがちに問いかける
「ふふっ 大丈夫よ。やり方は、貴女のお母様であるリリ様が
お手本を見せてくださったもの…」
自信満々に、ある呪文を唱え、あっという間に女に化身する木蓮
「!」
驚いたLiliaも、慌てて真似をして、女に化身した
「…ふ~ん。やっぱり女になっても綺麗だわ~ さすがね。
リリ様のオーラを受け継いでいるだけある♪」
初々しいLiliaの化身した姿を、繁々と眺めながら感想を述べる木蓮
「…さっ。早速行きましょ♪」
「えっ、どこへ…?」
「決まってるじゃない。イザマーレ様のお屋敷よ。急がなくちゃ。
夕方までに、人間界に行けるようにしてもらわないと…」
そう言いながら、急ぎ足で屋敷に向かう2名…
文化局に併設する魔界図書館―
スケッチブックを手に、一心不乱にある作品を描き続ける画家魔
「…ふう~。噂を元に浮かび上がるままに描いてみたけど…」
自分の手で描いておきながら、出来上がっていくその姿に戸惑う
厳かさと、慈愛と、悲しみと…
様々な想いを訴えかけてくるのだ
そして…それだけではない
噂に聞く、ある女性の魂に宿る、強い想いに魅せられていく
人間界の、とある家の庭先に、決して羽ばたく事なく君臨し続ける
煌びやかな黄金の雄鶏
その雄鶏の住処として作られた鳥小屋のすぐ傍で
のびのびと木登りをしたり、枝に吊るされたブランコで遊ぶ少女…
その家の他の人間には、決して触れる事を許さず
歯向かう者には容赦なく蹴り飛ばす、黄金の雄鶏
だが、その少女に寄せるまなざしは、いつの時も慈愛に満ちていた
少女が眠りにつくと、静かに夢に入り込む悪魔…
夢の中で出会う、煌びやかな光の悪魔の姿を
時々、独り言のように呟く少女
「昨夜も、おねがいをひとつ、聞いてもらったの。でも
目を覚ましたらいつもと同じ…ねえ、あれは本当に夢なのかしら…」
返事をしない黄金の雄鶏に語りかけるのだ
「夢でもいいの。でも、もし会えたなら、きっとお伝えしたいの。
私の中に、いつもあの方がいらっしゃることを…」
柿の木の枝に腰かけて、にっこりと微笑むリリエル
「誰にも信じてもらえなくてもいいの。でも、私の中に
間違いなく、あの方は生きている…とても素敵な…王子様が…」
……
伝わる想いに、涙が堪えきれない画家魔
…出来る事なら、もっと近くでずっと眺めていたい
そして…いつか教えて差し上げたい…
その夢が、きっと叶えられる未来があると…
「…ふ~ん。やっぱり君は独特の才能を持っているね。
もし、今の気持ちを忘れずに居てくれるなら、
その願いが叶う方法を教えてあげる」
「!!…ベ、ベルデ様…」
いつの間にか姿を現して、のんびり告げるベルデに驚く画家魔
「この絵を持って、イザマーレの屋敷に行ってごらん。今ならまだ間に合う。
ウエスターレンに見せれば、きっと君の思いは伝わるはずだから…」
「!!…はい!! 分かりました」
慌てて立ち上がる画家魔に、ベルデがひと言、付け加える
「あ、そうそう。人間になる前に、名前を貰いなさいね。
ウエスターレンに頼むといいよ」
屋敷にかけつけた画家魔の絵を見た瞬間
ウエスターレンは彼女を抱きしめた
「ありがとう。よろしく頼むな…メーラ…」
こうして魔界の屋敷に集合した彼女たち
花から化身したムーラン、リリア
そして、画家魔のメーラ
「よし。お前らは皆、一度人間になってもらう。そして
リリエルの傍に行き、イザマーレの手助けをしてやれ。」
指示するウエスターレンに、元気よく頷く3名
「時期が来たら、一度すべての記憶を奪わせてもらう。
そしてある時になったら、再び人間としてリリエルと再会させてやる。
必ずこの魔界で、また会えるようにな…」
「…畏まりました。」
粛々と厳命を受け取る女性たち
見届けた構成員たちが笑いかける
「よし! 俺たちが活躍できるのは、もう少し先になるからな。
それまでは、君たちに任せたよ♪お願いね」
……
人間界に降り立った彼女たち
リリアとムーランはリリエルと一緒のバトンクラブに入り、
共に美貌をふりまき、水玉のミニスカートをヒラヒラさせ
缶ジュース片手に、いろんな夢を語り合う友達になった
好きな男性のタイプを言い合うと、
いつもそっくり同じ事にビックリしていたリリエル
あまりにも絵になる3人の女性の姿
男子生徒の視線に熱が帯びていく事に
危機感を覚えたイザマーレは、ある企てを起こす
リリエルが登校した後、要塞にダンケルを呼び寄せた
そして、ある事を告げる
「なっ…そんな事言ったら、嫌われるに決まってるだろう💦」
それを聞いたダンケルは、冷や汗を垂らすが
黄金の雄鶏に扮したイザマーレの、じっと睨む視線に抗えない
「別に構わないでしょう。
リリエルに愛されるのは吾輩だけで良いのです。
お願いできますね」
この後の一幕で、ほんの少しの恨みを買う事になった母親
実は、その時だけ潜伏したダンケルだったのだ
一方、リリエルのクラスメートになったメーラは
無理やり文化部に移動させられたリリエルの愚痴を聞きながら
美術部でせっせと絵を描き続けている
家の中で起きた少しの波紋も何のその
相変わらずの姿で君臨し続ける黄金の雄鶏
その横にいる雌鶏に扮したバサラがぼやく
「はあ~…それで、結局バトンクラブは止めさせたんだ…
別にいいじゃない。楽しそうだったんだし…(^-^;」
「ふんっ お前には分からんで良いわ!!」
悪態をつきながら、ほんの少しご満悦なイザマーレ
「万が一にも、この先
リリエルが陛下に媚びる事はなくなるだろう?」
ニヤッと不敵な笑みを浮かべるイザマーレに
バサラは呆れ顔
「それにしても、いったい、いつまでこんな役😭😭😭」
「仕方なかろう、我慢しろ!!吾輩も喜んでいる訳ではない💢」
苛立つイザマーレにため息をつくバサラ
だが、そんなバサラに容赦なく追い打ちをかけるイザマーレ
「ぼやく割に、ずいぶん楽しそうじゃないか?バサラ参謀よ」
「はあ?」
「お前だけだろ。リリエルに優しく抱っこされてる鶏は…
吾輩の目は誤魔化せんぞ!! 実はちょっと嬉しそうだよな?」
「ギクッ…もう~…勘弁してよ~💦💦」
目を細めて睨み付けるイザマーレに、慌てて抱きつくバサラ…
「もう、知ってるくせに。俺は閣下の事が大好きなんだよ♪」
次の日、順調に卵を産み落とした雌鶏…
そんな戯れ事が行われている鳥小屋の隣では
リリエルがいつでも飽きずに楽しめるよう
森のトンネルやブランコを整え続けるベルデ
池の周りに沿うように設けられた低い階段
一段ずつ降りて行くと、その都度、見える景色が変わる
黄金の雄鶏が最初に降臨した六角形の石の上に
主のように居座るツチガエル
時折、角の生えた悪魔の姿になり
森のトンネルに並ぶ石碑を交換していく
そこにふっと降り立った壱羽のカラス
「ベルデ。今日も精が出るね♪」
「ふふっ もう、勘が鋭いリリエルちゃんだからね…気づかれないよう、
でも不思議に思って貰えるよう、何とか頑張るよ(笑)」
「…それにしても、イザマーレったら、案外バサラと仲良くしてるよね(笑)
最初は相手がウエスターレンじゃないなんて!!って怒ってたけど…」
「雄雌の関係が逆になっちゃうもんね(笑)
ウエスターレンの方がひいちゃったみたい(^-^; ま、いいや。
吾輩ちょっと沼の方に行ってくるね。また後でね♪」
「…ああ、いつもの場所だね。…てことは、今夜は一雨降るのかな?」
「そういう事♪じゃ、またね」
そのやり取りを、遠巻きに眺めていたアオダイショウ
「…ふふっ この庭の梅の香りは本当に素晴らしい…
そうだ、私も一つ、リリエル様をビックリさせてあげましょう♪♪」
柔らかい緑の雨が降り続いた翌朝
庭とは反対にある玄関を開けた途端、目を丸くして固まるリリエル
扉に連なる階段の上で、威風堂々と蜷局を巻いて見つめるアオダイショウ
だが、あんまり驚いて、すぐに扉を閉じてしまったリリエルに
しょんぼりするアオダイショウ
「…嫌われてしまいましたかね…💦💦」
松の木に宿っていた雷神帝が爆笑していた
「さて…それは分からんが、実にのびのびと、育っているじゃないか。
これならマミィも喜ぶだろう。さ、雷神界に戻ろう。
我々があまり長居してはイザマーレ君に申し訳ないからな♪」
「お、雷ちゃんよ、お前も来てたのか」
「!…風ちゃんか。Silanの様子を見に来ていたのか?」
「ああ、そのついでに、ここにもお邪魔しようと思ってな♪
本当に、何でか知らんが、居心地が良い空間だよな(笑)」
「…悪魔の皆様が、固くお守りしている聖域ですからね♪」
感慨深く、頷きながら呟くアオダイショウ
「さて…戻るぞ。紫雲よ、いつまでその姿で居るのだ?」
雷神帝に突っ込まれ、慌てて聖龍の姿に戻る紫雲…
風神帝が一筋の風塵を巻き落とし、彼らはその場を立ち去った
さて。
黄金の雄鶏の番だけは、お役御免と頑なに固辞したウエスターレン
「むしろ、俺様に似合うのはこれだろ♪」
そう言いながら降り立ったのは、リリエルの中学校
邪眼を隠すため、パンチパーマを被り、
眼光鋭く竹刀を携えて廊下行脚をするウエスターレン
「ウエスターレン!!お前ばかり良い役、ズルいぞ!!
私にも少しは良い役をやらせろ!!!」
「はあ?…ったく、しょうがねえなあ…じゃ、お前はこれでも使え」
そう言ってダンケルにバットを手渡す
「残念ながら、この学校に合唱クラブなんて殊勝なものはなくてな
リリエルは珍しく、ソフトボール部に入部したんだ。お前は、顧問役。
せいぜい嫌われんよう、頑張るんだな(笑)」
強面の鬼顧問、ダンケル
規律を守らない軟弱な部員には容赦なく鉄槌を喰らわせる
だが、順番に並べられた部員が次々に殴られていく中
リリエルの手前で話を逸らして止める
「…ズルくないですか?リリエルちゃんだけ…!!」
当然のように思える部員たちの抗議に対し、苛立ちを隠さず声を荒げる
「仕方なかろうが!!私だって、そんな後が恐ろしい真似は出来ないぞ!!!」
だが、この鬼顧問…
リリエルに想いを寄せていた男子生徒が一人、また一人と去っていく中
「おい、リリエル。残念だったな♪ザマーミロ♪♪」
「…イザマーレ!!こんな時だけ乗り込んでくるな!!ったく…💦💦」
この時から、中身が入れ替わったようである
一方、パンチパーマのウエスターレンは
鋭い眼光ながら、リリエルの教科担任の座を射止める
テストの答案用紙を返していく中、リリエルの順番になる
「リリエル~、お前、何をしてやがる!!
こんなもんで良いと思ってんのか~?!」
遠慮なく怒鳴るウエスターレンに
聞いていた周りの生徒たちが恐れて震える
だが、次の瞬間、答案用紙を手渡しながら、ニヤッと笑う
「は~い!今回も学年の最高点♪おめでとう~」
そう言って、遠慮なくリリエルの髪を撫でるのだ
授業が終わり、教室を出るとバットを携えた鬼顧問…
目を細めて睨み付けてくる
「…ふっ たまには良いじゃないか。
焼きもちなんて可愛いな♪イザマーレ(笑)」
「せっかく身軽になるために、黄金の雄鶏を手放したからな♪
これからは自由に動き回ってやる。
そろそろだろ?あいつの夏季宿泊は…」
キャンプファイヤーで決め手となった言霊を送り届けたのは
この年の夏だった
英語の答案用紙を鞄に入れて、昇降口で靴を履き替えているリリエル
その横で、不良グループに苛められている生徒
リリエルより学年が上なのだが、最近になって転校してきたらしい
早く皆の輪の中に溶け込みたい、仲間に入れてもらいたい…
そんな思いから、変に悪目立ちするように飴を持ち込んだり
小さなルール違反ばかり繰り返すのだ
まんまと不良グループに見つかり、手厳しく指導される
そこへ姿を見せたリリエルに気がついた代表の役を演じていたのは
セリーヌ。
一緒に君臨する男の代表、セルダにより
手厳しく指導される憐れな子羊
リリエルが立ち去った後の校舎で、泣き続ける彼女に
そっとハンカチを差し出す影
「!」
驚いて見上げると、
後輩ながらセリーヌの子飼いと言われるほどの
立場に居座る女生徒だった
「ほら、いい加減泣き止み。
めそめそと下ばっかり見てても、何も変わらへんよ。
みんなに認めて貰いたいなら、やり方を間違えたらあかん
この学校のルールはいつでも一つ
いつでも前を向いて、戦い続ける事。
ただの我儘なだけの自己主張は許されへん。わかってるよな?」
「…プルーニャさん…」
「よし。ちゃんと顔あげれたな☆
それで良いんよ。今日はもう遅いから、はよ帰りや♪
明日は美味しい飴ちゃん教えたる♪また明日な。スプネリアちゃん♪♪」
そんな2人のやり取りを見ながら、静かに微笑むセルダ
「…よしっ じゃ、そろそろハルミちゃんと散歩に行こうかね。
おいで、プルーニャ…」
「は~い。その後、いつものパトロールですか?」
セルダのバイクの後ろに跨り、颯爽と立ち去る
夜の川原で、花火で遊んでいるリリエル
線香花火を片手に、恋の噂話に花を咲かせる
「2組のあの子と、あいつ、付き合ってるみたいね」
「へえ~…そうなんだね。知らなかった…」
楽しそうに相槌するが、あまり興味なさそうなリリエル
「でた~、興味なさげなその反応!!(笑)」
「え…?そんな事ないけど…💦」
ケタケタとツッコミを入れてくるダイヤに、
ただホンワカとしているだけのリリエル
「もう~リリエルちゃんってさ、すっごい男の子達の人気者なのに
誰とも付き合わないよね…?好きな人とかいないの…?」
「え…?そうだなあ…何人か、居ない事もないんだけど…
誰も、あの方に適わないというか…」
「??リリエルちゃん?何言ってるの?」
「あっ…ううん、何でもないの♪」
少し顔を赤くして微笑むリリエルを、不思議そうに、
でも興味深く眺めるダイヤだった
「なっちゃ~ん…ここに居たの?みんな待ってるよ。行こうよ」
「あ、ゆうちゃん。今行く~。
じゃ、リリエルちゃん、またね。また遊ぼ♪」
「…うん。またね♪」
迎えに来た裕子と、その場を立ち去ろうとしたダイヤ
そこへ、バイクに乗った不良グループに取り囲まれる
「!!」
驚いたダイヤは慌ててリリエルを守るようにしゃがみ込む
「おいお前ら、誰の許可をもらって遊んでやがる?」
「い、いえ、あの…」
青褪めて応えようとする裕子を、ダイヤが慌てて止める
(ダメダメ!話しかけちゃ…無視が一番だから!!)
そんな風にコソコソと話しながら、実は一番怖くて震えているダイヤ
だが、何故か、自分の事よりリリエルを守らなければいけない…
そんな思いに縛られ、身動きも出来ないのだ
そんなダイヤの奇妙な行動に興味を持った
不良グループの代表セルダ
改めて、そこに居るメンバーの顔を確認する
そして…
「…って、あれ?リリエルちゃん…?」
「あ…はい。こんばんは(*´艸`*)」
「な~んだ。おい、お前ら、これでちょっと買い込んで来い」
従えていた下部たちに命令を下し、数分後には
近くのコンビニで買ってきてくれたお菓子や飲み物、
新しい花火で溢れかえる
いつまで経っても終わらない…
そんな中、女代表のセリーヌは、
リリエルの心に灯るある思いに気がつく
この少し前にあった夏季宿泊
キャンプファイヤーでイザマーレの言霊を受け取ったリリエルの心に
新たな変化が生まれていたのだ
花火を終えて、要塞に戻って行くリリエルを送り届けた後
庭に向かうセリーヌ
かつて、黄金の雄鶏が君臨していたその場所は跡形もなくなり
毎日のように楽しく遊んでいた柿の木のブランコも
いつの間にか取り外されていた
幼少期、成長期を超え、思春期に差し掛かるリリエルのため
すべて、イザマーレの判断によるものだった
セリーヌの後を追って、姿を現したセルダに
少し不安顔で話しかける
「良いのでしょうか…
あんなに愛情に満ちている方が、恋を知ってしまったら…」
「そうだね…でも多分、閣下自身が知りたいんじゃないかな。
閣下に愛を教えてあげられるのは、きっと彼女だけなんだ…
俺も、その辺は、あまり得意じゃないから…
うんと学ばせてもらうじゃんね♪」
「…そうですね。大丈夫。彼女と閣下なら…」
ようやく納得して、穏やかに笑うセリーヌ
「ま、そこら辺のゴミ屑なんかにゃ、簡単には寄せ付けないじゃんね♪」
ニヤッと笑い、獲物を見るかのように舌なめずりするセルダ
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