紫蘭の受難 第一章
- RICOH RICOH
- 2024年11月5日
- 読了時間: 19分
夏場もそろそろ終わろうかという頃、
ラァードルから雷神界に行く事を聞かされた
この時期になると、雷神界風神界が一体となり
地球上に台風を起こしているのだ
最初はラァードルと壱蛍で行くつもりだったのだが、
雷帝妃がスプネリアを是非連れて来るよう言ってきた
父、雷神帝を手伝う為に毎年帰っているのだが、
台風一つ発生させるだけも気力体力をかなり消耗するらしく
傍にいてあげて欲しいと、雷帝妃からの希望であった
それまでは留守番をしながらボランティアの準備をしていようと
考えていたスプネリアだったが、それならばと
一緒に行く事になった
出発前日
「吾輩はサムちゃん達に挨拶がてら、暫く留守にするって事を
話しに行くから、スプネリアもおいで」
「……うん」
口づけしステックで頭をポンと叩き
小型化したスプネリアを髪の上に乗せ、イザマーレの屋敷に向かう
出迎えたイザマーレ、リリエル、ウエスターレンの3魔と
もうそんな時期になるのかと話しているラァードルの横で
緊張した面持ちのスプネリア……
そんなスプネリアの様子を見てリリエルがにこやかに話し掛ける
「スプネリア様、緊張しなくても大丈夫よ
お父様にお母様、それに殿下もいらっしゃるのだから、ね!?」
「……分かってはいるのですが、今までの訪問とは違うので
不安というか心配というか……
でも、自分なりに頑張ってみようとは思ってます……」
リリエルの励ましに何とか答えたが、やはり不安が付き纏う
だが自分は自分で出来る事をやるだけだと思い直した
雷神界では、台風を起こす為の準備が進められる中
一族が続々と集まって来ていた
久しぶりに集まる一族。
その中でも異様な雰囲気を持つ父娘が居た
名前はホセ。
天界、しかも密かにゼウス贔屓ときている
また娘のグリアは、そんな厄介者ホセから
皇太子であるラァードルの妃となる様言い聞かされ育ち、
なんの疑問も抱かずに受け入れ、
自分自身も必ず選ばれると信じて疑わない、自信家で我儘な女だ
当然、雷神帝も注意深く見ている父娘だった
そんな父娘が王宮に乗り込んできたのだから
雷神帝を始め、周りの者も警戒を強めている中、
ホセが雷神夫妻に話し掛ける
「いや~お久しぶりですな、帝。お元気そうで何よりです
お妃様は益々お美しくてなられて…羨ましい限りですな(笑)」
そこに老家臣のシセンが割って入る
「ホセ殿、帝とお妃様に気安く声を掛けるでない!
下がっておられよ!!…帝、ラァードル様がご到着されました」
「そうか! ラァードルが…じゃあマミィ、中に行こうか♪
シセン、紫雲よ あのホセから目を離すな!
特に、マミィの身辺警護はしっかりと頼むぞ!」
「「御意!」」
宮殿の中に入っていく4名を見送りながら唇を噛み睨み付けるホセ
いつの日か、愛娘グリアを皇太子妃にして、その父親の立場を大いに利用し
堂々と宮殿の中を闊歩し、公務にも顔出し権力を握ってやる…
そんな小さな野望に燃えていた
スプネリアの胸元にはラァードルから贈られたペンダントが光っていた
火焔電太鼓に稲妻をあしらったものだ
魔界から雷神界への移動中、お守りみたいなものだからと
スプネリアの首元に着けてくれた
ラァードルからの突然のプレゼントに戸惑うスプネリアだったが
嬉しくて肌身離さず着けていようと、ぎゅっと握りしめた
雷神界に到着すると雷神夫妻がにこやかに出迎えてくれた
「スプネリアちゃん、いらっしゃい。よく来てくれたわ」
「しょ、招待ありがとうございます
何かお手伝い出来る事があればって思うのですが、何かありますか?」
「お手伝いなんて考えなくて良いのよ
台風を1つ起こすだけでも、大変な体力消耗するみたいだから
ラァードルの傍で癒してあげてちょうだいね」
スプネリアは少し戸惑った
ラァードル達が留守にしている間は、何もする事がないらしい
「……スプネリア様、宮殿と皇太子宮内であれば
ご自由にお過ごし頂いて結構ですが、
お外には出られない様にお願い致します」
不意に眼光鋭いシセンから冷たい口調で言い渡され
更に戸惑うスプネリア
「……わ、分かりました……」
ラァードルは雷神帝や各地から集まってきた一族達との
協議の為、会議の間に入っていく
スプネリアはそのまま皇太子宮に案内されたのだが
何もする事がなく、ジッとしているのが苦手なスプネリアにとっては
退屈だし、周りの目線が冷たく感じてしまうのだ
『……そもそも人間の自分が来る場所じゃないよ……』
部屋の隅で膝を抱えてしゃがみ込む
日も暮れ始めた頃、ラァードルが戻って来た
姿を見てホッとした途端、前夜祭があるから
一緒においでと言われた
一抹の不安があるが、その気持ちはひた隠しにして
挨拶だけでもと思い、支度をしてラァードルと一緒に宮殿に向かった
広場では音楽が鳴り響き、それぞれに酒を酌み交わしながら
久しぶりに会う者同士、話にダンスにと大盛り上がりだ
バルコニーから見ていた雷神夫妻だが、早々に部屋に篭ってしまった
挨拶をするものだと思っていたスプネリアは戸惑っていた。
しばらくは広場の様子を興味津々で見ていたが、
不意にラァードルに抱き上げられ、バルコニーを後にする
そしてシセンからは、当たり前のように告げられる
「こちらのお部屋で暫しお休み下さいませ」
「シセン、遠慮なく使わせて貰うよ」
「/////」
その様子を、いつの間にか宮殿の中に入り込んでいた
例の父娘、ホセとグリアがじっと見つめていた
グリアの目は嫉妬が絡み、狂気じみていて、
いつまでも拳を握りながら、その部屋の扉を睨んでいた
部屋の中では、簡単な食事やフルーツ、酒なども用意されており
至れり尽くせりの豪華な部屋だ
中に入った途端、軽めのキスを交わしながらソファーに腰掛ける
ラァードルから酒の入ったカップを手渡され、乾杯をする
少し甘めだけどさっぱりとして飲みやすい酒だ
飲みながら、ラァードルに疑問をぶつけてみた
「ねえ、殿下、この時期に台風を起こすのは
雷神界と風神界の役目って事は判ったけど、
季節外れの台風や梅雨時期でもない時の大雨は何故?」
「時期外れのモノに関しては、
ほとんど地球自身が生み出してるって感じかな。
人間が限りある地球の資源を我が物顔で使っている限りは
ずっと続くと思う。その事に人間達が気づいてくれれば良いんだけどね」
「……そっか……何故災害が起きるのか
皆が考えて行動してくれれば、被害も少なくて済むのかも知れないわね…
簡単に言うと、地球の怒り、哀しみ、みたいなものなのかな?
ちょっと切ないかも……」
「そうだな、スプネリアの言うように、
地球自身の怒り、哀しみなのかも知れないな
我々が送り出す台風は、確かに規模が大小あるけど、
地球全体で約1年分の雨風を送り込んでるに過ぎないんだ。
親父と風神帝だけで、いくつもの台風を作り出すのは無理があるから
皆で協力しているんだよ。だからこの前夜祭は、気待ちをひとつに
昂らせる為の大事な儀式なんだよ。パートナーがいる奴は一緒に……
相手がいない奴は前夜祭で探し出して……
ねえ、スプネリア……段々と身体中が疼き始めてるでしょ…?」
確かに飲み始めてから、少しづつ身体中が暑くなり疼き始めていた
ラァードルにカップを取り上げられ、残りの酒を口移しで飲まされ
更に気持ちが昂っていく……
まさか、今飲んだ酒に媚薬効果が有るとは思いもしなかった
ラァードルと深い口づけを交わすと、更にボルテージが上がっていく
広場からの歓喜な音楽や笑い声を遠くに聞きながら、段々と
2名だけの世界に堕ちていく……
翌朝
雷神帝は紫雲に、ラァードルは壱蛍に跨り、一族を率いて出発した
風神一族と落ち合い、台風を発生させる場所に向かう
バルコニーから雷帝妃と一緒に見送ったスプネリアは
雷帝妃と少し話をしてから皇太子宮に戻る事になった
宮に戻る最中、スプネリアにいきなり話し掛けて来る女……
「……貴女、人間よね?何故人間が雷神界に来る事が出来るのかしら?!
まさか、薄汚れた人間が殿下に選ばれた……とでも言うのかしら?!
ラァードル殿下の横に並んで良いのは、雷神界の貴族の令嬢でもある
この私の筈なのに…… 殿下が戻られる前にさっさとお帰りなさいな
でも、貴女だけじゃ時空の狭間に墜ちるだけだわね ふふっ」
スプネリアの事を値踏みでもするかの様に
上から下までジロジロ見てくる
初対面の女に突然、小馬鹿にされた様に罵倒され
一瞬固まってしまうスプネリア
そこにシセンが現れグリアに一喝する
「その御方に気安く話し掛けるでは無い!早々に去られよ!」
「な、何よ!?パパに言い付けてやるから!お、覚えてらっしゃい!」
グリアは慌てて姿を消した
「シセンさん、今の方は……?」
「失礼しました、スプネリア様が気にかける程の輩ではありません
お忘れ下さい」
「でも、殿下の妃は自分だと……?」
「また、そんな事を言ってましたか?
昔から帝一族に絡んで来ては、勝手に許嫁だと
父娘で言い張る迷惑者です。ですが、貴女様は
ラァードル様に選ばれた御方なのですから、
堂々となさっていれば良いのです。分かりましたか?スプネリア様」
「わ、分かりました……あ、あの、シセンさん。
私、雷神界のお料理を覚えたいのですが、駄目でしょうか?
魔界でも、殿下のお好きなお料理をいつでも出して
あげれたらと思っているのですが……///」
「分かりました。ですが、お返事は明日までお待ち頂けますか?
帝のお許しが必要になりますので」
「……それは殿下の許可もいる……って事でしょうか?
出来たら内緒にして驚かせたいなと考えていましたが……
後、他にも色々勉強させて下さい」
「……なるほど。その辺りは上手く話しましょう
それでよろしいですかな? ただ、宮からは出られないように!」
「はい! よろしくお願いします!///」
頭をペコッと下げ、頬を少し赤らめて宮に戻っていくスプネリア
彼女の後ろ姿を見届けながら、シセンは呟いた
「……ふっ(笑)坊っちゃまとイザマーレ様、それぞれに
良き御相手に巡り会えて…良かったですな」
雷神一族は雨雲を、風神一族は風を呼び起こし
混ぜ合い、地球に送り出していく……
それぞれの大地や生物の繁栄への願いを込めての作業
その為に威力が大きくなり、被害が多少なりとも出てしまう
縦横無尽に暴れてるように見える雷神風神一族ではあるが
それぞれに何とかならないかと模索して
未だに解決策が見つからずだった
交代しながらそれぞれの役割を全うしていく
ラァードルと壱蛍は1つの雲を作り出すと休憩する為
その場から離れた
「ふぅ~~、さすがに小さい雲と言えども集中しないとな……
やっぱちょっと疲れるな💦」
「ラァードル様、お茶をお持ちしました」
「ん、ありがとう壱蛍」
壱蛍から渡されたお茶を飲みながら休んでいると、
ホセが近付いて来た
「へへ…ラァードル殿下、お久しぶりですな
ですが、この雷神界に人間の女なんかを連れて来るなんて
殿下らしくないじゃないですか?次期帝に成られる
御方の所業とは思えませんけどね!?」
壱蛍が1歩前に出てホセを威嚇するが、
ラァードルは飄々としたまま首を傾げる
「……お前誰だっけ?人間の女って吾輩の妻にしたスプネリアの事かな?
ってか、知らない奴から文句言われる筋合いないけどね」
妻という言葉を聞いてホセは驚く
「へ!?つ、妻!?人間を!?正気なんですか!?ってうわ!」
突然、強風が吹き上がり、ホセが飛ばされて行く…
呆気に取られながら見ていると、不意に話し掛けられる
「久しぶりだな、ラァードル君!その後スプネリアとはどうかね?
元気にしているかな?」
「! 風神帝殿、お久しぶりです! あれからちょっと喧嘩しましたが
今は仲直りしてますし、元気にしてますよ」
「わはは!(笑) 喧嘩したか。 ま、そんな時もあるわな
仲直りしているなら大丈夫だな」
「よう!風神帝、暫くだったな
ラァードル、ここに居たのか。シセンから連絡が入ってな
今日の作業はここまでにしておこう 風神帝も少し寄って行かないか?」
「そうだな、少し寄らせてもらうか。 Liliumにも挨拶したいし
ラァードル君、スプネリアも来ているんだろ?」
「来てますよ(笑) ただ、大人しくしているかどうか……(苦笑)」
色んな物に興味を持つと夢中になってしまうスプネリア
宮から出てないか、ちょっと心配になるラァードルだった
ラァードルの帰りを待つ間、
スプネリアは皇太子宮のテラスで本を読んでいたが
ふっと視線を感じ顔を上げ、視線の主を探す
すると、1匹の蛇が庭先でジッと
スプネリアの事を見つめていた
白っぽい鱗が陽の光に反射して輝いている
(綺麗だな…)
思わず、見惚れていたスプネリア
本を置き、1歩近づくと蛇も同じ位下がってしまう
だが目線は逸らさないままだ
スプネリアは思い切って蛇に話し掛けてみる
「……こんにちは、蛇さん
何処から来たの? どうしてずっと見てるの?」
「……」
蛇はジッと見ているだけで、何も答えてはくれない
「……そっか、人間が珍しいから見に来たのかな……」
暫くの間、お互いを見続けていた
蛇が空を見上げた…そう思った次の瞬間には姿を消していた
蛇が見上げた空の方向に顔を上げると
ラァードルと壱蛍の姿が見えた
「ただいま! スプネリアおいで、このまま宮殿に行くよ!」
「え?」
抱き上げられ、そのまま宮殿に向かって飛び立つ壱蛍
「今、風神帝殿が来てるんだよ。お前に会いたいって」
「え? 風神帝様がいらっしゃってるの?」
「そうだよ。一緒に作業してるからね」
宮殿前の広間に降り立つと、壱蛍は一礼して谷に戻って行った
入口ではシセンが待ち構えていた
「ラァードル様、スプネリア様、謁見の間においでください」
誘導され、謁見の間に入ると、
雷神帝と談笑していた風神帝が振り返り、声を掛けてきた
「スプネリア!久しぶりだな。元気そうで良かった」
「風神帝様、ご無沙汰しておりました
あの……お、お母様はお元気なんでしょうか?」
「ああ、元気にしているが、相変わらずだよ(汗)」
そこに、雷神帝の帰城の知らせを受けた雷帝妃が飛び込んできた
「帝!お帰りなさいませ! 本日のお務め、お疲れ様でした︎💕
風神帝殿、ようこそいらっしゃいました。
ゆっくりしていってくださいね」
「おお~Lilium、相変わらず美しいね💕お邪魔してるよ」
「マミィ、私の留守中に変わった事は無かったかい?」
「特には…ないですわ。私は帝の事が心配なだけです」
「あはは、相変わらずラブラブ💕だな。こっちまで当てられるよ(笑)」
スプネリアは3名のやり取りを目の当たりにして、
感心しながら見ていた
こういうやり取りを20万年以上繰り返しながら
過ごされて来たのだと……
自分もこんな風に過ごせたら……過ごせるのだろうか……
色々な考えが浮かんできてはまた不安になる
傍にいたラァードルがスプネリアの頭をポンポンと軽く叩く
「そう考え込まなくても良いよ。親父達は親父達
我々は我々で考えて過ごして行けば良いんだよ。分かった?
それにサムちゃん達やリリエルちゃん、Lily‘sもいるじゃん
スプネリアだけで全部背負い込む必要はないから」
「……うん、分かった。ただちょっと羨ましいのと
…真似は出来ないな、と思っただけ」
そこへ、シセンが歩み寄り、姿勢を正し、頭を下げる。
「帝、ラァードル様、少し宜しいでしょうか?
少し怪しい動きをしている者が数名、紛れ込んでいるようです
勿論、警戒警護は厳しくしておりますが…」
「シセン。遠慮はいらんぞ。単刀直入に話せ。
それはあのホセ父娘の事か?」
「…はい、その様でして……
娘の方は、一方的にスプネリア様を罵倒しておりましたので
一喝して事なきを得ました。ですが、父娘揃って
何を企んでいるのか情報を掴みきれなくて…
処罰出来ずにおります」
シセンは厳しい表情を崩さず、忌々しそうにしている
「シセン、その企みが何か分かれば良いんだよね?」
「それはそうなのですが……」
「よし、それなら定例首脳会談を開こう」
雷神帝はタブレットを取り出し、音声メールに
会談の場所と日時を録音して、魔界と天界に送信した
こうして、急遽天空の首脳会談が決定した
ラァードルは魔鏡でベルデと連絡を取り、それとなくダンケルに
イザマーレをうまく誘い出す様に話をして欲しいと頼んでおいた
その頃、ホセとグリアの親子は自分達の屋敷にいた
「くそ!風神帝め! アイツ俺が皇太子に話し掛けてるのを見て
ワザと吹っ飛ばしたに違いない!ええい!腹が立つ!
しかも、あの人間の女が嫁だと?不愉快だ!」
部屋の中をウロウロしながらイラつき怒鳴り散らすホセ
娘のグリアもイライラしていた
何故、自分じゃ無いのか、
どうして人間の女がラァードルの傍にいるのか…
このままだと、あの人間に頭を下げなければいけない
人間など、虫けら同然と見下している2名にとって
スプネリアの存在は邪魔でしか無い
「ねえ、パパ、何とかしてあの人間を
宮殿の中から連れ出す事出来ないかな?」
「宮殿と皇太子宮は、あの忌々しいシセンが目を光らせてるから
なかなか難しいかもしれんが……
もし、自分から出て来た場合は、不可能ではないかもな」
「様子見するしかないの?」
「そうするしか無さそうだ 下手に動いてはこっちがやられる」
「もうイライラする! ちょっと憂さ晴らしして来るから
パパ、後はお願いするわ」
「また、例のお遊びか?ほどほどにな」
「分かってるわよ!じゃあね」
魔宮殿
執務室では、ダンケルが公務に追われていた
傍に置いてあるタブレットがメール着信を知らせる
ほぼ同時に魔法陣でベルデが姿を現した
「ダンケル、お疲れ様。雷神帝からメール届いたんじゃない?」
「今確認している…
なになに、首脳会談を開きたいと、場所は天界、日時は……」
「今回の首脳会談も、やっぱりイザマーレを同伴させるよね?」
「そうだな…これから指示するつもりであった。
もちろん、いいよぉ♪」
ダンケルからの伝令を受け、足早に王室へ向かうイザマーレ
直ちに謁見し、一礼する
「お待たせ致しました。如何なさいましたか?」
「イザマーレ、待っていたぞ。首脳会談の事だが…」
玉座に座り、心なしか嬉しそうなダンケル
「そうでしたね。スケジュール調整は、
ウエスターレンが滞りなく差配しております。」
時節柄、何となく予想していたイザマーレは、ソツなく応える
「この度の会談には、是非お前と一緒に参加したい。
久しぶりにミカエルとも話がしたいしな…どうだ?」
禍々しい程の美貌を惜しげも無く振りまき
ウキウキと提案してくるダンケル
「…そうですか。かしこまりました。
陛下の御用命であれば、付き従います。では」
イザマーレはすぐさま立ち上がり、姿を消す
「ただいま、リリエル」
「閣下💕おかえりなさいませ…やはり、首脳会談の事でしたか?」
屋敷に帰った途端、抱きついて見上げるリリエル
そんなリリエルの髪を優しく撫でるイザマーレ
「ああ。今回は吾輩も帯同する事になったぞ。ウエスターレン…」
「スケジュールなら問題ない。
その日は俺も予定を空けておいて正解だったな♪」
問い掛ける間もなく、情報局部屋から姿を現し
確認事項を適切に伝えるウエスターレン
「流石は情報局長官殿だな💕」
そんなウエスターレンに満足そうに微笑みながら、
可愛らしく抱きついたままのリリエルと向き合うイザマーレ
「リリエル。お前も一緒に連れて行ってやりたいが
天界だからな。屋敷で待っててくれるか?」
「はい💕いい子でお留守番してますね💕」
イザマーレはそのまま、プライベートルームへ
リリエルを連れていき、扉を消した
3日後
ダンケルはダイヤに見送られ、王室の扉から天界に向かう
「陛下~行ってらっしゃい💕ミカエル様によろしくね」
イザマーレとウエスターレンは、
屋敷の3階にある『あかずの扉』を押し開く
「では、行ってくる」
「行ってらっしゃいませ💕 お父様や風神殿に
よろしくお伝えくださいませ( *´艸`)」
見送るリリエルを優しく抱きしめ、扉の先に向かう2魔
各界の首脳陣が天界に集まり会談が始まった
「おい、イザマーレ。聞いたぞ?
リリエルちゃんのパンの手土産はどうした?」
冒頭から砕けた調子で笑いかけるミカエル
「はあ?お前なんかに食わせるか(怒)」
苛つくイザマーレに構わず、話を続けるミカエル
「まあ、でもあれで事が済むんだから流石だよな。
低級悪魔とはいえ、下手に消滅させれば、バランスも損なうだろ?」
「そういう事だな。ダンケル、分かったか?」
ニヤッと笑い、突っ込む事を忘れないウエスターレン
「分かっておるわ!! だから大人しくしてたではないか💦」
プンスカしながら、優雅に紅茶を嗜むダンケル
「ラァーちゃんよ、お前の奥さんは相当、アレだな💕
ま、可愛いもんだけどな(笑)」
「ミカエルにも迷惑掛けちゃってゴメンね🙏💦
アイツ、思い詰めたり夢中になると
周りが見えなくなるみたいで💦💦💦」
胸の前で手を合わせて恐縮するラァードル
「いい加減、リリエルの自慢話はいいだろう💢💢
たまにはダイヤの事も褒めたらどうだ?
ミカエル、お前、近頃あまり来ないじゃないか」
「えっだってそりゃ……💦」
苛立つダンケルの言葉に、今度はミカエルがタジタジになる
「コスモスの花はそろそろ見ごろか?後でリリエルにも
見せてやろうな♪」
そんなミカエルにニヤッと笑いかける
イザマーレとウエスターレン
「そのスプネリアの事でね、ちょっと気になる事があって…
サムちゃん、ウエスターレン、申し訳ないけど、
ちょっと力を貸して欲しい!雷神界で不穏な動きがあるみたいで…
シセンが情報を掴みきれなくて、対処出来ず困ってるんだ」
「ほう。シセン殿ほどの方がお困りになるなんてな。
ウエスターレン何か見えたか?」
「……そうだな、何となく見えるが……
それなら直接、話を聞いてやろうか?イザマーレ。
どうだ?雷神界に行ってみるか?」
「だったら、一旦魔界に戻ってリリエルと一緒に行くか
陛下、よろしいでしょうか」
ウエスターレンと目配せしながら、ダンケルに確認するイザマーレに
雷神帝の傍に控えていた紫雲が、ワクワクしながら声をかけてきた
「でしたら、私がお迎えに行きますよ💕
是非とも背中にお乗りくださいませ」
「やれやれ。もちろん、いいよお👍」
外堀を埋められた感、満載だったが
異論もなく、即決で承諾するダンケル
「なになに?リリエルのパンだって?」
「ほお💕それは是非とも我々も味わってみたいなあ♪」
イザマーレたちのやり取りを聞いていた雷神帝と風神帝が
前のめりで浮足立つ
……
「ただいま、リリエル」
「閣下♪おかえりなさいませ。皆さま、お元気でしたか?」
屋敷に戻った途端、抱きついてくるリリエル
イザマーレも、その髪を撫でながら微笑む
「ああ。それでな…」
言いかけたところに、雷神帝や風神帝、紫雲など
豪華なメンバーがどっと押し寄せてきた
「リリエルちゃん!悪いんだけど、今すぐ雷神界に来てくれるかな
サムちゃんとウエスターレンも一緒に」
「…えっ」
急なことで戸惑うリリエル
「やあ、リリエル。ご自慢の手づくりパンを
是非とも私にも味見させてくれないか?」
「ワッハッハ、そんな訳だから、すぐ行こう!」
「リリエル様💕 是非とも私の背にお乗りくださいませ。
雷神界まで、ひとっ飛びでお連れ致します💕」
矢継ぎ早に豪傑に笑う雷神&風神コンビの言葉に
目をパチクリしているリリエルの目の前に
紫雲が徐に腰を据え、猛アピールする
「…だがな、紫雲殿。手厚い送迎は不要だぞ(笑)」
すぐ隣に並び立つウエスターレン
次の瞬間、夜空を一直線に移動する
金と赤の二色のエネルギー体……
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