絢爛の日々
- RICOH RICOH
- 2024年11月18日
- 読了時間: 5分
さて。寮内オリエンテーションが行われた日から一週間が過ぎた
ランチタイムになると、食堂にわらわらと集まる13魔たち。
相変わらず、メニューはリリエルお手製の梅おにぎりだ
「リリエル様のおにぎり…塩加減も抜群で美味いな♪」
「うんうん…なんか、癖になるよね」
ツクシとラグナがニコニコと顔を見合わせ
頷きながらモグモグしている
「だけどよお…何で中味はいつも梅なんだろうな。」
「たまには鮭が良いよなあ…」
ポーラとデーサが、それとなく愚痴を零す
彼らの会話を耳にしたソラは、思わず立ち上がり
駆け出していく
「えっ、何?…ソラ、どうしちゃったんだろ」
リナとアオイが、後を追いかけていく
一歩、出遅れたケイシが扉までたどり着いた時
食堂内に一陣の風が吹き、灯りが消える
「!!」
居合わせた残りのメンバーが、驚いて辺りを見回すと
悪態をついていたポーラとデーサが
闇のオーラに螺旋状に取り囲まれていた
「おい!大丈夫か!!」
コータとサークスが慌てて駆け寄るが、
闇から出る蔓に弾き飛ばされる
「ククク…どうせなら、その舌ごと引っこ抜いてあげようか……♪」
どこからともなく聞こえる、女性の笑い声に戦慄が走る
その時だった
リリエルに対する言葉の刃を聞き分ける事に関して
地獄耳のような能力を持つシューゾウが血相を変えて駆けつける
「誰だ!!リリエル様のご厚意に対して
感謝もしない我儘な奴は!!!!」
「えっ…か、感謝してないわけじゃないんだけど…」
「そ、そうですよね…ごめんなさい」
シューゾウの勢いに気圧され、超本悪魔の2魔だけではなく
その場に居た全員が沈痛な面持ちで謝る
「よし。今回の罰として、屋敷回りを10周してこい。今すぐだ!!」
命じられたメンバーは、慌てて走り込みを始める
「…シューゾウさん、私たちも行きます!すみませんでした」
ソラを追いかけていたリナとアオイも慌てて戻り、
彼らについて行く
見送ったシューゾウは、寮内を点検しがてら、歩き回る
すると、渡り廊下で立ち止まり、魔木を穏やかに見つめるソラがいた
「…ソラちゃん。ここに居たんだね」
「あ、シューゾウ兄ちゃん。うん…良かった…
シューゾウ兄ちゃんのお陰で、心を鎮めてくれたから…」
「…?…ソラちゃん?」
ソラの独り言ちのような呟きに、シューゾウは首を傾げる
「あ、ううん…私も走りに行ってくる!じゃ、またね♪」
満面の笑みで、彼らの後を追うソラ
さらに1か月ほど過ぎた頃
ソラの謎めいた行動が、寮生のほとんどに知れ渡り
畏怖するべき高潔な霊魂の存在を、誰もが認識するようになっていた
まず、寮のリーダー役を担うシューゾウの養母、プルーニャが
寮に訪れるたびに、何かに向けて語り出すのだ
見かねたソラが問いかける
「プルーニャちゃま、誰とお話してるの❔」
「ん!?理恵様とよ」
「…プルーニャちゃま、りーちゃまはこっちよ」
どうやら、寮のシンボルとしてそびえ立つ梅の木に
霊魂が宿っていると確信しているものの、
姿が見えているわけではないので
必ず間違った方向に話しかけてしまうのだ
ある時
13魔に対し、特別な課題が出された
666問ずつ割り振られた問題集が6種類配布される
週明けには、その中の1種類からテストを行うという……
限られた時間の中、テストに出ない5種類の問題集に
時間を費やすことほど無駄な事はない
そこで13魔たちは、それぞれ魔木の元に訪れ
神妙な表情を浮かべながら話しかけるのだ
「理恵様…お願いです。今度のテストに出る問題集がどれか
教えてください」
すると、どこからともなく風が吹き抜け、問いかけた悪魔の足元に
木の葉が舞い落ちる
「木の葉が3枚…てことは、③の問題集じゃない!?」
「やった!!理恵様…ありがとうございます」
丁寧にお辞儀をして、その場を立ち去るチハルとライト
各々の部屋に戻り、早速、問題集に取り掛かる
その時、大声で騒ぎながら通り過ぎるポーラとデーサの
会話を耳にする
「おい、この次出る問題集は⑥だぞ!理恵様が教えてくださった!!」
「はあ?お前ら馬鹿じゃねーの?教えてもらったのは②だぞ?」
2魔に対し、ツッコミを入れるヤマアオ
「………え?」
今まさに、③の問題集を開き、取り掛かり始めていたチハルとライトは
固まり、目を白黒させている
「ねえちょっと!!変だよ。皆、一度集まって、確認しよう」
アオイとリナが全員を呼び集め、それぞれが理恵から聞いた答えを
聞き出す。その内容をケイシがまとめ上げ、愕然とする
「…もしかして、聞きに行った相手ごとに、違う答えになってるんじゃない?」
真相が分かった時、遠くで女の笑い声が鳴り響く
『ばっかじゃないの?私が本当の事を伝えるとは限らないのに…ククク…』
「………」
結局、全てを学んでおくしかないと理解する13魔たち…
つねに彼らを容赦なく監視し、遠慮なく物事の本質をついて来る
理恵の言葉は、無償の愛とは真逆に思えるのだが、
誰の心にも抱える闇に伝わりやすいのか、彼女の意に反して、
空気を一変させる力を持っている
つかず離れず、何とはなしに話しかけ、
その内、だんだんと、その霊魂に対して恐怖から畏敬の念を
抱くようになる13魔たちと
大小様々なトラブルを巻き起こしながらも
和気藹々とした日々を送っている………
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