top of page

絢爛の日々


さて。寮内オリエンテーションが行われた日から一週間が過ぎた


ランチタイムになると、食堂にわらわらと集まる13魔たち。

相変わらず、メニューはリリエルお手製の梅おにぎりだ


「リリエル様のおにぎり…塩加減も抜群で美味いな♪」

「うんうん…なんか、癖になるよね」

ツクシとラグナがニコニコと顔を見合わせ

頷きながらモグモグしている


「だけどよお…何で中味はいつも梅なんだろうな。」

「たまには鮭が良いよなあ…」

ポーラとデーサが、それとなく愚痴を零す


彼らの会話を耳にしたソラは、思わず立ち上がり

駆け出していく


「えっ、何?…ソラ、どうしちゃったんだろ」

リナとアオイが、後を追いかけていく


一歩、出遅れたケイシが扉までたどり着いた時

食堂内に一陣の風が吹き、灯りが消える


「!!」


居合わせた残りのメンバーが、驚いて辺りを見回すと

悪態をついていたポーラとデーサが

闇のオーラに螺旋状に取り囲まれていた


「おい!大丈夫か!!」




コータとサークスが慌てて駆け寄るが、

闇から出る蔓に弾き飛ばされる


「ククク…どうせなら、その舌ごと引っこ抜いてあげようか……♪」


どこからともなく聞こえる、女性の笑い声に戦慄が走る


その時だった

リリエルに対する言葉の刃を聞き分ける事に関して

地獄耳のような能力を持つシューゾウが血相を変えて駆けつける


「誰だ!!リリエル様のご厚意に対して

感謝もしない我儘な奴は!!!!」


「えっ…か、感謝してないわけじゃないんだけど…」

「そ、そうですよね…ごめんなさい」


シューゾウの勢いに気圧され、超本悪魔の2魔だけではなく

その場に居た全員が沈痛な面持ちで謝る


「よし。今回の罰として、屋敷回りを10周してこい。今すぐだ!!」

命じられたメンバーは、慌てて走り込みを始める


「…シューゾウさん、私たちも行きます!すみませんでした」

ソラを追いかけていたリナとアオイも慌てて戻り、

彼らについて行く


見送ったシューゾウは、寮内を点検しがてら、歩き回る

すると、渡り廊下で立ち止まり、魔木を穏やかに見つめるソラがいた


「…ソラちゃん。ここに居たんだね」


「あ、シューゾウ兄ちゃん。うん…良かった…

シューゾウ兄ちゃんのお陰で、心を鎮めてくれたから…」


「…?…ソラちゃん?」

ソラの独り言ちのような呟きに、シューゾウは首を傾げる


「あ、ううん…私も走りに行ってくる!じゃ、またね♪」

満面の笑みで、彼らの後を追うソラ




さらに1か月ほど過ぎた頃


ソラの謎めいた行動が、寮生のほとんどに知れ渡り

畏怖するべき高潔な霊魂の存在を、誰もが認識するようになっていた


まず、寮のリーダー役を担うシューゾウの養母、プルーニャが

寮に訪れるたびに、何かに向けて語り出すのだ

見かねたソラが問いかける


「プルーニャちゃま、誰とお話してるの❔」

「ん!?理恵様とよ」

「…プルーニャちゃま、りーちゃまはこっちよ」


どうやら、寮のシンボルとしてそびえ立つ梅の木に

霊魂が宿っていると確信しているものの、

姿が見えているわけではないので

必ず間違った方向に話しかけてしまうのだ




ある時


13魔に対し、特別な課題が出された

666問ずつ割り振られた問題集が6種類配布される

週明けには、その中の1種類からテストを行うという……


限られた時間の中、テストに出ない5種類の問題集に

時間を費やすことほど無駄な事はない


そこで13魔たちは、それぞれ魔木の元に訪れ

神妙な表情を浮かべながら話しかけるのだ


「理恵様…お願いです。今度のテストに出る問題集がどれか

教えてください」


すると、どこからともなく風が吹き抜け、問いかけた悪魔の足元に

木の葉が舞い落ちる


「木の葉が3枚…てことは、③の問題集じゃない!?」

「やった!!理恵様…ありがとうございます」


丁寧にお辞儀をして、その場を立ち去るチハルとライト

各々の部屋に戻り、早速、問題集に取り掛かる


その時、大声で騒ぎながら通り過ぎるポーラとデーサの

会話を耳にする


「おい、この次出る問題集は⑥だぞ!理恵様が教えてくださった!!」


「はあ?お前ら馬鹿じゃねーの?教えてもらったのは②だぞ?」

2魔に対し、ツッコミを入れるヤマアオ


「………え?」

今まさに、③の問題集を開き、取り掛かり始めていたチハルとライトは

固まり、目を白黒させている




「ねえちょっと!!変だよ。皆、一度集まって、確認しよう」

アオイとリナが全員を呼び集め、それぞれが理恵から聞いた答えを

聞き出す。その内容をケイシがまとめ上げ、愕然とする


「…もしかして、聞きに行った相手ごとに、違う答えになってるんじゃない?」


真相が分かった時、遠くで女の笑い声が鳴り響く


『ばっかじゃないの?私が本当の事を伝えるとは限らないのに…ククク…』


「………」


結局、全てを学んでおくしかないと理解する13魔たち…


つねに彼らを容赦なく監視し、遠慮なく物事の本質をついて来る


理恵の言葉は、無償の愛とは真逆に思えるのだが、

誰の心にも抱える闇に伝わりやすいのか、彼女の意に反して、

空気を一変させる力を持っている


つかず離れず、何とはなしに話しかけ、

その内、だんだんと、その霊魂に対して恐怖から畏敬の念を

抱くようになる13魔たちと

大小様々なトラブルを巻き起こしながらも

和気藹々とした日々を送っている………




 
 
 

最新記事

すべて表示
校長のサロン

「理栄先生!!本当ですか…!!」 噂を聞きつけたスプネリアとリリア、ムーランの3名が駆けつけると 同じように見に来ていたプルーニャ、ダイヤと出くわす 「あら?早速、いらっしゃったわね♪お疲れ様です♪」 理栄がニコニコと微笑んで出迎える...

 
 
 
魔鏡学園

「イザマーレ、お帰り…っておい」 副理事長室で待ち構えていた守衛ウエスターレンが、一瞬固まる 「…浮気か?」 ニヤッと目を細めるウエスターレン 「ウエスターレン…馬鹿な事を言うな」 言葉とは裏腹に、静かに笑みを浮かべるイザマーレ 「あ、あの…」...

 
 
 
交錯

生徒会室で眼光鋭くモニターチェックしながら 紫煙を燻らせていたウエスターレン 突如、一番手前にあるモニターが光を放ち、画面にノイズが走る すらっとした指先を巧みに動かし、相手からのメッセージを受け取る 「…マジか。了解した。」 軍服を着こみ、すぐさま部屋を後にする …………...

 
 
 

コメント


©2022 by 里好。Wix.com で作成されました。

bottom of page