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虎の子1~誕生編(拾われた日)~ 


「お邪魔するよ。プルーニャは居るかな…?」


「あ!だ…代官!!は、初めまして…」


丸太小屋に現れたセルダを、慌てて迎え入れる里好


「…あれ?代官…」


セルダが手にしているものを見て、不思議そうに見つめるプルーニャ


「あ、これ?ここに来る途中で見つけたんよ。

なんか気になるもんで、持ってきた」


「…代官…これ、ひょっとして…」


実際に目で見た事はないのだが、何となく見覚えのある感覚に

里好は脳内で思考を駆け巡らせ、呟く


「君は…そうか、リリエルちゃんの器だったよね。さすが!!

そう。悪魔のたまごみたいなやつね。発生した直後だと思うんよ」


「!!!」


居合わせたプルーニャは、目を丸くして固まる


「…へえ~…生まれたての人間の赤ん坊みたいやね」


「そうかもね。この風貌からして、

残念ながらイザマーレ族ではないようだけど」


「そうなんや…」


「こいつの処遇について、閣下に報告せにゃならんから

この後屋敷に行こうと思ってね。一緒に行こか?」


「了解です!!じゃ、ハルミちゃん、行こう。

里好さん、ありがとね。お邪魔しました~」




数刻後、共に屋敷に訪れたセルダとプルーニャ


出迎えたリリエルは、セルダの手に収まっている物を見て驚く


「あら?代官…何を持ってらっしゃるの?」


リリエルの声を聞いて、イザマーレがすぐ後ろに現れる

そして、セルダの手元をチラッと見遣り、ため息をつく


「…セルダ…」


「?」


イザマーレの様子に、リリエルは首を傾げている


「またか、セルダ。何度言えば分かるのだ。

なんでもかんでも拾ってくるものではない。

早く元の場所に戻してきなさい」


リリエルは、たまごを見つめて、思わず撫でてみる


「へぇ…可愛らしいんですね」


リリエルがたまごを撫でると、嬉しそうにコロコロ動く


「あれ、こいつ獣じゃないじゃんね。

閣下、こいつは俺がちゃんと育ててみたいんよ…」


セルダはシレっととぼけた後、まっすぐイザマーレを見つめる


「うむ…しかしだな…」


それでもイザマーレは、首を縦には振らない


「悪魔のたまごさんなのね。元気に育つと良いですね♪」

「…リリエル💦」


いつものように微笑むリリエルに、困惑気味のイザマーレ

そんなリリエルの言葉に後押しされ、元気になるジェイル


「そうだね、リリエルちゃん。だからね、閣下。

人間のあいつにも子育てのやり方聞いて、閣下に迷惑かけんようにするから…」




「私からも、お願いします!!閣下…」

隣に居たプルーニャも頭を下げる


「閣下。代官が拾われたという事は、何か、縁があるのだと思います。

プルーニャ様にも、この魔界で子育ての経験をさせてあげては…?」


俯きがちに上目遣いで見つめるリリエル。

久しぶりのリリエルからのおねだりに、断る事など出来ないイザマーレだ


「…仕方ないな。セルダ、プルーニャ。

育てるからには、責任を持つのだぞ。分かったな」


「!!」


イザマーレの言葉を受け、ハイタッチをするセルダとプルーニャ

その手元でコロコロと揺れるたまご………




やがて、悪魔のたまごは

プエブロドラドや構成員たちにも迎えられ、順調に育つ

数日後には殻を割り、立派な悪魔の姿に成長を遂げた


クソ真面目で、勤勉な性格は、誰からも好かれ

いつしか「シューゾウ」というあだ名で呼ばれるようになっていた


穏やかな日々でも、常にシューゾウの脳裏にあるのは

たまごの姿で出会ったリリエルの幻影……


魔界幼稚園の頃…


その日のお題は

「みんなの大好きなものを書いてみましょう」


他の園児は車や他悪魔や親を書く中、シューゾウはリリエルを描く

イザマーレの力を子供なりに分かっているため

画用紙の隅に小さくイザマーレも書く


プルーニャが寝る前のお伽噺として、

イザマーレとリリエルのお話を聴かせてるのだ

後ろでセルダの奏でるギターを BGM にしながら……




副大魔王の表敬訪問として、リリエルを髪に乗せて訪れるイザマーレ

教室に入るなり、シューゾウの絵を発見する


「まったく…だからあの時、戻してこいって言ったのだ…」


ブツブツ呟きながら、内心イラッとしてるイザマーレだが

リリエルは、でっかく描かれてる自分の姿より、

隅に描かれたイザマーレの絵に目を輝かせている


「あ!閣下だー(*´艸`*)カッコよく描いてくれてますよ」

「…そ、そう、だな💦」


嬉しそうに喜ぶリリエルに悪い気はせず、

髪を撫でてイザマーレも微笑む


他の園児にも勿論、大人気のリリエル


イザマーレと同じくらいイライラしてるシューゾウ

園児という立場を利用して、リリエルの側を GETしてほくそ笑んでいる


そんなシューゾウに対し、大人げなく苛立ちを隠そうとしないイザマーレに

セルダも苦笑する


「相手は子供じゃんね。それに

リリエルちゃんは閣下しか見てないんだから、そんなイライラせんで」




そんな周囲の喧騒を余所に、

楽しそうにイザマーレと見つめ合うリリエル


「男の子は産んだこと無かったけど、可愛いですよね(*´艸`*)」


「…ぐぬぬぬ💦そ…そうだな、リリエル。可愛い………な」


「( ゚∀ ゚)ハッ!でも、覚えてますよ

誰よりも可愛らしかった、どこかの悪魔さん 」


「…///////💦」

思わず顔を赤くして口元を隠し、目を泳がせるイザマーレ


「かっか。おかおがまっかです。たいちょうがおわるいのですか。

りりえるさまはぼくがおまもりしますので、さ。やすまれては…」


とっさにシューゾウの口を塞ぎ、苦笑いで引きずっていくプルーニャ




「リリエル。吾輩も覚えているぞ。 何度も抱っこしてやったもんな」

「…/////// や、やっぱり!!あの、学ランの……💦」


耳元で囁き、ニヤッと笑うイザマーレに今度はリリエルが真っ赤になる


「シューゾウ…閣下がリリエル様とご一緒の時は、邪魔したらアカンよ」


プルーニャは、キツく言って聞かせるが、

シューゾウは真っ赤になってるリリエルに夢中だ。


「おかん。こんどはりりえるさまがまっかです。ぼくはしんぱいです」


「うん。せやから、閣下がお側にいらっしゃるから、大丈夫なんよ。

聞いてる?シューゾウ…」


リリエルをガン見したまま、固まっているシューゾウを余所に

真っ赤になったリリエルを抱き寄せ、髪を撫でるイザマーレ


「おいで、リリエル…」


そのまま瞬間移動で消える2魔の残り香を、

いつまでも見つめているシューゾウ…




…幼稚園の帰り道では…

「おかん。きょうもりりえるさまにおあいしたいです」

手を引くプルーニャに告げるシューゾウ


「あんた、完全に惚れてるな(苦笑)(笑)気持ちはわかるけど、

こう毎日やと、リリエル様にご迷惑やと思うから、明日にしよ!?」


「いやです」

断固、拒否するシューゾウ


「…うん。自分の意思をちゃんと伝えられるのは

良い事やねんけどな…我慢もせなアカンねんで」


「…おかん」

シューゾウはたちまち目をウルウルさせて、プルーニャを見つめる


「わかった!わかったから。それやったら、明日は真っ直ぐ帰るで」

「はい(^^)」

そんな風に押し切られ、毎日のように屋敷に顔を出すシューゾウ


「りりえるさま。こんにちは、ごきげんいかがですか。

きょう、きれいなおはなのぶろーちをつくりました。ぷれぜんとです」


「シューゾウくん、お帰りなさい。

上手にできたね♪ありがとう(´∀`*)ウフフ…」


穏やかに微笑み、ナデナデしてくれるリリエルが嬉しくて

鼻息を荒くするシューゾウ


「良かったら、ソラちゃんと一緒に遊んで行ってね。」


飴とお菓子を渡し、執務室へ戻って行くリリエル




いつの間にか、公設秘書のデスクは

シューゾウから毎日のように渡されるプレゼントで溢れ返っていた


だが、いつでも隣でお茶を飲み、煩雑な職務を捌き続けるイザマーレと

静かに過ごす時間を、何よりも誇らしく大切に思うリリエルだ


「またか…。どんどん増えるな」


シューゾウに渡された花のブローチを、内心忌々しく思いながら

魔力で「ホンモノ」に仕立て、リリエルを抱き寄せて胸元に飾るイザマーレ


「似合うな。さすがは百合の化身の誰かさん♪」

「…もう…閣下ったら…///////」


真っ赤になって俯くリリエルの顎に手をやり、口唇を重ねる…


(…ま、毎日の時報と思えば良いか…♪)


リリエルが夕食を作る為にキッチンへ降りる時間ギリギリまで

プライベートルームの扉を消し、甘い時間を繰り返す


ちょうど良いタイミングで訪れるシューゾウに、

イザマーレも満更ではない様子だ






 
 
 

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