top of page

虎の子5 屋敷の前で


さて。


魔宮殿見学をきっかけに、このままではイザマーレとの差を

いつまでも埋められないと危惧したシューゾウは

思い切って自分の思いを直接ぶちまける事にした


「リリエル様好きです!この気持ちは閣下にも負けません

魔力も立場も弱い俺ですが、リリエル様を想う気持ちは魔界一です!!」


毎日、暑苦しく告白しにくるシューゾウ

屋敷は常に、強力な結界で覆われており

そんじょそこらの肉声が部屋の中まで聞こえる事はなく

結界の壁に反響して、王都中に彼の声が響き渡るのだ


リリエルは何も気にしていなかったが、ダンケルやウエスターレンは

黙って見過ごす事も出来ない。その都度、対応に追われるリリエルも

流石に面倒に思い始めていた


「ごめんなさいね。少し静かにして頂けると嬉しいです」


市場に買い物に出たついでに、

道端に堂々と居座るシューゾウにそれとなく告げる。

だが、リリエルに直接話しかけて貰えた喜びに、シューゾウの胸は高まり

今度は決して迷惑にならないよう、プラカードに書いて掲げて歩き続ける


プラカードには

『リリエル様💕あなたは僕の光です✨

あなたのお側にいたいです✨』と書かれてる


プルーニャとセルダも毎日説得しに行くのだが、頑として動かず

見かねたエレジアが毎日お弁当を届けるようになっていた


物珍しさに興味津々だった低級魔からも、容赦なく突っ込まれる


「お前の根性も大したもんだけど、

お妃様には副大魔王様しかいないから、諦めた方が良いぞ」

「そうだな…悪いことは言わねえ…副大魔王様に消される前に諦めな」




プエブロドラドでも、シューゾウの事は噂になっていた


「周りの大人はちゃんと止めてるんですよ…💦

『リリエル様には閣下しか見えていないのよ』って……」


おかんのプルーニャは困り果てた様子でため息をつく


「聞かないのよ~💦」


花蓮光もハラハラしながらプルーニャを宥めている


どんなに煙たがられても

めげないポジティブさだけが取り柄のシューゾウ

時折、幼少期に聞いたウエスターレンの助言を思い出し

リリエルの周囲に心を配る事も忘れない


イザマーレに睨まれたら

「格好良いっす✨俺もあんな悪魔になりたいっす✨」

ウエスターレンに睨まれたら

「足が長くてイケメンて…長官ずるいっす

俺にも大人の仕草教えて下さい✨」


だが一瞬でもリリエルに微笑まれたら

「はぁ💕やっぱりリリエル様は女神様💕💕」と、

恋に胸を焦がし続ける


「そうだろ?だが残念だな。リリエルは、吾輩の女だ💕」


そんなシューゾウを前に、堂々とリリエルを抱き寄せ

仲睦まじい様子を見せつけるイザマーレ

イザマーレの堂々とした態度に、リリエルは嬉しそうに微笑む


館にいるソラにもすっかり覚えられたシューゾウ


「リリエルちゃま、またうるちゃいおにいちゃま来たの?!」

ソラの声が聞こえた途端、駆け寄りお菓子をあげるシューゾウ


「ソラちゃん!!良い子だから大人しくしててね。

僕が後で遊んであげますから☆彡」


「わーい(*^▽^*)ありがとう~♪」




いつもと変わらず屋敷の部屋の扉を消され、

相手にされないシューゾウだが、その代わりに

毎日のように遊んでくれるので

ソラは割と気に入っているようだ


幾度イザマーレとリリエルの前に打ち負かされ

その都度、蜂の巣状態の心になろうとも

何度でも立ち上がり続けるシューゾウ


「わかってます(涙)閣下に敵わないことも、

リリエル様が閣下しか見てない事も(号泣)

でも諦められないっす!!正々堂々とリリエル様にアタックし続けます」


バサラがアドバイスしようとしたら

「あ、間に合ってるんで大丈夫っす」

と、冷静になり、養父母の元へ帰っていく


そんなシューゾウにプルーニャの堪忍袋がついに切れる


「えぇ加減にしぃ💢あんたがずっとおるだけで、

リリエル様のお心を痛めてるんがわからんのか💢

好きな女を悲しませるなんて最低の男や💢」


プルーニャに怒鳴られて、下を向いて耐えるシューゾウ


ドスドスと足を踏み鳴らしてプルーニャがプエブロドラドに帰った後、

セルダが側にいてギター弾きながら慰める


翌日からシュプレヒコールはやめたシューゾウ


その代わり、運動会でリリエルとイザマーレ、

ウエスターレンに認めて貰うべく…走り込みをする



 
 
 

最新記事

すべて表示
校長のサロン

「理栄先生!!本当ですか…!!」 噂を聞きつけたスプネリアとリリア、ムーランの3名が駆けつけると 同じように見に来ていたプルーニャ、ダイヤと出くわす 「あら?早速、いらっしゃったわね♪お疲れ様です♪」 理栄がニコニコと微笑んで出迎える...

 
 
 
魔鏡学園

「イザマーレ、お帰り…っておい」 副理事長室で待ち構えていた守衛ウエスターレンが、一瞬固まる 「…浮気か?」 ニヤッと目を細めるウエスターレン 「ウエスターレン…馬鹿な事を言うな」 言葉とは裏腹に、静かに笑みを浮かべるイザマーレ 「あ、あの…」...

 
 
 
交錯

生徒会室で眼光鋭くモニターチェックしながら 紫煙を燻らせていたウエスターレン 突如、一番手前にあるモニターが光を放ち、画面にノイズが走る すらっとした指先を巧みに動かし、相手からのメッセージを受け取る 「…マジか。了解した。」 軍服を着こみ、すぐさま部屋を後にする …………...

 
 
 

コメント


©2022 by 里好。Wix.com で作成されました。

bottom of page